皆さま、ごきげんよう。矢辺です。
今日は久々に、わかものの就職問題の根本について書きます。どのように雇用を増やすのか、という問題については触れておりませんので、読む前に事前にご了承ください。
よりよく生きるカフェというわかものが相談できる居場所を作り、日々、働けないわかものの就職や働き方の相談にのっていますが、彼らに多いのが「正社員になりたい」という声。職種や業種でもなく、「正社員」という条件がほしいというのです。
その時の話の内容を再現してみましょう。
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矢辺:
「なんで正社員になりたいの?」
相談者:
「周りの人は簡単に正社員になっていて、自分だけ正社員になれないなんて。正社員になって認められたいんです!」
矢辺:
「じゃあ認められたいんだね?認められたいなら、ボランティアでもアルバイトでもいいんじゃない?」
相談者:
「それだと将来が不安で。だから、正社員になりたいんです」
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もし皆さんが同じ立場だったら、どう考え、どう相談に対応しますか。
私は、「正社員になりたい気持ちはわかるが…」と前提をおいた上で、下記のことを伝えます。
・正社員には、給料の3倍近くコストが掛かっている
・給料をもらう以上、価値を発揮する必要がある
・会社はその発揮してくれる価値を信じて採用する
その上で、「自分には何ができると思う?会社に何が提供できると思う?」と聞くと、全員が「そんなことを考えたことがなかった」と言います。
このような就職ができないわかもののこれまでの生育歴を聞くと、イジメ、友達がいなかった、たどたどしいコミュニケーション、親との不仲など、学校でどこか浮いた存在であったり、仲間はずれにされたり、幼少期から家にも家の外にも居場所がなかったような方が多いように思います。
確かに、このような生育歴があると、物事の関心が外に向かず、内に向き、「相手に何をしてもらうか」という思考になりがちなのはよくわかります。しかし、「企業で働く」ということは、「相手に何をしてもらうか」というスタンスで働くことは難しいです。というのも、企業で働く上では、前述のように「相手に何ができるか」という外向きの思考がとても大事になるからです。
「相手に何ができるか」という思考を持つために大事なことがあります。それは、「自尊心」です。私は「自分に存在価値がある」と無条件に自分で信じられる力のことです。
この「相手に何ができるか」と「自尊心」をコップと水で現してみましょう。水が自尊心です。コップ一杯に自尊心という水が一杯になり、溢れた時に始めて、「相手に何ができるか」とはじめて考えられます。考えてもみてください。自分のお腹が減っているのに、相手に食べ物をあげることは、とても難しいです。
わかものの働く問題を解決していこうと思うのであれば、1つの方法として、このように「相手に何をしてもらうか」という内向き思考ではなく、「相手に何ができるか」という思考をしっかりと持てるようになるために、「自尊心」を持てるようになることがとても大事になります。
話が逸れますが、これは、障害者も同じで、障害があると「自分は価値がない」と思いがちです。そのため、「相手に何をしてもらうか」が思考の中心になります。やはり話をしていて、そういう人は就職できないですね。実はわかものと障害者の働く問題については、根本は同じだと思っています。
閑話休題。
さて、わかものと接していて感じますが、この自尊心は、一長一短に身につけられるものでもありませんし、自分の思考もすぐに変えられるものではありません。20年以上生きてくる中で身につけてきた思考を変えることは並大抵のことではありませんから。
幼少期から安心できる居場所をどれくらい持てるかどうかが、自尊心を育てることにとても大事になります。そのためにも、本当にわかものの雇用問題の解決には、家庭環境、地域、初等・中等教育という根本対策がとても大事になると考えています。一時的な就労支援、キャリア教育だけでは解決しない問題であり、より小さな頃の問題に取り組まない限り、根本は解決しないと考えています。この家庭環境、地域、初等・中等教育にも関わっていければと考えています。