誰を愛して、どんな人生を歩んでいきたいか。それが「性」だということ。デンマーク留学記⑬

この連載は「ワカラナイケドビョウキ」という不思議な病気になり障害をもった私が、ノーマライゼーション発祥の国デンマークに留学する1年間の放浪記です。デンマークでゴロンゴロンでんぐり返しをしながら「障害ってなんだろう」と考えます。
 


 

8月19日、青空の下、コペンハーゲンは街じゅうに虹がかかっていました。行われていたのは「コペンハーゲン・プライド」。「LGBTQIA」などのセクシャルマイノリティのための、誰もが自由に愛し合い、生きることのできる世界を目指したパレードです。
 

「LGBT……QIA?」はてはて。
 

デンマーク第二の都市、オーフス中央駅に隣接しているトイレはすべてユニセックス。

 

「LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)」は日本でも周知されてきました。「QIA」とは「Queer(セクシャリティを定めない人)」「Intersex(身体に二つの性の特徴を持つ人)」「Asexual(性的な欲求のない人)」の頭文字です。この7つを含めて、デンマークでは約200の性が認知されているといわれています。
 

デンマークは、約90年前に世界ではじめて性転換をした、リリー・エルベが生まれた国。そして約30年前に、世界で初めて同性同士のパートナーシップ制度を認めた国。世界の中でも、性にオープンな国です。
 


 

当日はデンマークの観光名所、チボリ公園も虹色に。市内を走るバスも、セブンイレブンもすべて虹色になっていました。
 


 

一週間に渡ってディベートやコンサート、ダンスパーティなど様々なイベントが行われますが、一番の目玉はパレード。声援が飛び交うあたたかい雰囲気は「初めていった人は必ず泣く」と言われているほどです。
 

手を振ってくれた学生たち。

 

「University of Copenhagen(コペンハーゲン大学)」の文字が、「Diversity of Copenhagen(コペンハーゲンの多様性)」になっています。
 


 

よくみると(推定)平均年齢60代のパレードカー。参加者も観客もおじいちゃん、おばあちゃんから子供まで年齢層が幅広いのが特徴です。
 

歩くシンボル。隣の親子が大爆笑。

 

個性豊かなコスチューム。病院、消防団、自治体、デンマーク軍隊、マイクロソフトやアクセンチュア、JEEPなどの企業もパレードに参加していました。
 

パレードに、親子で手を振るデンマーク人をみて、思いました。
 

もし子供が生まれたら、わたしはどんな社会を見せよう。
 


 

いつか、その子と一緒に、社会という名の絵本に飛び込む。あるページはカラフルかもしれないし、あるページはモノクロかもしれない。最初の一行しか書いていないかもしれないし、白紙かもしれない。答えのないページが、たくさんあるだろう。
 


 

その子が「性」というキーワードだけが書かれたページに辿り着いたら、そこで話し合うのはセックスのことだけではない。
 

誰を愛して、どうやって愛して、どんな人生を歩んでいきたいか、ということが「性」だということ。
 


 

「性とは人生である」と、しっかり話し合いたいな。
 

答えのない問いだらけの人生だから、答えの出し方を探すように一緒に冒険したい。
 

パレード中「初めて参加した人は泣く」という定説を証明するかのように、私はポロポロと思いを流しました。
 

ショーウィンドウに映る姿を見てみたら、頭の上に、ほのかに虹がかかっていました。
 

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ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業第36期研修生として留学中です。ミスタードーナツに行くとレジの横に置いてある募金箱。全国の皆様の応援で学ばせて頂いております。
 

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この記事を書いた人

Namiko Takahashi