2014年秋、独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選

「独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選」の記事を1月と4月、そして7月に書きましたが、その後も新しいアイテムは続々と登場しています。
 

【参考記事】
・独断で選んだ2013年に登場・話題となった障害者便利アイテム5選
・2014年春、独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選
・2014年夏、独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選
 

今回、アイテムを選んでいる際に気付いたのは、視覚障害者の方に向けたモノが多いことです。と同時に、興味深いと言っては不謹慎かもしれませんが、2009年に発表されたあるデータを発見しました。

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(出典)日本眼科医会 報道用資料2009年 http://www.gankaikai.or.jp/info/20091115_socialcost.pdf
 

現在、視覚障害の方は、日本全国で約31万人いると言われています。しかし、本データによると、それはあくまで日本の身体障害者福祉法の基準による(障害者手帳を交付されている)人数であり、米国式の視覚障害カウント基準によると、対象は約164万人になるようです。さらに、高齢化による影響で、その数は、2030年には約200万人に達すると推計され、視覚障害による国家の損失は8.7854兆円と試算されています。
 

もちろん、このデータは当該問題に関わる団体のデータなので、どこまで公平性があるのかわかりかねる部分もありますし、2009年発表なのでいささか古いようにも感じます。もっと言ってしまうと「米国式のカウント」が必ずしも正しいとは限りません。しかし「視覚障害」というのは、当事者だけの問題ではなく、誰でもなり得る、社会全体で考えるべき課題であるという示唆は与えてくれるデータであると感じました。
 

そうした観点から、今回は、「注目の“視覚”障害者アイテム5選」としてお送りしたいと思います。
 

5位:ナビゲーション機能付き障害物回避先導ロボット
(出典:https://www.jp.nsk.com/company/presslounge/news/2014/press0822a.html
 

日本精巧
 

高度な精密加工技術など知られる日本精巧が、視覚障害の方の行きたい方向を察知し、病院など施設内での移動に必要な情報の提供(施設案内、障害物回避等および先導を行うガイダンスロボット)の長期モニター実験を、神奈川県内のリハビリテーションセンターで開始しています。これは、神奈川県が進める「さがみロボット産業特区」の取り組みの一環とのことです。
 

アイテムの使い方は、グリップを握るとセンサーが働き、盲導犬のように障害物回避、施設案内を行ってくれるそうです。盲導犬の認知が十分に広がっているとは言えない(拒否される)昨今、ロボットでの誘導というのもおもしろいかもしれません。
 

4位:ポータブル紙幣読み取り機「QN-20」
(出典:http://www.glory.co.jp/company/news/2014/0728.html
 

グローリー
 

貨幣処理機械大手のグローリーは、紙幣の金種を音声などで知らせるポータブル紙幣読み取り機「QN-20」を開発し、販売をこの10月から始めます。機械に搭載された小型カメラにお札の角をかざすと、その種類を音声で教えてくれます。
 

同社プレスリリースによると、「現在発行されている紙幣にはざらつき感のある識別マークや印刷面と触感が異なるホログラムシールがありますが、紙幣が流通する過程で、その触感が分かりにくくなったり、また、加齢や病気などで、視力が衰えた方にとっては判別しづらいものです。」だそうです。
 

製品価格は約9万円らしいのですが、厚生労働省の補助対象になっており、最大9割が助成されるとか。確かに、視覚障害の方の買い物などでの金銭授受ってどのようにしているんだろう?と考えると、かなり画期的なアイテムだと思いました。
 

3位:「カラータグ」
(出典:日本女子大学 学術情報リポジトリ 家政学部紀要 第61号)
https://www.jwu.ac.jp/unv/faculty_department/human_sciences_and_design/clothing/news/2014/tactile_colour_tag.html
 

カラータグ
 

全盲の視覚障害の方でも、「触覚」により衣服の色を識別できるラベルが開発されました。開発を行ったのは、日本女子大学の佐川賢非常勤講師(人間工学)らの研究グループです。
 

(写真ではわかりづらいかもしれませんが)「カラータグ」には、ふくらみや穴が円の形に並んでおり、それを手で触ることで、23色を判断できる仕組みとなっています。色の相関関係もわかるので、洋服の色を組み合わせたおしゃれを考えるときにも活用できるとか。なお、これまでの研究で、生まれつき全盲の人も色に対するイメージは形成されていることがわかっているそうです。
 

