義足の中が熱中症。え?サンダルって涼しいんですか?

サンダルを脱ぎ捨て、足の指先を伸ばしている女友達に「ねえ、サンダルって涼しいの?」とふと聞いてみた。
 

きょとんとしながら「え、涼しいけど?」と聞き返されたけれど、それは僕にはまったく分からない世界。
 

義足に装具にと、夏でもそれぞれの足にブーツを履いているような状態だと、生足にサンダルという涼しげな格好を経験したことがない。片足だけ不自由だとまた違うのだろうけど、両足の場合だと、とたんに着こなしに制限が生まれる。
 


 

「足が不自由だと何に困りますか?」という問いかけをいただくと、ほとんどの場合「ファッション」と答える。30年以上も足が不自由な生活をしていれば、今さら、歩く、走るが困るとは思わない。
 

それは夏のほうが顕著で、甚平に草履を履いて、浴衣姿の女の子と花火デートしたかったなあとか、海パンにサンダル姿で海でナンパしたかったなあとか。着れる・着れない、履ける・履けないでいえば”できる”のだけれど、それがおしゃれかどうかは別問題。装具に草履を履いてもカッコよくはない。
 

相手が浴衣でもこちらはTシャツ・デニムでいいわけだし、海じゃないところでナンパすればいいわけで、着こなしに制限が生まれるからといって、何かを呪うようなこともなければ、違うところで努力すればいいだけの話のことなのだけど、若かった頃に憧れていた気持ちは忘れられない。
 

車いすユーザーであったり、身体に麻痺があったりと、着こなし以上に着やすさ、着心地といった点で課題を抱えている障害者は少なくない。彼・彼女らから見れば、僕の課題なんて些細なもの。ただ「障害者とファッション」というテーマは、衣食住というような最低限度の生活における課題というより、QOL(生活の質)の観点から考えたほうが解決できる幅は広い。
 


 

先日、ミライロさんの動画で「車いすに乗っている人は歩いている人より暑いのか?」というものがあったけれど、これは義足の中も同様。
 

義足の中の足は、ズボン・義足・密閉状態のインナーという3層構造にすっぽりと覆われており、個人差はあれど、ふつうの足と比較すれば劣悪な環境。足だけ着ぐるみ。特に僕の場合は、インナーに覆われている面積が広く、今年の夏は義足の中がだいぶ熱中症気味。
 

上半身をいくら涼しげに装っても、下半身が灼熱地獄と化していれば、その体温調節は難しい。今年の猛暑が毎年のように続き、平均気温も上がり続けたとしたら、僕らの身体はどうなるのだろうか。義足も装具も、身につけるもの。機能性、通気性、おしゃれ、それらすべてを満たすものが生まれたら、どうにかしてでも手に入れたい。
 

夏だから開放的なファッションを。今までは単なる憧れだったけれど、これからは死活問題かもしれない。
 

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この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。