自然の中で脱ストレス。自然体験型ストレス予防ツアーを開催してみた。

皆さん、こんにちは。心と体の健康を守るナースこと杉本九実です。
 

私はストレス予防を専門に活動していますが、その一環として「自然の中で遊びながら心と体のストレスを予防する!」をコンセプトに、自然体験型ストレス予防ツアーを各地で開催しています。今回は8月23日(土)に山梨県小菅村で開催されたツアーイベントのレポートをお送りしたいと思います。
 

朝日新聞に載りました。
朝日新聞に載りました。

 

●何のためにやってるの?
 

自然体験型ストレス予防ツアーの目的は一言でいうと、「とにかく楽しく、心と体のストレス予防を体感する」ということ。日ごろ私は、働く社会人のメンタル相談や休職・復職者のサポート、メンタルヘルス研修などを行っていますが、心の問題を扱っているだけに、「暗い・重い」雰囲気が漂いがちで、自ら進んで予防に取り組む人が少ないことを感じていました。
 

メンタルヘルスの分野において、早期発見・早期治療(二次予防)や再発防止(三次予防)の対策はある程度整ってきてはいるものの、メンタル不調を自ら予防する(一次予防)ことに関してはサービスや対策が不十分なのが現状です。そして、実はこの「メンタル不調を自ら予防する」ということがメンタルヘルスでは最も重要であると私は考えています。
 

暗くて重い会議室の中で、いくら「予防に取り組むことが大切なんですよ」と説いても、本当に行動を起こす人なんてほんのわずかしかいません。心のどこかでは、「こんなメンタル相談や研修を受けても意味ないよな~」って思っている人だっているはずです。そう、人が自ら行動を起こすためには、そこにまず「楽しさ」がないと動かないんです。
 

楽しさを感じながらストレス予防を身に付けることができる。そのために私が選んだ場所は、暗くて重い会議室ではなく、自然の中でした。皆さんも旅行や日帰りで遠出したときに「癒された、リフレッシュできた」と感じることはありませんか?実はこれは科学的に証明されている効果なんです。「転地効果」といって、普段とは違った環境、特に自然の中で五感が刺激されることで、脳内物質の分泌や呼吸器系統、消化器官などの働きが整えられ、ホルモンバランスや自律神経にもよい影響をもたらすことが分かっています。そして、この自律神経が正常に働くということがストレス予防では重要なポイントになってきます。
 

以前書いた「あなたのそばにある自然が、心と体を支える救世主!」という記事で詳しく説明していますが、自然の中にあるフィトンチット(森の木々から発せられる)やマイナスイオン(海や滝、川から発せられる)といった物質には私たちの体をコントロールしている自律神経の働きを刺激して、正常化する作用があることが分かっています。
 

このような自然の効果を利用しつつ、楽しみながら心と体のストレス予防を体感する機会をつくりたいと思い、関係機関と協力して開発したのが自然体験型ストレス予防ツアーというわけです。
 

●どんなことをするの?
 

先日8月23日(土)に開催されたツアーは都内で働く20~30歳代の社会人を対象とし、7名の方にご参加いただきました。このツアーの最大の特長は、知らないうちに心と体のストレスレベルが軽減できるように、専門的な視点からプログラム全体を構成しているところにあります。
 

自然体験型ストレス予防ツアープログラム内容
 

まず、ツアーの前後にストレスチェックを行います。これは血圧や脈拍など自律神経の状態に左右されやすい生体反応データと、気分プロフィール調査といって主に心理学の分野で使用されるストレスチェック項目データをチェックし、ツアーに参加したことで参加者自身の心と体にどれだけ変化や効果があったのかを客観的に調査しています。各個人に対して、そして集団(ツアーメンバー全体)に対してと、両方の観点から調査できるので、後日、参加者の方へはフィードバックしています。ストレスチェックをすることで、日ごろ忙しく働いていると気にかけることが少ない、自分自身の心と体の状態を知ることができます。これが、ストレス予防の第一歩としてとても大切なことなのです。
 

