生きづらさを生み出しているのは障害者自身かもしれない【ユニバーサルマナー検定受講レポート】

先日、ユニバーサルマナー検定(3級)を受講してきました。
 

図④
 

ユニバーサルマナーとは、「自分とは違う誰かのことを思いやり、理解する。そして、高齢者や障害者、さまざまな人の目線で考え、行動するもの。高齢者や障害者への適切なサポートやコミュニケーション方法は、特別な知識や高度な技術を要するものではなく、身につけていて当然のマナーの領域」という考えから成り立っています。この考えを体系立てて学べて資格化した講座が「ユニバーサルマナー検定」になります。

ユニバーサルマナー検定:http://www.universal-manners.jp
 

運営団体は、「バリアフリー社会の創造」を理念とした株式会社ミライロ。講師は、代表であり、自分自身が車椅子ユーザーの垣内氏が務めています。
 

垣内氏が主張していたこととしては、以下のようなものでした。
 

「江戸しぐさ」と呼ばれるものが存在していたように、日本人は昔からマナーの達人でありました。マナーとは相手(人)を思いやることです。当時の江戸社会は互いを思いやり、高度の共生社会であったと考えられます。現在、日本の人口が1億2千万人強と言われ、高齢者人口が約3000万人、障害者(身体・知的・精神含めた)が約750万人、3歳児未満人口が約300万人、存在しています。人口全体から考えるとおよそ1/3に達します。しかし、日本の生活環境はこれらの人たちに必ずしも優しいものではありません。一方、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定し、世界から日本の福祉事業(街のユニバーサルデザインなど)に注目が集まっています。特に、ハード面については急ピッチでインフラ整備が進んでいますが、ソフト面(人の心部分)については、まだまだ足りない部分が多くあります。そこの部分をユニバーサルマナー検定で学んでいただきたい。

 

講座の内容・詳細について割愛し、私が興味深く感じた部分を中心に書かせてもらいます(ユニバーサルマナーの対象は、高齢者・障害者・3歳児未満とありますが、今記事においては、障害者について言及して書いております)。
 

図1
 

垣内氏が終始おっしゃっていたことをまとめてみると、このようなスライドで表すことができると考えています。要は、街中等で障害者(白杖を使っている視覚障害者、車椅子ユーザーなど、障害が明らかな人)を見かけた時の反応は大きく二つに分かれるということです。
 

①無関心(特に、何にもしない)
②過剰(やたら話しかけて、やたら手助けをしようとする)
 

しかし、垣内氏は両者ともに健全な姿ではないと考えます。
これに対する、解決案が次のスライドになります。
 

図2
 

このような「声掛け」をできるようになるための知識習得やノウハウ伝授、実践形式のワークを体験できるのが「ユニバーサルマナー検定」です。この前提をもとに、講座は進んでいくのですが、その際に私が感じたことを書きます。
 

まず②の反応をする人は。自分の周囲に障害者がいる方でしょう。「障害者は大変だから、何とか助けてあげよう!」という考えが強いのだと思います。もちろん、その気持ちは大変素晴らしいのですが、やはりその気持ちが「過剰」になるとお節介になってしまうでしょう。義足を履く私自身も、やたらに「足痛くない?肩貸すよ!」と言われても、正直困ってしまいます(笑)
 

①について、まずは以下のスライドをご覧ください。講座内でも引用をしていた資料です。
 

(出典)内閣府「障害者に関する世論調査_障害者に対して手助けや話しかけたことが無い理由」
(出典)内閣府「障害者に関する世論調査_障害者に対して手助けや話しかけたことが無い理由」

 

障害者に接した機会が無かったり、障害者のことを知らない人が、日本社会では大半なのです。だから①のようになってしまう。そこで、ユニバーサルマナー検定で学び、「私にお手伝いできることはありませんか?」という声掛けができるようなりましょう、ということです。
 

私はこの論調に理解と共感を示しながら、多少の「?」を感じました。ユニバーサルマナー検定の内容よりも、障害者側の課題としてです。先述した通り、日本の障害者人口はおよそ750万人で、比率から言うと日本人の6~7%がなんらかしらの障害者です。数で言うと、15~16人に一人が障害者です。しかし、内閣府の世論調査にもあるように、障害者と接したことが無い・障害者のことを知らない、と言う人が大半です。
 

この世論調査の裏側にある課題の一つとして、「障害者側のアピール不足」があると私は考えます。自分たちの生活において、どのような手助けが必要なのか?もしくは必要ないのか?しっかりと伝えていくことも重要だと思いますし、伝える方法もたくさんあると思います。自分の環境に合わせた方法もあるでしょう。思い切って伝えてみると、「なぁーんだそんなことに悩んでいたのか!」とお互いに納得するケースも多くあります。もしかしたら、「生きづらいなぁ」と考えるのは、自身の心境だけなのかもしれません。自分から一歩踏み込んでいくことも必要かと考えます。ちなみに、私の経験上、自分から言わないと必ず不利益を被ることになります。それで、仕事を干されたこともあります。
 

「待っていて、向こうから(自分が望むようには)話しかけてくれることはない。」という意識を障害者側も持ちながら、垣内氏が提唱する「私にお手伝いできることはありませんか?」と話しかけることを「粋」とするユニバーサルマナーの精神が盛んになってくれば、日本の社会ももっと豊かになると考えます。
 

ユニバーサルマナー検定は、大変面白い内容になっておりますので、一度、足を運ばれてみることをおすすめします。WEB体験もおすすめです。

垣内氏との記念写真
垣内氏との記念写真
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この記事を書いた人

堀雄太

野球少年だった小学4年生の11月「骨腫瘍」と診断され、生きるために右足を切断する。幼少期の発熱の影響で左耳の聴力はゼロ。27歳の時には、脳出血を発症する。過去勤めていた会社は過酷な職場環境であり、また前職では障害が理由で仕事を干されたことがあるなど、数多くの「生きづらさ」を経験している。「自分自身=後天性障害者」の視点で、記事を書いていきたいと意気込む。