現在、同アイテムは、東京都内のメーカーが作製し、すでにアパレル業界との交渉も始まっているとか。今後は、カラーコーディネートを楽しめる視覚障害の方が、増えてくるかもしれません。併せて、花柄や水玉模様などの「絵柄」の認識の開発にも注目したいですね。
 

2位:「視覚障害者用電子杖」
(出典:Digimaニュース)
http://www.digima-japan.com/news/23411/20140917-5.html
 

肝心な杖の写真が無いのですが、ご容赦ください。
肝心な杖の写真が無いのですが、ご容赦ください。

 

ベトナムで画期的な障害者アイテムが誕生したそうです。短い記事なので、全文を引用させてもらいます。
 

「ホーチミン市技術師範大学でメカトロニクスを学ぶ大学生2人、タイ・アイン・トゥンさんとフイン・ゴック・ティエン・ダットさんは、卒業論文のテーマとして視覚障害者用電子杖を研究し、開発に成功した。この電子杖は、荷車のように2本のステンレス製の棒が平行に据えられたもので、杖の上部に取り付けられたセンサーで障害物を感知し、振動により障害物の情報が使用者に伝えられる。ステンレス製であるため丈夫な上、長さの調整も可能だ。」
 

ベトナムの大学生がどのような課題に着目し、どのような研究プロセスを経て、このアイテムを開発したのかはわかりませんが、ものすごく画期的なアイテムです。白杖で道を歩いている視覚障害の方は、杖が対象物に触れた時どのような判断をしているのか、触れただけでそれが何なのか、判断できないことも多いのではないでしょうか。そう考えると、このアイテムの可能性は大きいですね。
 

1位:物体認識赤外線センサー「Enactive Torch」
(出典:http://jp.techcrunch.com/2014/08/14/20140813the-enactive-torch-is-a-sensor-that-helps-the-blind-see/?utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook
 

センサーセンサー2
 

米国のシンシナティ大学は、赤外線信号を発してユーザー(視覚障害者)に、近くの物体を認識させるセンサーを開発しました。視覚障害の方が、屋内外で移動をする際、腕にはめた(持った)小さなブザーが、ドア枠や壁などの障害物にぶつかりそうになった時に、警告音を発する仕組みです。
 

大学側によると、「よりコンパクトなTorchなら、足場の悪い地帯や狭いショッピングモールでも楽に歩き回れる。現在デバイスは少々大きめだが、制作チームは実験を進めてもう少し小さくできることを期待している。感知する範囲は、10 cmから90 cmの間だ。」とのことですが、見ていて感じたのは、「視覚障害者の外出=(白)杖の利用」という固定観念は、少しずつでもあらためていく必要があるかもしれません。確かに、(白)杖を使っていれば、「あっ!この人は目が悪いんだ!」と、咄嗟の判断が出来る可能性が高まるかもしれません。しかし、それはある種の差別の醸成をしているようで、可能限り、(外出で使う道具にも)多様性は重要なのではないか、そんなことを考えました。
 

以上が、今回の「“視覚”障害者の便利アイテム5選」になります。
 

ご存じの通り、「青色LED」の開発に関して、先日、日本人3人がノーベル物理学賞を受賞しました。「20世紀中には無理」と言われていた開発に対しての快挙です。日本人は、こうした発明・開発などのイノベーションを好む民族なのかもしれません。願わくば、障害者アイテムの分野でも、日本発の新しいものがどんどん生まれていって欲しいと感じます。そのためにも、冒頭のデータから論じたように、「現在、世の中で何が問題になっているのか」と着目することが重要になってくるのではないでしょうか。
 

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この記事を書いた人

堀雄太

野球少年だった小学4年生の11月「骨腫瘍」と診断され、生きるために右足を切断する。幼少期の発熱の影響で左耳の聴力はゼロ。27歳の時には、脳出血を発症する。過去勤めていた会社は過酷な職場環境であり、また前職では障害が理由で仕事を干されたことがあるなど、数多くの「生きづらさ」を経験している。「自分自身=後天性障害者」の視点で、記事を書いていきたいと意気込む。