今、日本でいちばん生きづらいのは「おっさん」かもしれない

「おっさん」と聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。
 

きもい、うざい、ださい、くさい、かっこ悪いなどなど、ネガティブなイメージが強い方も多いと思います。私もおっさんは嫌いです。
 

少し前には「さよなら、おっさん」というフレーズがSNSを中心にプチ炎上(?)していました。おっさんとは特定年齢の男性を指すのではなくて保守的で変化を恐れる人間を指しているのだ、などといった様々な意見が飛び交っていました。
 

ここでは具体的なおっさんの定義をするつもりはありません。おっさんのイメージは人それぞれで構わないと思います。ただ、周囲からおっさんと認知されている、いわば「おっさん認定」を受けている人たちは、実は今の日本でいちばん生きづらい人たちなのではないかと思うのです。
 


 

おっさんを前提に、おっさんによってつくられてきた社会

 

高度経済成長期において、日本の経済成長に大きな役割を果たしたのは当時のおっさんたちかもしれません。
 

猛烈に働き、夜は飲み会と接待。休日はゴルフ。生活の中心を仕事においていれば会社は成長して給料が増えるという時代には、体力と人脈と飲み二ケーションにおけるコミュ力が高いおっさんたちは、さぞ活躍したことと思います。
 

雇用をとりまく法律もおっさんたちがガツガツ働くことを前提にしてきました。例えば失業保険。会社都合で退職するなどして特定受給資格者または特定理由離職者となった場合、45歳~60歳のおっさん世代は他の世代に比べて受給日数が長くなります。雇用保険の加入期間が同じでもおっさんであるだけでたくさん失業保険がもらえるのです。
 

他にも遺族年金の受給条件や寡婦年金など女性よりも男性の収入が高く、男が女を養うことが前提になっているとしか思えない制度は少なくありません。
 

あなたのまわりのおっさんはどのタイプ?3つのおっさんタイプ

 

おっさんのイメージは様々あるかと思いますが、ここで私が思うおっさんのタイプをいくつか挙げてみます。
 

1. 逃げ切りに必死なおっさん
 

定年と年金受給開始までのカウントダウンを始めたおっさん。企業研修で講師をしていると、けっこうな頻度でお見かけします。
 

THEことなかれ主義。大切なのは自分に火の粉が降りかからないこと。当然リスクはとらない。リスクをとってでも挑戦しようとしている人間に対して「そんなことして失敗したらどうするんだ」という何の参考にもならない意見を言って「俺はリスクもしっかり考えたうえで思慮深く行動できている」と思い込んでいるおっさん。
 

会社員に多いのかと思いきや、フリーランスや経営者でもこのタイプのおっさんは意外と多いから厄介です。経営者が逃げ切り必死なおっさんだと、社員のみなさんがかわいそうでしかありません。
 

2. 青い鳥症候群おっさん
 

SNSに自撮り写真とともに大量のハッシュタグなんかつけて投稿しちゃうおっさん。ハッシュタグ自体はいいと思うんですよ、バズらせるためには。
 

青い鳥症候群のおっさんは、なぜかハッシュタグがただの文章だったり、絶対に検索されないようなキーワードだったりして、ハッシュタグ内でのノリツッコミとかオヤジギャグとか、あれ、本当に何のためにやっているんでしょうか。教えておっさん!
 

身体は確実におっさん化しているにも関わらず、いつまでも若いつもりの青い鳥症候群おっさん。たぶん、あのハッシュタグはかまってアピールの暗号で、SNSで自撮りでも発信しないと自分のちょっとした話を聞いてくれる人もいない、悲しきおっさんなのではないかと邪推してしまいます。
 

3. 俺の成功哲学絶対おっさん
 

飲み屋で最強最高最大にうざいのが、俺の成功哲学絶対おっさん。普段は仏よりも優しい私ですが、このタイプのおっさんが飲み会で自分に対して説教を始めたときは全身全霊でキレます。過去に何度飲み屋で怒鳴り合いになったことか。
 

こういうおっさんは、なぜか一度成功哲学を徹底的に否定されると、否定してきた人間がいる前では成功哲学を披露しなくなります。それまでの絶対的な自信どこいったのよ…。しかし、たちの悪いことに、否定してきた人間がいない場では、まだまだ成功哲学によるお説教が続きます。
 

成功哲学を持つことはいいと思うんです。でも、その成功哲学に則って新たな挑戦を何もしてないとか、自分の成功哲学に反するチャレンジを全面否定するとか、人としてどうなのよ。ある程度会社をデカくした創業社長とか、元バリバリの営業マンで今は管理職だとか、そんなおっさんによく見かけます。
 


 

偏見の塊みたいな意見ですが、どのおっさんにも共通しているのは、自分の力で未来を切り開くことは諦め、過去にすがらないと自分のアイデンティティを確立することができない点です。
 

今の自分は何をしているのか、これからの社会に対して何ができるのかを語ることができず、新しいコミュニティには順応できず、相手のことを考えずに自己主張ばかり。人の粗を探すのは大得意で、自分の思い通りにならないとキレはじめる。
 

あぁ、なんと生きづらい人たちでしょう。
 

会社や肩書を失ったおっさんたちに価値はあるのか

 

AIの活用で銀行は大量のリストラを断行するのではないかと報じられています。メーカーでも同様に大量のリストラの可能性などが報じられています。
 

もちろん、優秀な方もたくさんいらっしゃいますが、残念ながら、どうしようもないおっさんも一定割合は含まれていると思います。
 

若者には「仕事なんて選ばなければいくらでもある!」と豪語していたおっさんが、退職したあとにハローワークで「警備員はイヤ。飲食店はイヤ。」とか言っちゃうわけです。会社という「よりどころ」をなくしたおっさんたちに、社会的な価値なんて何もないかもしれません。おっさんの生きづらさは、これから先、より表面化してくるのではないでしょうか。
 


 

人の生きづらさをつくりだしてきたおっさんが、生きづらくなる日

 

盛大におっさん批判を繰り広げてきましたが、私自身も今年で33歳。知り合いの子どもに話しかけるときに、なんのためらないもなく自分のことを「おじさん」と言える年齢です。
 

先日も20代前半の起業家の方と話していて、自分の考えがどんどん保守化していると感じさせられました。確実におっさん化しているのです。
 

これまで、生きづらさというキーワードは、マイノリティを語るときに多かったように思います。そんな中、今までマジョリティの側にいたおっさん。何の変化もしないまま、おっさんはこれからもマジョリティでいられるのでしょうか。
 

もしかしたら「おっさん」というカテゴリは「非おっさん」というカテゴリから見ればマイノリティかもしれません。マジョリティだった側がマイノリティになったとき、今まで他者に強いてきた生きづらさを享受することが、果たしておっさんにはできるのでしょうか。
 

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この記事を書いた人

井上洋市朗

「なんか格好良さそうだし、給料もいいから」という理由でコンサルティング会社へ入社するも、リストラの手伝いをしてお金をもらうことに嫌気が差し2年足らずで退職。自分と同じように3年以内で辞める若者100人へ直接インタビューを行い、その結果を「早期離職白書」にまとめ発表。現在は株式会社カイラボ代表として組織・人事コンサルティングを行う傍ら、「生きづらい、働きづらい環境を変える方法」についての情報発信を行っている。