「若者はなぜ3年で辞めるのか?」の真実

「3年で辞めることは悪いことではない」
「なぜ、3年で辞めることを悪いととらえるのかわからない」

 

私が代表を務める株式会社カイラボで『早期離職白書』を発行するにあたり、
100名の早期離職者へ対面インタビューを行っている際に、「あなたのやっていることの社会的意義がわからない」というニュアンスで言われた言葉です。

 

こういった事を言われる方々は、自身も3年以内の退職を経験し、それでも今では自分で満足出来る生活を送っている方に多い傾向があります。

 

彼ら、彼女らにとっては3年で辞めることはステップアップであり、終身雇用の会社に居座り続けることが、必ずしも良いことではないということを、自身の体験から感じているのです。

 

実際、私が行った調査でも、退職したことを「後悔している」と述べたのは100名中4名。多くの方は「後悔している」とは考えていないようです。

 

しかし、一方でこんなデータもあります。 転職回数と年収の関係性です。

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転職回数が増すと、年収は下がる関係性にあります。

 

この調査を行っているのが、転職エージェント業界トップのリクルートエージェントというのがまた驚きです。

 

さらに、早期離職白書の中でも紹介していますが、3年以内で退職した若者のうち、67%は退職した企業に対してネガティブな印象を持っています。

 

また、3年以内で退職した若者の16%が退職企業において、休職を経験しています。この休職は産休や育休は含まないので、いわゆる「うつ病」などの精神疾患が原因です。

 

加えて、休職制度がないなどの理由で、「うつ病」と診断されながら休職をしなかった人もいますので、3年で辞める若者の20%前後は精神疾患を患っていると考えられます。

 

そして言うまでもなく、全員が退職企業へネガティブな印象を持っています。

 

冒頭で紹介したとおり、3年で辞めてステップアップをしたという人も確かにいます。そういった人がいることは事実です。

 

しかし、確率的にはそういった人は稀です。

 

にも関わらず、「3年で辞めると決めて入社しました」という人がその後成功して、「企業は3年で辞めなさい」「私は3年で辞めて成功した」というような話が広がると、「3年で辞めるのは悪いことではない」という印象を持つ方が増えます。

 

ここで冷静に考えてもらいたいことがあります。100人中1人しかその方法で成功しなかったとしても、「3年で辞めることが成功への近道」と言えるのでしょうか?

 

例えば、東大卒で年収300万円のタクシー運転手と、彼のタクシーに偶然乗った中卒で年収3000万の社長がいたとします。

 

この現場だけを見て、「東大卒よりも中卒の方が高い年収を得られる」と言えるでしょうか?

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確かに、東大卒よりも年収の高い中卒の人はいるでしょう。 最近では、大学院を卒業しても仕事がない高学歴ワーキングプアという言葉もあります。

 

しかし、統計的には、学歴が高いほど年収は高い傾向にあります。

 

厚生労働省の調査では、大卒・大学院卒と高卒(中卒は該当データ無し)では、月収で約10万円の差があります。

 

年代別で見ても、前年代で大卒者の賃金の方が上回っています。大卒・大学院卒は職務経験がなく、 高卒は5年目以降に入る20代前半でさえも、大卒・大学院卒の方が約2万円高くなっています。

 

また、賃金の上昇率についても、入社時を100とした場合、高卒では最も上昇率の高い50代でも190、つまり初任給の2倍にも満たない月収です。一方、大卒・大学院卒の場合、50代前半で246と、入社時の約2.5倍となります。

 

大卒初任給が20万円で、賞与2ヶ月×2、年収320万円、 50代前半で月収50万円、賞与2ヶ月×2、年収800万円と考えれば、みなさんのイメージとも差はないのではないでしょうか。
 
※上記データはいずれも男性の場合

 

もちろん、これは現在の50代のデータがベースになっていますので、今後は学歴による差は縮まる可能性もあれば、さらに広がる可能性もあります。

 

いずれにせよ、こういった全体の傾向をわかったうえで、自分自身のキャリアを考えることは非常に重要です。

 

冒頭にも述べたとおり、「3年で辞めることが悪いかどうか」は個別の事情によって異なります。

 

しかしながら、3年以内で退職した若者の67%は退職企業に対してネガティブな印象を持ち、更にそのうち約23%は休職の経験があるという事実は、社会としてもっと憂慮すべき問題です。

 

同時に、早期離職がなぜ起こるのか?という問に対しても、「ゆとり教育による弊害」「マネジメント不足」「企業と学生のミスマッチ」などという、抽象的な言葉での議論ではなく、個別事象と全体傾向を把握しながら、「ゆとり教育による影響がどの程度考えられるのか?」「マネジメント能力は離職率に影響するのか?」などの方向性からの検証が必要です。

 

また、就活中の学生や転職を考えている若手社員は、「確率的にはどうした方が自分の望む結果に近いのか?」「成功率が低いのであれば、どんな勝算があるのか?」という視点から自分のキャリアについて考えることで、一時の感情や客観性に欠く情報に泳がされることなく、自分の決断に自信が持てるようになるでしょう。

 

そして、決断に自信を持てた人が、「生きづらい」という感情から解放されるのではないでしょうか。

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