2015年新春、独断で選んだ注目の障害者便利アイテム10選

「独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選」の記事を2014年1月から4半期ごとに書いていますが、その後も新しいアイテムが続々と登場しています。今回は、新春特別版として「障害者便利アイテム10選」をお送りします。「海外発アイテム」と「日本発アイテム」の2つに分けて発表します。
 

●海外発アイテム
 

「電子の杖(Eye Cane):ヘブライ大学(イスラエル)」

(出典:http://www.daily-eye-news.net/news_aQdcH8smp8.html
 

ヘブライの杖
 

電子の杖(EyeCane)は、視覚障害者が使う白杖の代わりに電子センサーを用いた杖です。対象物の距離情報を触覚合図あるいは聴覚的合図に変換し、使用者に対して、「近く」と「遠方」といった距離情報を同時に伝えることができます。これにより、使用者の歩行が容易になるそうです。元々は、このアイテムは、「白杖が使いづらい」という当事者の声から制作されたもので、比較的簡単な練習ですぐに使用可能になると発表されています。
 

「BLITAB(電子タブレット)」

(出典: http://u-note.me/note/47500361
 

BLITAB
 

BLITABは、iPadほどの大きさのタブレット端末で、点字を入出力できる世界初のガジェットです。使用方法は、専用のUSBを差し込んでテキストを入力するだけ。後は画面上に点字が浮き上がってくるという大変簡単な仕組みになっています。価格面でも、従来の類似品より10分の1程度であり、視覚障害を持った方が点字を習得するコストも大幅に削減できるそうです。現在、クラウドファンディングでプロジェクトへの出資を募っているそうですが、発売されれば点字の世界に一石を投じるアイテムになるかもしれません。
 

「Transcense(聴覚障害者サポートアプリ)」

(出典:http://getnews.jp/archives/688880
 

聴覚障がい者アプリ
 

Transcenseは、会話を聞き取り、リアルタイムでスマートフォンの画面上に文字化するアプリです。「発話者の声の違い」を認識することができ、「誰が」「何を」話しているのかという識別まで行えます。それぞれの発話者のコメントを色分けして表示をするので、会話の流れも一目瞭然だそうです。制作者自身も聴覚に障害を持っているとのことですが、耳が不自由な方にとって、特に複数人での会話についていくことには、相当な困難が生じるそうです。ちなみに、このアイテムもクラウドファンディングで開発資金の出資を募っているそうです。
 

「シティーズアンロックド(CitiesUnlocked):Lighting up the world through sound」

(出典:http://wirelesswire.jp/Watching_World/201412011230.html
 

ロンドン
 

このアイテムは(視覚障害者の)歩行中にある障害物を避けるための情報と、店舗や名所などの情報を同時に伝えることができるヘッドセットです。
 

「ロンドン市内に設置したビーコンからのデータとナビゲーション用のデータを組み合わせて、周囲の環境を表現する3次元のサウンドスケープ(音風景)を生成し、骨伝導で装着者(視覚障害者)に伝えることができるそうだ。(中略)ロンドンでのプロジェクトが成功すれば、他の都市へ展開する計画だそうだ。」(記事より引用)
 

今まで、視覚障害を持った方に対して、障害物などの「点」情報を伝えるアイテムが大半でしたが、これからは街全体の「面」情報を提供することも可能になるかもしれません。こちらは、まだ実験段階とのことですが、是非、製品化されてほしいです。
 

「UNI」

(出典:http://nge.jp/2014/10/27/post-86936
 

UNIは、手話をカメラで解読し、それを音声言語に翻訳して発話するほか、音声をマイクで拾い、文字にして表示する電子デバイスです。これにより、聴覚に障害を持った方と手話を知らない健常者の会話がスムーズに行えます。今までも、手話を文字化するツールはありましたが、その際には専用のリストバンドが必要でした。しかし、UNIではリストバンドも不要で、デバイスに搭載されたカメラで手話を解読してくれるので、より利便性がアップしています。なお、このアイテムも、クラウドファンディングで市販化のための資金を募っているそうです。
 

続いて、日本発アイテムのご紹介に移ります。
 

●日本発アイテム

「病院内移動支援システム:慶応大学(医学部)」

(出典:http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2014/osa3qr000000brn5-att/141014_1.pdf
 

病院システム
 

「このシステムは、病院内の患者さんの移動をサポートし、移動したい場所をモニタの画面で指定し座っているだけで目的地に運んでくれるものです。大規模病院内での移動面において、患者さんと病院スタッフ双方の身体的・精神的負担を軽減する画期的なシステムです。2014年7月から実施した病院での患者さんの試乗評価でも概ね良好な評価を得ることが出来ており、今後普及に向けて検証・評価を続けてまいります。」(記事より引用)
 

病院が大きくなればなるほど、診療室、検査室などが何処にあるのかわからなくなってきますし、単独で移動する患者さんは大変だと思います。加えて、それに付き添う看護師さんの負担も相当なものでしょう。私自身、複数回(さらに長期の)入院経験があり病院の建築構造の複雑さはよくわかりますので、このアイテムはとても画期的だと思いました。
 

「立体地図:国土地理院」

(出典:http://cyberjapandata.gsi.go.jp/3d/
 

立体地図
 

立体地図は、樹脂製の板上に道路や線路などが1ミリほど盛り上がった構造で、地理院の電子地図データを3Dプリンターに入力して作成する地図です。開発したのは、茨城県つくば市にある国土地理院で、そのクオリティの高さに海外のニュースサイトでも多数取り上げられているようで、実用化に向けて本格的に動きがあるそうです。
 

