「転職したい病」の発症時期別傾向

春は出会いと別れの季節と言いますが、春を迎える直前の1月~3月はもっとも転職市場が盛り上がる時期です。
 

これは、多くの企業が3月決算のため、4月に新入社員を迎えるため、冬のボーナス支給後に転職活動を始め1月~2月頃に内定が出るためなど、いくつかの理由があります。最近は求人数も増えているため、転職市場は活況を呈しているため、転職を考える人たちも多いと思います。今回は“転職難民”にならないために、早期離職者100人インタビューをした立場から、転職を取り巻く環境についてお伝えします。
 

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まず、転職を考える際に知っておきたいのは、人材紹介会社(転職エージェント)にとっては1月~3月は稼ぎ時ということです。当然、人材紹介会社の営業担当者は達成目標が高くなります。そのため「とりあえずこの人をこの会社へ転職させてしまえ」という雑な対応になる可能性もあるということです。これはあくまで“可能性がある”という話であって必ずしもそうではないのですが、人材紹介会社の知人などの話からすると珍しい話ではないそうです。となると、人材紹介会社の担当に乗せられて、本当はそんなに真剣に転職をしたいと思っていたわけではないのに転職をしていまうなんて人もいますから、注意が必要です。
 

新卒入社後3年以内の退職について、大まかな特徴を表にまとめましたのでご覧ください。これは私が100人インタビューをした結果から、時期別の退職理由傾向をまとめたものです。もちろん、個々の事情によって退職理由は異なりますし、必ずしもこの表通りではないことも多いですが、全体の傾向としてとらえてください。
 

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私のインタビューでも、やはり1月~3月に退職する方が多かったです。一方で、退職の原因ががパワハラやうつ病の発症などによる場合は、時期は関係ありませんでした。
 

どの時期に退職したから良い、悪いというものはありません。大切なのは、求人が増えたり転職が増えたりすることには理由があるし、転職エージェントから声がかかるのも転職エージェントなりの理由があることをしっかりと理解することです。また、在職期間が3年以内の早期離職においては、相当ネームバリューのある企業に在籍していたか、まったく同じ業界に同じ職種で転職する場合を除いてほとんどの場合は年収は下がりますし、転職できる企業は中小企業になります。
 

日本の転職市場においてはまだまだ「転職経験がある」ことが経歴にキズがあると考える傾向があるのが現実です。企業によっては「転職回数は1回まで」「勤務期間2年以内に退職経験がある場合は不可」などの条件を(決して公表はしないものの)設定している場合も少なくありません。「会社は2年で辞めていい」「3年以上同じ会社にいる方が大きなリスク」と言う人もいますが、大抵の場合、そういう人は一流大学を卒業して大手企業に入社しています。先ほども書きましたが、転職においては「どこの会社にいたのか」は重視される項目の一つです。日本企業の99%は中小企業で、全サラリーマンのうち約7割は中小企業で働いています。つまり、大手企業で働いている時点で「世間一般」とは違う人たちだということを認識しておきましょう。
 

この時期になると、周囲が転職した、転職活動しているという情報を聞いて思わず「自分も!」と行動してしまう人がいますが、転職には一定のリスクがあることも知っておけば、あとから後悔することも少なくなるはずです。

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この記事を書いた人

井上洋市朗

「なんか格好良さそうだし、給料もいいから」という理由でコンサルティング会社へ入社するも、リストラの手伝いをしてお金をもらうことに嫌気が差し2年足らずで退職。自分と同じように3年以内で辞める若者100人へ直接インタビューを行い、その結果を「早期離職白書」にまとめ発表。現在は株式会社カイラボ代表として組織・人事コンサルティングを行う傍ら、「生きづらい、働きづらい環境を変える方法」についての情報発信を行っている。