皮膚科医に依存するほど治らない、アトピーのジレンマ

アトピーは治せないのではなく、治せる環境がない!

 

アトピーは一般的に根治治療が難しい病気です。ネットや巷にて、たまに「アトピーは必ず治る」と言う声を聞くこともありますが、たいていは「食事は基本全部無添加で食物油は控えて。食べ過ぎはだめ。ストレスを貯めずに適度な運動と規則正しい生活を送ってね。空気はなるべくキレイに。もちろん合成洗剤とかもNGだよ。」というような条件がついています。
 

ある程度の発展した都市に住み、仕事で忙しい毎日を送り、400万円と言われるサラリーマンの平均年収と同等の経済力のアトピーの人で、この条件を満たせる人はどれ位いるでしょうか(ちなみに現在の私は合成洗剤以外ほぼ満たしていません)。
 

上記のような生活無くしては根治治療が難しいと言われているアトピー。まるで仙人のような生活を求められるアトピー患者にとって、皮膚科医という存在は実に心強い存在です。魔術師のようにステロイドやプロトピックといった薬を処方してくれて、炎症や痒みを抑え込んでくれます。
 

薬を塗っても治らないのは誰のせい?

 

さて、このお薬。アトピーの人にとっては超魅力的なものですが、あくまでも、「ある程度」仙人に近い生活をしながら、指示された量や回数を守っている場合に効果が生まれるもので、それを逸脱すると効果を実感できなかったり、副作用が起きたりします。
 

問題なのは「ある程度ってどれくらい?」という点。これが実に曖昧で、ちゃんとした基準値がありません。同じような症状の人たちが同じ薬で同じ回数で同じ量を同じ部位に塗っても、効果はバラバラ。したがって、通常は定期的に皮膚科医に通い、先生に確認してもらい薬の微調整をしてもらいます。
 

しかし、せっかく微調整してもらっても、たまたまその直後にストレスが増加したり(例:締め切り前で残業が続いた)、食品添加物の量が増えたり(例:居酒屋での飲み会が続いた)すると、期待通りの結果にはなりません。いわゆる「薬を塗っても治らない!」という状況に陥るわけです。
 

男性ドクター画像1
 

皮膚科医は心強いアドバイザーであり、魔法使いではない

 

多くの患者は「皮膚科医は皮膚の専門家なんだから、とりあえず処方された薬を飲んで定期的に診察受ければ大丈夫なはず」と無意識に皮膚科医に依存しているので、アトピーの悪化に繋がる生活環境を見込んだ薬の微調整をしてくれない皮膚科医に不信感を抱き始めます。「あの先生はちゃんと診てくれてない」「ステロイドを出せばいいと思ってる」「他に良い先生を探そう」という声が上がることも少なくありません。でも、自分の生活環境は大きく変わらないので、結局病院を変えたところで期待通りの結果にならない事がほとんどです。
 

「他人に治してもらおうと思っているうちはアトピーは治らない」
 

この考えにたどり着くまで、私は10年以上かかっています。その間、数百万円、数千日をアトピーの為に費やしました。とはいえ、気付いた今、自分の生活環境はどうかというと、大きな変化があるわけではありません(笑)。ただ、今のところ(昔に比べて)症状が落ち着いているのは、「ま、こんな生活してちゃそうなるわな」という自業自得感が、治らないことへのストレスより大きいからだと思っています。
 

皮膚科医に対して過度な期待をしなくなってからは、自ずとトラウマも無くなってきました。ちょっと前までは裏切られた感が強く「皮膚科に行くのが怖い」くらいに思っていたのですが、今はむしろ「病院に行って検査を受けたい」と思ったりもします。程よい距離感がかえって患者と皮膚科医の関係を良好にするのかもしれません。これって恋愛と一緒じゃんと思う日々なのです。
 

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この記事を書いた人

野村千代

1986年生。法政大学卒。日本と韓国のハーフで、韓国系の貿易会社、EC会社に勤務した後、2012年にフリーランスとして独立。1年程韓国と日本でスタートアップ・ベンチャーのローカライズ事業を展開するが、持病であるアトピーの悪化により数ヶ月療養生活を送る。自身のアトピー経験から、現在はアトピー患者の為のウェブサービスuntickle(アンティクル)を立ち上げる。アトピーの人が気軽にかつ継続してアトピーと向き合える仕組みづくりに取り組んでいます。