乙武さん入店拒否騒動を振り返る ー佐々木一成の場合ー

 
かつて、トレンディー俳優が語った言葉から生まれた
「不倫は文化である」という論調。
この文化とは芸能界だけのものなのか、全体に対してのものなのでしょうか。
 

さて、今回の乙武さんの騒動です。
 

銀座のイタリアンの店で入店を拒否されたということですが
なぜメディアや有識者の方々は、
乙武さんが友人の女性と二人でこの店を訪れていることを
あまり突っつかなかったのでしょうか。
 

150cmに満たない身長の元アイドルが夫のいない間に
夫ではない男性と自宅でうんぬんかんぬん・・・
これはさすがに不倫と報道されても仕方がありません。
 

100cmほどの身長の有名障害者が仕事帰りに
妻でもない女性と銀座のイタリアンでうんぬんかんぬん・・・
これはさすがに不倫と報道されなかったとしても
ゴシップ週刊誌であれば報じたくなるのではないでしょうか?
数字が取れるかどうかは別ですが。
 

妻がいて、子どもがいる男性が
女性と二人で銀座のイタリアンでご飯を食べる。
仕事帰りということもありスーツでその席に向かう。
 

結婚している私からみるとリスキーだなと思います。
相手がどんな女性であろうと、誠実に申し開きできる状況を作ります。
もし私が、電動車いすを使う有名人で、一目で自分を特定されるならば
お忍びで女性と二人で会う場合、細部に至るまでリスクを排除し、
店名をtwitterでつぶやくほど興奮する状態にならないよう善処します。
 

家に帰って、「あなた、誰と会ってたの?」なんて
疑われるような真似はしません。
 

私自身は乙武さんが大好きですし、尊敬しています。
今回の騒動を通じて、乙武さんも人間だったんだなと
近い存在に感じられるようになって嬉しくもありました。
同じ障害者として、私は乙武さんを非常に遠い存在に感じていました。
 

今回の騒動、私が疑問符として挙げたいのは
障害者って不倫なんてしないという思い込みがないかということです。
倫理道徳上、不倫が良くないことなのは当然です。
不倫というだけで毛嫌いする、生理的に受け付けない、それも当然です。
ここはあえて問うてみたいのです。障害者と限定して。
 

もし、障害者が不倫なんてしないと思っているのならば
その理由はどこにあるのでしょう。
そんなこと考えたことなかったというならば
その理由はどこにあるのでしょう。
 

ワイドショーや週刊誌、スポーツ新聞には不倫やら浮気やらの言葉が躍り、
ドラマや映画、小説などの題材に上がります。
皆さんの周囲にも悩んでいる方がいらっしゃるかもしれません。
そのほとんどは健常者がモデルであり、障害者であることはあまりありません。
 

障害者は弱者である。それは障害者福祉という言葉が示す通り、
社会福祉サービスを受けていることで明らかです。
そんな存在が、社会道徳に反する不倫なんてするわけない。
生活をすることだけでも大変なのに、不倫するなんてあり得ない。
 

障害者も同じ人間、不倫をする可能性だってあると達観している人は
残念ながら日本にはまだ少ないのです。
 

不倫もそうですが、障害者の色恋沙汰にはまだ色眼鏡が存在しています。
健常者のそれと同じように扱われることがあまりありません。
もちろん、健常者間の恋愛と同じようにはいかないことはあります。
物理的な配慮が必要な場合もあれば、理解が求められることも多いです。
 

障害者と健常者の恋愛がドラマとして映し出されることがあるように
実は平等に扱われていません。
個人的には、ひとつの判断軸として、障害を乗り越えた結果という
スパイスを加え、御涙頂戴を仕掛けている時点で平等感を感じません。
 

障害者だって自由に恋愛はする。
他の異性に目移りすることだってある。
時には・・・なんてこともある。
ここでは書けませんが、過去にはいろいろあった編集長だからこそ、
保証できる部分もあります。
 

今回の騒動に関して、穿った見方かもしれませんが、
私は不倫だったのか否かという女性問題に興味がわきました。
 

ただ、この点に関して言及したいわけではなく
障害者に対しての思い込みがないか
特に清廉潔白、清貧のような思い込みがないか
私が問いたいのはこの一点です。
 

冒頭の「不倫は文化だ」という一節が全体論であれば
障害者も含まれていることになります。その点は好感が持てます。
彼には思い込みがなかったことになるからです。
今回の原稿の中で、ふとした思い込みの有無に
気づいてもらえたのならば嬉しいです。
 

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この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。