2014年夏、独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選

「独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選」の記事を1月、4月と2回書きましたが、その後も続々と新アイテムが登場しています。
 

【参考記事】
独断で選んだ2013年に登場・話題となった障害者便利アイテム5選
2014年春、独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選
 

最近の傾向として感じたのは、障害者への同情的な側面での開発だけではなく、「一つの産業として成立している」ということです。それだけ、開発のアイデアと技術力が向上している印象を受けます。結論部分は最後にお伝えするとして、まずは、独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選をお楽しみください。
 

5位:MotionSavvy(手話を音声化するソフトウェア)
(出典:マイナビニュース:http://news.mynavi.jp/news/2014/06/12/449/
 

 

サインランゲージ(手話)を認識し、その内容を音声化したりテキスト化したりしてくれるというアプリソフト開発がアメリカで進んでいるようです。現段階で対応できる手話の種類は米国式のみで、その数もまだ少ないようですが、今後は対応を増やし、来年2015年9月には一般向け公開も予定しているとか。ソフト開発者は、「聴覚が不自由な人が手話を知らない人と容易にコミュニケーションがとれるようになり、より高いレベルの仕事に就くことも可能になるのでは。」と意義を強調しています。
 

筆談の効率性はわかりかねる部分がありますが、このアイテムが情報伝達の手段として優れるようであれば、聴覚障害者の方ももっと手軽に多くの人と会話ができるようになり、特に仕事での活動の幅が広がるだろうと感じました。出典記事にも書いてありましたが、こうしたニーズは米国だけでなく世界中にあるだろうと思います。
 

4位:「点字携帯:OwnFone」
(出典HP:https://ownfone.myownfone.com/
 

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イギリスの携帯電話会社が開発した点字対応の携帯電話です。機体の大きさは、片手に収まるコンパクトサイズで、タッチパネルや番号の書かれたボタンなどはありません。本体表面には予め利用者(持ち主の視覚障害者)が選んだ、“4人”の電話番号が点字でプリントされており、この登録した4人への発信と受信を行うように機能が特化されている点が特徴です。そもそも、自由に電話を使える人でも、登録が無駄に多い場合もあると考えられますので、シンプルライフのためにはむしろ4人くらいがちょうど良いかもしれません。
 

カラーバリエーションもあり、カスタマイズの幅も広いようなのですが、残念ながら現時点ではイギリス国内でしか使用できない仕様になっているそうです。今後の日本上陸を待ちたいですね。
 

3位:「スマートメガネ」
(出典HP:http://tocana.jp/2014/06/post_4372_entry.html
 

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イギリスで開発された、周囲の動きや相手の表情を見る事が可能になる、視覚障害者用メガネ「スマートメガネ」です。メガネ本体より何千もの赤外線ビームが発射され、同時に対象(の物体)から反射される点を、装着しているコンピューターが読み取り、ビデオレコーダーに投影するという仕組みだそうです。写真の右下部分が視覚障害者の見えている世界です。かなりの大きさがありますが次第にコンパクトになり、価格についてもスマートフォンより安くする予定だそうです。このアイテムは、弱視の方が対象であり、残念ながら全盲の方が見えるようになりませんが、イギリスの開発チームはさらに研究を進めたいと考えているようです。
 

2位:「車いすになる自転車『Q―jo(キュウジョ)』」
(出典:http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=99737
 

20140607174945
 

災害時に車いすに変形し、けが人や高齢者を運ぶことができる自転車です。開発をしたのは、名古屋市西区の工作機械設置業、永山順二さん(56)。永山さんは東日本大震災発生直後、自転車が災害現場を走る動画をインターネットで見ていた際に、「負傷者を見つけても運ぶ手段がないのでは」と考え、工具不要・スピーディーに変形できる「車いすになる自転車」の開発を思いついたそうです。実際に2分程で簡単に変形が可能です。障害者用(緊急時用)と健常者用のリバーシブル利用のアイテムはこれから増えていくかもしれませんね。
 

1位:「下肢障害者がボール蹴る!『パワードスーツ:BRA・サントス・ドゥモン』」
(出典:http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/rbbtoday_120757
 

先日から熱戦が繰り広げられているサッカーワールドカップブラジル大会で見かけた方もいらっしゃるかもしれませんが、開幕戦の「ブラジル対クロアチア戦」において、パワードスーツを装着した下肢障害者が、試合前の開会式において始球式=記念キックオフを蹴ったそうです。製品の開発を進めているのは、米カリフォルニア・デューク大学の教授陣と「ウォーク・アゲイン」プロジェクトの研究者たちになります。
 

同プロジェクトは、重度の運動機能障害者のための、全身運動機能回復を主要な目的とする。脳・機械インターフェイス、ロボット工学、リハビリ機器、脳科学、セラピーなどの技術を適用して、新世代の神経機能代替装置を開発・実験・実用化を目指しています。製品の使用感(動き・感触等)は、装着者の脳波によって伝わり、装着者にフィードバックされるそうです。
 

実際の写真が無いので、イメージになります。
実際の写真が無いので、イメージになります。

 

冒頭に「障害者アイテムの産業化」と書きましたが、未開発だった領域に様々な分野で開発、進出が世界各国で始まっています。特に感じたのは、1位の「パワードスーツ」のように、健常者のイベントに、障害者が参加するためのスポット的なアイテムはもっと増えてくるのではないかと感じました(個人的には、日本のアナログ感が好きです)。
 

障害者の便利(補助)アイテムの登場が進んでいけば、もはや「障害者の社会参加」は当たり前となり、その言葉自体も無くなっていくかもしれません。もちろん、すべての障害者にこうしたアイテムの恩恵があるわけではないと思いますが、社会は確実に進歩している中、障害者側が社会に対してどのように参加していくのか考え、実践していく時期が来ているのかもしれません。

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この記事を書いた人

堀雄太

野球少年だった小学4年生の11月「骨腫瘍」と診断され、生きるために右足を切断する。幼少期の発熱の影響で左耳の聴力はゼロ。27歳の時には、脳出血を発症する。過去勤めていた会社は過酷な職場環境であり、また前職では障害が理由で仕事を干されたことがあるなど、数多くの「生きづらさ」を経験している。「自分自身=後天性障害者」の視点で、記事を書いていきたいと意気込む。