国民年金・厚生年金の障害認定基準が改正されました(平成25年6月1日改正)

 
平成25年6月1日から障害基礎年金、障害厚生年金の障害認定基準が一部改訂されました。このニュースは全国を駆け巡り・・・ということはなく、厚生労働省・日本年金機構、そして年金を扱う士業である社会保険労務士界隈でのニュースでしか、取り上げられていないのが現状ですが。
 

そもそも、皆さんは障害年金をご存知でしょうか。
 

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障害年金とは、傷病によって、一定程度の障害の状態になった者に対して支給される年金のことで、国民年金に加入していれば障害基礎年金が、厚生年金に加入していれば障害厚生年金が支給されます。私の場合は、先天性(生まれつき)の障害なので、下図の支給要件である「20歳未満のときに初めて医師の診療を受けた者が、障害の状態にあって20歳に達したとき、または20歳に達した後に障害の状態となったとき。」を満たしているため、支給要件を満たしています。障害認定で言えば、5の項目に該当しています。
 

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ここでいう等級は、障害者手帳の等級とは異なります。私の場合、手帳では2級ですが、両下肢の機能障害のため、年金の等級では1級になります。普段の私の実生活をみると1級に見られないことがほとんどですが、純粋に両足が不自由だからという傷病状況をベースに判断されるので、1級です。実は、生まれたときは自立歩行できたら奇跡だと言われていました。幼少期、血と涙と汗を流したリハビリの結果・・・というより、類いまれな運動神経の賜物で今があるので、年金等級1級に見られないことが嬉しくもあります。
 

障害者にとって、最低限の暮らしを支えるための障害年金の認定基準が改正されたのが、先日6月1日のことです。毎年ほどのペースではないにしろ、一定の頻度で改正されているのですが、Plus-handicap創刊以降、初の改正なので、今回は記事にしました。改正の対象となったのは目の障害と精神障害です。
 

内容は、目の障害で言えば、抜粋となりますが
・障害手当金をもらえる障害の状態の項目増
・目の障害の認定要領の変更
・視力障害の定義の変更
・視野障害の定義の変更
・その他の障害の定義の変更

精神の障害は、こちらも抜粋となりますが
・そううつ病の表記の変更→すべて気分(感情)障害へ
・介護を援助、もう想を妄想と表記変更
・諸症状併存時の判断方法の明記
・労働に従事していることを日常生活能力が向上したと捉えないことの明記
・認知症を認知障害と表記変更
・高次脳機能障害の明記

といったことが改正されました。詳細を知りたい方は、こちらのPDFから読んで頂ければと思います。ただ、今回は、興味がなくても、ぜひ一度読んでみてほしいなと思います。おそらく、書いてある内容は一目では分かりません。この意味を知ってほしいからです。
 

なぜ、私たちが見ても簡単に理解できないのでしょうか。その理由は、この資料が、障害者本人でもなく、障害者の家族や友人でもなく、冒頭に上げた厚生労働省や日本年金機構、そして社会保険労務士さん向けに書いてあるからです。
 

障害認定を実施するのは、障害のある当事者・関係者ではありません。公的機関です。したがって、今回のような障害認定基準に関する資料は、公的機関に関係する方々がまず理解できればいいのであって、障害のある当事者・関係者への理解促進は優先順位が高いわけではありません。冒頭のようにニュースが飛び交わないこともうなずけます。あくまでも業界のニュースでいいのです。
 

しかし、障害者は670万人以上いると言われていますし、自分自身が障害者になりえる可能性も否定できません。精神障害者の障害認定数は右肩上がりです。そんな社会において、障害年金のこと、障害認定のことをまったく知らないままでいいのかと言われれば、疑問符が灯ります。もちろん、私たちから自発的に情報を取りにいく必要は大いにあると思います。
 

今回の記事を書くにあたり、私が思ったことは、障害者に対するニュースであれば障害者に届くような工夫、理解がより促進されるための工夫を実施しなくてはいけないということ。そして、障害者側も自分たちにとって有益な情報が手に入るように、改善点の声を上げていかなければならないということ。これは障害者の世界に限ったことではないと思いますが。
 

Plus-handicapでは今回の記事をひとつの契機として、様々なニューストピックも取り上げていこうと考えております。

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この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。