ツアープログラムは2部構成になっていて、前半には「心のストレス予防」をテーマにストレス予防講座を行います。ここでは、ストレスとは一体何か、ストレス特性や自分に合ったストレス解消法、思考の転換方法など、学校では教えてくれないストレスについて、単なる講義ではなくワークショップ形式で参加者の皆さんとわいわい楽しく、ストレスについて気付いて学ぶ機会をつくっています。
 

後半は「体のストレス予防」ということで、大自然の中で思いっきり体を動かしたり、リラックスしたりする自然体験アクティビティを行います。山梨県小菅村は多摩川の源流域に位置し、森や川、そして温泉と非常に豊かな自然環境があります。ストレス予防の観点からも、自律神経の働きを正常化する自然物質が多く存在している場所といえます。8月は夏のアクティビティということで、冷たい源流の中に入って生き物を観察したり、マイナスイオンを浴びに滝までウォーキングしたり、森の中でストレッチや呼吸法、瞑想などの簡単なストレス解消法を実践したりと、自然を存分に味わって体の中からストレスフリーを体感できる内容になっています。
 

●効果は本当にあるの?
 

このツアーに参加することで本当にストレスレベルは軽減したのでしょうか?そしてストレス予防として効果があったのでしょうか?
 

ツアーの様子
 

ツアーの前後で行ったストレスチェック項目として、気分プロフィール調査を実施したと先ほどお話しました。このストレスチェックはその人の置かれた条件の下で変化する、一時的な気分・感情を測定する指標として使用されています。その結果を分析したところ、ツアーの前後では、「緊張・不安」の項目で低減傾向が見られました。つまり、ツアーに参加したことで、例えば気がはりつめたり不安感が強かったりといったことが、一時的に低減したことが分かりました。この「緊張・不安」は日ごろさらされているストレスの大きさによって変化しやすい項目であり、個々のストレスレベルにちがいはありますが、参加者全体としてのストレスレベルが下がったという結果になります。
 

また、参加者の方からのアンケートではこのようなお声を頂戴しました。
 

・自分のストレスタイプと自分に合った解消法にちがいがあったことが発見だった。ストレス解消法の改善につながりそう。(30代男性)
 

・ストレスの緩和に自然はとても効果的であると改めて感じた。前半のストレス予防講座で、自分のストレス特性などを確認したうえで、後半で自然アクティビティをしてストレスを緩和できる感覚を味わえたことがよかった。まさに、知らないうちにストレスフリーになれた貴重な時間だった。(30代女性)
 

・自分自身が誰かのストレスを生み出している場合があることを知った。ストレスを感じることについてみんなで共有したことで、自分だけが悩んでいるのではないと思えた。今後どのようにストレスを予防していけばいいか気付くきっかけになった。(20代女性)
 

・ストレスについてのワークと自然アクティビティを組み合わせたプログラムがとてもよかったし新鮮だった。ストレスについて悪い印象しかなかったが、参加者同士で考えを共有し新たな発見を得られたことはストレス予防への考え方につながると思った。(30代女性)
 

参加者の方々にとってもストレスについて考えるきっかけになったり、予防することが大切だと感じてもらえたりしたことがうかがえます。ですが、まだデータ量が少ないため、科学的な根拠として不十分であることは確かです。今後も定期的にツアーを開催していくので、多くの方にご参加いただき、その効果を立証していこうと思っています。そして今後の展望としては、この自然体験型ストレス予防ツアープログラムを企業の研修プログラムや福利厚生として利用していただきたいと考えています。
 

次回のツアーは11月15日(土)。今回と同じく、山梨県小菅村にて開催します。ぜひ一緒に「とにかく楽しく、心と体のストレス予防」を体感しましょう。
 

第2回自然体験型ストレス予防ツアーin小菅村

 

記事をシェア

この記事を書いた人

杉本九実

1985年生まれ。順天堂大学卒の看護師・保健師。憧れだったICU看護師となるが、理想と現実のギャップ、過労、ストレスにより心身のバランスを崩し、バーンアウト状態と診断され休職。休職中に訪れた旅で自然の「ありのままに生きる」姿に感化された経験を活かし、2013年PONOプロジェクトを設立。「ストレスやこころの病気を自然の中で楽しく予防しよう!」をコンセプトに、自然の力と看護スキルを活かした今までにない新しいメンタルヘルス事業を行う。