週3回、1回5時間。人工透析の時間をどう使うか。

はじめまして。宿野部武志と申します。私は18歳の時から人工透析を受けています。まもなく、満30年を迎えます。そもそもは3歳の時に慢性腎炎を患い、それから腎臓病と付き合っています。現在は、病気と向き合ってきた経験から、腎臓病・透析患者のためのポータルサイト「じんラボ」を運営しています。
 

ところで、皆さんは「人工透析」って知っていますか?最近では、テレビやマスコミで誤解を生むような表現で紹介されることもあるので、簡単にご説明します。
 

簡単にいうと「血液中の老廃物や余分な水分を取り除き、電解質などのバランスを整える治療法」のことです。患者数は全国で約32万人。人口比でいうと約500人に1人という割合です。透析には「血液透析」と「腹膜透析」の大きく分けて2種類がありますが、「腹膜透析」をしている方は約9,000人。ほとんどは血液透析です。
 

ちなみに針は結構太いもの(つまようじ位)を2本刺します。私は現在週3回、1回あたり5時間。これを30年続けてきたわけです。
 


 

この事実を知った方の多くは「それは大変ですね…」と驚き、言葉を失う方もいらっしゃいます。逆に私が困って言葉を失いますが(笑)。
 

30年前に透析を始めた当初は辛かったです。精神的にも肉体的にも。しかし、医学の進歩は目覚ましく、透析医療、そして薬は目覚ましく良くなり、私達患者のQOL(生活の質)は格段に向上したと思います。とはいっても色々あったりしますが、おかげさまで自分で創った会社で元気に頑張っています。
 

透析のことを説明すると「毎回その5時間何やって過ごしているのですか?」というご質問をよくいただきます。私の過ごし方をお伝えして透析のイメージをさらに明確にしていただければと思います。
 

最近の透析施設は進化(大げさ?)しています。ベッドに備え付けのテレビがあるのはほぼ標準。ネット環境が整備された施設も増えています。
 

病気と共に歩んだ人生から、講演活動も行っています。

 

私の5時間の過ごし方としては、1枚目の写真のようにベッドの頭の方を上げたまま、持参したiPadで最初の2時間はイヤホンを付けてBGMを聴きながら読書をし、後半の3時間は動画で見逃したテレビ番組を観たり、amazonプライムで好きな番組や映画等を観て過ごしています。その間にSNSを見たり、メールをしたり。iPadをフル活用、人工透析に欠かせないツールです。その途中に、ジュースを飲んだり、口寂しくなるので飴を舐めたりガムを噛んだり。
 

以前は人工透析の時間は仕事をメインにしていましたが、現在はどちらかというと「リラックスする時間」と捉えています。血液も綺麗にして、心も綺麗に☆という感じでしょうか。
 

透析はもちろん楽しいことではありません。針を刺すことは痛いですし(今は麻酔テープがあるのでだいぶ緩和されています)、5時間ベッドから動けないですし、移植をしない限りは一生続けなければ生きていけないことに変わりはありません。冷静に考えると精神的にも辛いものがあります。
 

それでも、透析時間はどう過ごそうと自由であり(節度はありますが)、「プライベートな時間」「誰にも邪魔されない大切な時間」だと私は思っています。毎回、今日はどの番組を観ようか、どの本を読もうか、あの人にメールを送ろうかなど、ある程度考えたうえでクリニックに向かっています。
 

週3回、毎回5時間というのは、決して短くない貴重な時間です。1ヶ月でみると60時間以上あります。この誰にも邪魔されない貴重な時間を自分らしくどう過ごすか。この自分なりの答えによって、透析に向かう気持ちがだいぶ軽くなるのではないかと思います。
 

こういった発想の転換や捉え方を変えること。ちょっとしたことではありますが、透析に限らず、結構大事だなあと思うのです。皆さんはそういうことありませんか?
 

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この記事を書いた人

宿野部 武志