そこには障害者なんていなかった。1年間のデンマーク留学を終えて。デンマーク留学記⑰

この連載は「ワカラナイケドビョウキ」という不思議な病気になり障害をもった私が、ノーマライゼーション発祥の国デンマークに留学する1年間の放浪記です。デンマークでゴロンゴロンでんぐり返しをしながら「障害ってなんだろう」と考えます。
 

2017年12月、エグモントホイスコーレンを卒業する日がやってきました。カレンダーを一枚ずつめくるたびに、新しい出会いがあり、新しい自分を見つける。そんな1年間だったなと感じています。
 


 

悩む暇もないほどの…悩みだらけの毎日。日本では「障害者」だということに悩んでいました。暑いと手足が痙攣する。疲れると歩けなくなる。歩くときは、まわりの足を引っ張ってはいけないと思い、半歩下がって友人の後ろを歩いてました。あっちをキョロキョロ。こっちでキョドキョド。
 

でもデンマークに来て「なみちゃんは障害を気にしすぎだよ」という友人の言葉にドキッとし「障害ってなんだろう」っていうことに悩みはじめました。
 

「障害者だから」という悩みが「私は障害者じゃないかもしれない」という悩みに変わり「障害者っていないんじゃない?」と変わっていった。たぶんそれは「障害者だから」という言い訳を、障害者にも障害者を取り囲む社会にも許さない国にいたからだと思います。
 


 

世界トップの福祉大国と言われるデンマークは、バリアフリーが整っていませんでした。街中には点字ブロックが少ない。田舎町のバスだと、車椅子はバスにも乗れない。
 

でも、手を挙げたら、目の前に車が停まって見ず知らずの人が車に乗せてくれる国でした。友人に身体を支えてもらって、スキューバダイビングができる国でした。友人の車椅子を押しながら、全力で車椅子ラグビーをする友人たちがいる国でした。皆で手を繋いで、42㎞の道を歩ききる若者たちがいる国でした。
 

12か月を通して、私が探し求めていた障害者なんて世界中どこを探してもいませんでした。目の前にいる友人は、ただの「あなた」だったし、立ち尽くしている私は、ただの「わたし」でした。笑っているときも、友達と映画をみているときも、車椅子に乗っているときも、ただの「あなた」と「わたし」でした。
 


 

私は、帰国後に堂々と足を引きずって歩くようになりました。以前は、横に揺れる自分の歩き方に慣れず、背筋を伸ばしてきれいに歩かなければと思っていました。身体から筋肉がなくなっていくこと、そして、見た目が変わってしまうかもしれないと、ミジンコほどの女心をフルに絞り出しワナワナ。
 


 

大学時代、女性誌の編集部でアルバイトをしていたときは、それぞれのページに綴られている「素敵な女性とは」という見た目重視の価値観に、自分も綴じ込められたような生活をしていました。
 

社会人一年目、ウエディングの仕事をしていたときは、スーツ姿にハイヒールを履いて颯爽と歩く先輩方に、ビジネスウーマンのステレオタイプを投影し、憧れていたことがあります。足が動かなくて悔しいときは、心をボロボロにして家に帰っていました。でも、そんな私が、歩き方はどうでもいいって思えるようになりました。
 


 

イスラエル・パレスチナで現地の人と戦争について話をしたこと、ドイツでナチズムと障害者の歴史を考えたこと、真冬の空の下、海とサウナを行ったり来たりしたこと、ビールを飲み、友達と手を繋いだこと。世界を覗いてみたら、万華鏡のような景色が広がっていました。
 

福祉制度のことなんてこれっぽっちもわからなかったけど(笑)福祉の精神はわかるようになりました。
 

エグモントホイスコーレンはあなたにとってどんな場所ですか?とデンマーク人の友人に聞いたとき、「街だと思う」と彼は答えました。「うまく説明はできないけれど、街だと思う」と。私の心の中に落とし込まれた街を、また半径3mの世界から築き上げていきたいと思います。
 


 

障害者を知らなかった私は、もっとわからなくなって帰ってきました。
答えなんてなかったんです。
世界は私とあなたでできていて、障害者なんて、いないんだから。
 

==========
ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業第36期研修生として留学しました。ミスタードーナツに行くとレジの横に置いてある募金箱。全国の皆様の応援で学ばせて頂きました。
==========

 

【イベント開催】
「デンマークに留学して得たもの解放されたもの」
〜大きく変わった”福祉”と”障害者”に対する考え方。27歳女子の本音〜
 

デンマーク留学の報告会を開催させていただくことになりました。障害ってなに?誰もが暮らしやすい社会って?という問いの答えを探しにデンマークへ留学しましたが、そこで、たくさんの友人たちとともに生活をし、さまざまな体験をすることで感じたデンマークの社会、価値観、福祉、そしてデンマークと日本の違いなどをお話させていただきます。
 

デンマークのこと、福祉やノーマライゼーションについて知りたい・考えたいひとに、ぜひ聞いてほしいイベントです。
 

日時:3月3日(土)15時〜
場所:EDITORY神保町2階(最寄駅:神保町駅)
 

詳しいことは下記のリンクから。ぜひ皆さんに来ていただけると嬉しいです。
http://plus-handicap-denmark.peatix.com
 

記事をシェア

この記事を書いた人

Namiko Takahashi