立体地図
 

「視覚障害者が触って読み取れる地図は、これまで一品生産の特注品や、高価な特殊プリンターで作るしかなかった。ところが、急速に普及する3Dプリンターは6万円台の商品も登場。欲しい場所の地図情報をインターネットで探して入力すれば、材料費150円程度で15センチ四方の地図を作れるメドがたった(記事より引用)。」とのこと。これにより、視覚に障害を持った方の移動範囲がグンと広がりますね。
 

「オトングラス(OTON GLASS)」

(出典:http://teamotoneglass.tumblr.com/
 

OTON
 

オトングラス(メガネ)は、かけている人(失語症患者)の視線とその先の対象物(文字)を認識し,メガネをかけている人だけに骨伝導で伝えることで、ユーザーの日常生活をサポートするアイテムです。そもそも失語症とは、脳出血、脳梗塞などの脳血管障害によって脳の言語機能の中枢(言語野)が損傷されることにより、話す・聞く・書く・読む・計算などの言語機能に障害が生じる、状態のことです。
 

オトングラスは、単なる音声ではなく、「骨伝導」で伝えることで、ユーザー(失語症患者)に対してしっかりと情報が届けられることがポイントのようです。現在の日本の失語症患者数は、「NPO法人全国失語症友の会連合会レポート(2013年)」によると、「日本全国に推定20万人いるとも50万人いるともいわれるが、わが国では、失語症の人の総数を把握するための調査は行われていない」とのことですが、当事者は相当数いるものと考えられます。海外にも同じ症状の方はたくさんいらっしゃるのではないかと考えると、このアイテムがもたらす価値は大きいのではないでしょうか。
 

「手で見る絵画」

(出典:http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1412/12/news071.html
 

手で見る絵画①
 

今、視覚障害を持つ人のための絵画鑑賞プロジェクト「手で見る絵画」が話題になっています。代表作品として、葛飾北斎の富嶽三十六景の1つで、富士山をバックに巨大な波が描かれた名作「神奈川沖浪裏」を立体化したものがあります。
 

手で見る絵画②
 

制作方法は、石膏の原型を3Dスキャンし、それを「Geomagic Freeform」というデジタルモデリングツールを使って形を整えていくのだそうです。恥ずかしながら「視覚障害を持つ方の絵画鑑賞」というカテゴリーを想像したことがありませんでしたが、美術(絵画)市場に新しい波が起きそうな気配がします。
 

「Eye Play the Piano/FOVE:FOVE」 

(出典:http://www.gizmodo.jp/2014/12/post_16163.html
 

Eye Play the Pianoは、視線追跡機能を持つヘッドマウントディスプレイ「FOVE」を使い、手や腕を使わずに、演奏者の目の動きだけで演奏することができるアイテム「ユニバーサルピアノ」です。こちらは、筑波大学附属桐が丘特別支援学校とFOVEの共同プロジェクトであり、アイテムを医療/特別支援教育分野へ活用し、児童/生徒の表現の可能性を広げることを目的としています。
 

脊髄性筋萎縮症である同校高等部二年生の沼尻光太さん(17歳)が、Eye Play the Pianoを使ったピアノ演奏会の様子は、メディアでも取り上げられ話題となっていました。同プロジェクトは、ギターやドラムなどにもFOVEを活用することを検討しているようです。なお、Eye Play the Pianoを日本全国の特別支援学校にも届けられるよう、クラウドファンディングの活用も進められているようです。
 

※詳しくはリンク内の動画をご覧ください。
 

以上、海外と日本を合わせた「障害者便利アイテム10選」でした。
 

どのアイテムも素晴らしいなあと感嘆するばかりなのですが、とりわけ、ベンチャー企業の活躍が著しいと感じました。彼らはクラウドファンディングなどで賛同する人々から資金を集めながら、アイテムの制作段階からムーヴメントを起こしていくなど、従来の福祉的な観点から変わってきているように感じました。
 

自分自身が日本人であることも背景にありますが、個人的な見解として、日本発のアイテムのクオリティの高さに目を見張るものがあると思いました。日本発のものには既に製品化され、あとは本格的な発売を待つばかりのアイテムが数多くあります。こうした日本のアイデア力・技術力・実現能力は、国内のみならず海外にもどんどん発信していく必要があるのではないでしょうか。
 

「障害者の生活が便利になるためのアイテム」は急速に増えています。さらに「アイテムを創りたい!」という人も確実に増えています。もちろん、全てのアイテムがすぐに手に入るわけではありませんし、すべての人がその恩恵を享受することはあり得ないと思いますが、社会からの風は間違いなく吹いています。自戒の意味を込めて書くと、このような状況下では「自分は障害があるから〇〇できない」という考え方は、時代遅れになってしまうでしょう。
 

自分の在りたい姿、なりたい姿をしっかりと考え、それに対して障害が問題点として挙げられるならば、問題解決に必要なアイテムを選択していくという積極的なスタンスが、今後、障害者側に求められてくるのではないでしょうか。
 

過去の参考記事:
独断で選んだ2013年に登場・話題となった障害者便利アイテム5選
2014年春、独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選 
2014年夏、独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選
2014年秋、独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選

記事をシェア

この記事を書いた人

堀雄太

野球少年だった小学4年生の11月「骨腫瘍」と診断され、生きるために右足を切断する。幼少期の発熱の影響で左耳の聴力はゼロ。27歳の時には、脳出血を発症する。過去勤めていた会社は過酷な職場環境であり、また前職では障害が理由で仕事を干されたことがあるなど、数多くの「生きづらさ」を経験している。「自分自身=後天性障害者」の視点で、記事を書いていきたいと意気込む。