あなたのそばにある自然が、心と体を支える救世主!

皆さん、こんにちは。人と自然をつなぐナース、杉本九実です。
 

私が取り組んでいるPONOプロジェクトは、「ストレスやこころの病気を、自然の中で体を動かし、人とふれ合いながら楽しく予防しよう!」をコンセプトに、専門的な予防スキルを持つ看護の力と自然の力を活用したメンタルヘルスツアーやイベントを旅行会社や地域と連携して企画・運営します。
 

今日は、自然の力が私たちの心と体にどのように影響しているのか?なぜ自然が心と体にとって良いのか、お伝えしたいと思います。
 

皆さんは旅行に出かけたり、山や川、森や海などに遊びに行ったりしたときどう感じますか?「気持ちいいな~」「癒される~」と感じる方が多いのではないでしょうか。実はこの感覚、心だけではなく体も感じているのです。私たちの心と体は、生きていく上で必要な「ある機能」によって密接に関係しています。
 

森林
 

◆心と体が自律神経機能によってどのようにコントロールされているか
 

私たちの心と体は、活動と休息を繰り返しながら日々生きています。この活動と休息のバランスを保つ機能が自律神経機能と呼ばれるものです。自律神経機能とは、活動をつかさどる交感神経と休息をつかさどる副交感神経の作用により成り立っていて、この機能を刺激している要因がいわゆるストレスです。
 

ストレスとはいっても、皆さんが想像するような悪いイメージのものだけではありません。実は、私たちが生きていく上でストレスはなくてはならないものなのです。ストレスは、外的ストレス、内的ストレス(下図参照)に分類され、これらの適度な刺激が、さらに自律神経機能を刺激し作用することで、活動と休息のバランスを保っています。
 

jiritsu
 

このバランスが適切にコントロールされることによって、循環機能や呼吸機能、免疫機能、精神機能などの生きていく上で必要な機能が正常に働きます。言い換えれば、これが健康な状態と言えるでしょう。しかし、ストレスが私たちの心と体にとって耐えられないくらい過度な刺激になってしまうと、自律神経機能のバランスが崩れ、コントロール不良になることで様々な身体的・精神的症状が出現してしまいます。つまり、私たちの心と体は自律神経機能の働きによってコントロールされているのです。
 

◆自然の要素が自律神経機能にどう影響しているか
 

この自律神経機能のバランスを保つ予防的手段として、PONOプロジェクトが注目しているのが自然の力です。ドイツでは約150年前から、自然の力を活用した「気候性地形療法」という、健康保険適応(ただし、一定の条件をクリアした場合のみ)の治療法が確立されています。
 

気候性地形療法とは、森林、川、滝、海、温泉などに存在する自然環境因子を利用して、治療やリハビリ、健康づくりをするものです。気候性地形療法の2大作用は、刺激と緩和。つまり、気候性地形療法の目的は、自然環境因子による刺激と緩和作用により、交感神経と副交感神経をうまく刺激して自律神経機能を正常化させることにあります。(下図参照)
 

プラハン 画像1

ひとつ例を挙げましょう。
 

皆さんの中でも、森林セラピーという言葉を耳にしたことがある方は多いかもしれません。森林セラピーは森の温度、湿度、風、光、香り成分であるフィットンチッドなどの自然環境因子を活用した療法として、医学的根拠に裏付けられています。例えば、研究によって医学的・科学的根拠が証明された項目をいくつかご紹介します。
 

・心理的リラックス状態が高まる
心理測定として使用されるPOMS(気分プロフィール検査)により、森林内歩行後、森林は都市と比較して「緊張」「疲労」の気分が緩和され、「活気」が高まることが判明した。
 

・ストレスホルモンが減少する
コルチゾールは代表的なストレスホルモンで、ストレス時に濃度が上昇し、体の反応として心拍数が上昇したり汗をかいたりという交感神経優位の状態になるが、コルチゾール濃度測定により森林内歩行において、森林は都市に比べてストレスホルモン(コルチゾール濃度)が減少することが判明した。
 

・血圧や脈拍数が減少する
収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍数はストレスがかかると上昇するが、血圧・脈拍測定により、収縮期血圧および脈拍数が都市に比べて低下していることが判明した。森林の方が都市よりリラックスしている状態にあると言える。
 

・交感神経活動が低下する
心拍変動性(HRV)心拍の揺らぎを解析することにより、自律神経活動を副交感神経活動(リラックス時に亢進)と交感神経活動(ストレス時に亢進)に分けて数値化できるのだが、森林は都市に比べ交感神経活動が低下し、ストレスが緩和されていることが判明した。
 

このように、自然の力が自律神経機能に作用することによって、私たちの心と体はより良い状態を保つことができるようになること、そして医学的・科学的根拠のもとに証明されていることであると、お分かり頂けたかと思います。
 

◆身近な自然に触れる機会を定期的にもつことが大切
 

今回私が一番伝えたいことは、自然の力は私たちの心と体を支える救世主であるということです。遠出して雄大な自然を満喫するのもよし、時間がなくて遠出できないときは、近くの公園を散歩するのもよし。とにかく、身近な自然の存在を感じることから始めてみましょう。実は意外と私たちのまわりには自然がいっぱい溢れています。そして、定期的に自然を感じる、触れる機会をもつことがストレス解消、気分転換につながるのです。
 

ぜひ、あなたの身近にある自然に触れてみて下さいね。

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この記事を書いた人

杉本九実

1985年生まれ。順天堂大学卒の看護師・保健師。憧れだったICU看護師となるが、理想と現実のギャップ、過労、ストレスにより心身のバランスを崩し、バーンアウト状態と診断され休職。休職中に訪れた旅で自然の「ありのままに生きる」姿に感化された経験を活かし、2013年PONOプロジェクトを設立。「ストレスやこころの病気を自然の中で楽しく予防しよう!」をコンセプトに、自然の力と看護スキルを活かした今までにない新しいメンタルヘルス事業を行う。