アナログゲームを通じて発達障害を体験したら、自分の行動の癖に気づいた ーPlus-handicap Session #12レポート

「場の空気を読むのが苦手」
「相手との会話が上手く弾まない」
 

「発達障害」がメディアで取り上げられることが増え、私たちはそのイメージをなんとなく共有しています。しかし、社会で生きていく上で、具体的にどのような場面で、どんなことが苦手なのか。これはなかなかイメージしづらいものです。
 

では、どうすれば感覚的につかめるのだろうか。そのアンサーを探るべく、アナログゲームを使った療育(障害児の教育)のスペシャリストである松本太一さんをお招きし、9月2日に「アナログゲーム王決定戦ーゲームを楽しみながら、発達障害を知る・体験してみるーPlus-handicap Session #12」を開催しました。
 

アナログゲームとは、テレビゲームやスマホゲームではないゲームのこと。

 

イベントは、池袋のカフェ風スタジオカジュアライズで開催。この記事を書いている私を含め、発達障害の当事者もいるなかで開催されました。全員でテーブルを囲みワイワイと、アットホームな雰囲気の中で行われました。
 

まだ誰もいない会場。カフェのような雰囲気のスペース。

 

イベント冒頭で、松本さんにアナログゲーム療育を始められたきっかけを話していただいた後、実際に参加者たちでゲームスタート。2時間で5種類のゲームを楽しみながら「発達障害を抱えているとここでつまずく」ポイントを解説していただきました。
 

私が楽しかったのは「あーぎ!てくと」というゲーム。松本さんによると「ASD(自閉症スペクトラム)の人にとって難易度が高いゲーム」です。
 


 

「あーぎ!てくと」は指示する側と作業する側に分かれ、積み木を組み立てて建築物を作ります。指示する側のみ完成形を知っていて、その指示によって作業が進んでいくのですが、ここからが大変。日本語の使用が一切禁止、数種類のジェスチャーと原始語(ウグングとかゲグングとか)を使って指示を出すというルールなので、コミュニケーションをなんとか成り立たせて、完成を目指します。
 

このゲームで問われるのは「相手の立場に立つこと」と「自分と相手との間で基準のすり合わせをすること」。「積み木を右へ動かせ」という意味の原始語(たしか、ウグング)を使う際、指示する側から見て右なのか、作業する側から見て右なのかというような「誰から見て、右なのか?」という基準のすり合わせが重要になります。
 

ASD(自閉症スペクトラム)の人は、今ここに無いものを想像することが難しいんです。今回のゲームで言えば、「基準=ここに無いもの」です。目に見えないものと言ってもいいかもしれません。私の基準では上手くいかない時に、別の基準があるのではないか?と考え、相手の立場に立ってみる。立場が違う時の想像力を働かせることが必要になります(松本さん)。

 

松本さんはASDの方の特徴を引き合いに出して、このゲームの難しさを解説されていましたが、個人的には仕事の現場などで誰にでも通じるものがあるなと感じます。
 

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この言葉とジェスチャーで指示を出さなくてはいけません。難しい。。。

 

例えば、会社で「この資料をコピーしてきて」と頼まれたとき「急ぎだから、早くやってほしいな」とか「お客様に見せる資料だからカラーで仕上げてほしいな」とか、依頼した側には期待や意図があります。その期待や意図を把握せずに作業を勝手に進めてしまうとミスが発生します。
 

この期待や意図は「基準」であって「ここに無いもの」です。指示を受けたときに相手の期待や意図を明確にしておこう、分からないことは質問しようというのは、社会人として当たり前のことだと思いますが、ASDの人はこのすり合わせ、それも自らすり合わせを行おうとすることが苦手なのかもしれません。
 

ただ、ASDではないひとの中にも、このすり合わせが苦手なひともいるはずです。障害体験といいつつ、仕事における処世術のようなものの得手不得手、出来不出来を突きつけられているかのような感覚がありました。
 


 

もう一つ興味深かったゲームが「花火」というカードゲームです。七並べのように数字をつなげていくのですが、一人一人の勝ち負けを競うのではなく、全員で協力して、数字を並べていくゲームです。
 

このゲームのポイントは「自分の手持ちのカードが見えない」こと。自分以外のプレイヤーのカードは全員分すべて見えているのに、自分のカードだけは分からない。ではどうやってカードを把握するか、並べていくのかといえば「巻物カード」というものを使って、他の人に手札の一部、それもヒントのみを教えることができます。
 

自分の番が回ってくると「自分がカードを出すべきか?」「他の人にそのひとが持っているカードのヒントを伝えるべきか?」悩むことになります。
 

写真のように、自分のカードは見えません。

 

このゲームも、仕事の場面で相通じることがありますよね。例えばオフィスワークに似ています。自分の仕事や役割があっても、仕事の進捗や他のメンバーの様子を見て、自分の作業を変えなくてはならないときがあります。このゲームは機を見る必要性と臨機応変さが鍵になりますし、自分がやりたいことを我慢する必要もあります(松本さん)。

 

発達障害の方にとって「マルチタスクが苦手」という声を聞くことが多いのですが、松本さんの話を聞くと、同時並行で業務や作業を進めることが苦手というだけでなく、職場の作業の進捗を察して、臨機応変に自分の作業や役割を変えていくことが難しいという意味だなと具体的に実感できました。
 

ただ、これも、障害が原因で発生する場合もあれば、単純に苦手なひともいるはずです。「障害体験」と銘打っていても、実際には自分の仕事ぶりを振り返る機会でもありました。
 

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今回のファシリテーター松本太一さん

 

望む・望まないに関わらず、今回楽しんだゲームは、想像以上に自分や他人の行動パターンを見える化してくれました。
 

個人的な話で言えば、自分の「衝動性」が強く出ることに気づかされました。「こうした方がいい」と思うと、言わずにはいられない。イベント終了後に人狼ゲームをやったのですが「しゃべりすぎで怪しい」と疑われたことで、ハッとさせられました。
 

個人の特徴が出るのは私だけではなく、場をリードする、慎重な振る舞いが多い、輪を大切にするなど、一緒にゲームを楽しむ相手が、普段、集団内でどう振る舞っているのかが伝わってきます。
 

アナログゲームというツールは「コミュニケーション」の癖や傾向を明確にしてくれます。場面場面に応じた行動が求められるからこそ、得られる気づきがあり、フィードバックやアドバイスが腑に落ちます。「自己認識」を机上で進めるのではなく、体感できる機会がもっと広がるといいなと思いました。
 

 

ライター:森本しおり

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この記事を書いた人

Plus-handicap 編集局