100万人に1人の難病だと告白したら、彼氏にフラれた

その晩、私は泣きながら、彼に電話しようとケータイを探していました。病気になったことを話そうとして。
 

ケータイを持つ手にまで涙がつたっていました。とにかく彼の声を聞きたいという気持ちでいっぱいでした。
 

「もしもし」
いつもの声に安心しました。すると彼は私が泣いていることに気づいたようで、
「どうしたん?」
と聞きました。
 


 

私は覚悟を決めて、話を切り出しました。
 

「この間、肺気胸で入院してたでしょ。そのとき、精密検査をしたんだ。そしたら、病気だってことがわかったの。」
 

彼は黙って聞いていました。
 

「100万人に1人の確率でしかならない難病だって言われた。体にラム細胞っていう細胞がいっぱいあって、それが、肺とか腎臓にくっつくらしくて。肺リンパ管筋腫症って病気だって。(※この頃の病名で今は「リンパ脈管筋腫症」)」
 

泣きじゃくりながら一生懸命説明し、彼は黙って聞いていました。
 

そして私は一番伝えたいと思っていたことを、彼に伝えました。
「一緒にがんばってほしい」
 

彼は、黙っていました。そして、間をあけて話しはじめました。
「まずは話してくれてありがとう。大変だったね」
「みかが大変な病気だということは分かった」
「少し時間がほしい」
「また連絡する」
そうして電話は切れてしまいました。
 

私は呆然としました。私の「一緒にがんばってほしい」というお願いに対して、彼が即答してくれなかった。そのことに呆然としていました。
 

付き合って5年。辛いときも苦しいときも一緒に乗り越えてきたから「わかった、一緒にがんばろう」と言ってくれると、どこかで信じていました。
 

即答はしてくれなかったけど、時間をかけてでも言ってくれるはず…。今は彼を待つしかない。一緒にがんばってくれることを信じて、私は彼の連絡を待ちました。
 


 

彼からの連絡は、割とすぐにありました。
「もしもし」
「あのときの話だけど…」
と、彼は話をはじめました。
 

「俺、叔母さんが病気でなくなったとき、すごい怖くて。あんなに元気だった叔母さんが、いきなりだよ。病気ってすごく怖い。みかにいきなり何かあったらと思ったら怖いよ」
 

「だから俺は、一緒にはがんばれない」
 

私は、思っていた言葉と真反対の言葉を受け取り、頭が真っ白になりました。
「一緒にがんばろう」
「おれも病気について勉強するよ」
「もう大丈夫だよ」
こんな甘い言葉を欲しがっていた私は、現実を突きつけられて、すごくショックでした。
 

そう、現実はドラマみたいにはならないのです。
 

「100万人に1人の確率でなる難病」だということをたった一人で飲み込んで、受け入れて生きていかなきゃいけない。そう思うと頭がくらくらしました。
 

一緒にがんばってほしかった。支えてほしかった。怖いときはそばにいて「大丈夫だよ」って言ってほしかった。私は強い孤独を感じました。
 

あれから10年。その彼とは、結局、そのすぐ後にお別れをしました。
 

今も一人で病気とたたかっています。共存しているといったほうが近いかもしれません。とても体調が安定しているので、時々、病気のことを忘れてしまうくらいです。
 

今でもあの夜を強く覚えています。「一緒にがんばろう」と言ってくれなかった彼に対して、私は強い怒りを感じていました。
 

「なんで!」
「どうして!!」
「なんで分かってくれないの!!」
「5年も一緒にいるのに!!」
彼に詰め寄って泣き叫びたい気持ちでした。
 


 

でも今になって、あのときの彼の気持ちを冷静に考えられるようになりました。いきなり自分の彼女が、わけのわからない、聞いたこともないような病気になったと言ってきたらびっくりするし、すごく怖いと思うんです。
 

いきなり、受け止めることができないのも、当然。
 

「病気のおまえには関わることができない」という気持ちはすごく正直だと思います。付き合ってもらうほうが大変だっただろう、無理だとキッパリ言ってもらったほうが当時のお互いにとってはよかったのだと思います。
 

あのとき、キッパリと「がんばれない」と言ってくれた彼の気持ちを今では尊重できるようになりました。もちろん、「一緒にがんばろう」と言ってくれたほうが嬉しかったことはその通りですが。
 

自分が生きていく限り、この病気は切っても切れない縁のようなもの。これから先、誰かに自分の病気を伝えるときは、相手になにかを求めるのではなく、聞いてくれたことに感謝したい。そして、「これからもよろしく」ということを伝えたいです。
 

言いづらいことを伝える行為は、お互いにとってとても複雑で、繊細だからこそ、シンプルな心持ちで対応したいと考えています。
 

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