障害者を雇用する企業向けの資格。雇用環境整備士第2種(障害者雇用)とは?

雇用環境整備士という資格を皆さんはご存知でしょうか。
 

一般社団法人日本雇用環境整備機構が認定する、育児・障がい・エイジレス対象者の雇用促進と受け入れるにあたっての適正な職場環境整備を目的とした、役員や管理職、人事担当者向けの資格です。この資格は3種類に分かれており、それぞれ、第1種が育児者、育児休暇取得対象者(子育て中のママパパです)、第2種が障害者、第3種がエイジレス高齢者(定年後の再雇用対象者)です。それぞれの対象者を採用し、受け入れるにあたっての専門知識や関係法令知識、企業事例等の情報を習得した方が、雇用環境整備士として認定されます。今回私は、第2種(障害者雇用)の認定を受けました。

参照先:一般社団法人日本雇用環境整備機構ホームページ
 

雇用環境整備士写真①
 

障害者雇用における大きな問題点の一つに、障害者に対する理解度があります。言い換えれば、「世の中にどのような障害者がいるか知っているかどうか」ということです。
 

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自分の両親、兄弟、親戚、友人、同僚などに一人でも障害者がいたならば、彼・彼女の障害に関する理解する確率は一定以上ありますし、「障害」や「障害者」について考えるきっかけ、知ろうとするきっかけが生まれます。もちろん、福祉について勉強していたり、ボランティア活動等を通じ交流していたりすれば、なおさらです。しかし、自分の身近に誰1人障害者がいなければ、そのきっかけを掴むことはできず、結果として障害者に対する理解度は低くなる、あるいはゼロになります。
 

雇用現場において障害者を受け入れる際、この理解度の幅が重要になります。障害者と初めて接するのか?何回も接していて慣れているのか?この違いは非常に大きく、前者であれば不幸な結果を招く可能性が高まります。初めて接するからこそ、分からないことが多すぎる。自分とは全く違う障害者という文化圏の中で生きてきたひととの交流はマネジメント側へのストレスを増大させますし、自分のことを理解、配慮してくれないと感じる障害者側のストレスも尋常ではありません。反対に、慣れているのであれば、このストレスを軽減させることができます。
 

雇用環境整備士の講習会でも、この障害者の種類、特徴という部分に多くの時間が割かれていました。採用・配属が決まってどのような障害者を受け入れるのか分かっている現場と違い、人事担当者の場合は、どのような障害を有した方が応募に来るのか分かりません。障害者に対する理解度は、人事担当者、それ以上に経営者に求められるものなのかもしれません。
 

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また、企業と求職者のニーズの違いに対しての訴求も興味深いものでした。企業側の論理、社員側の論理が100%重なることはないと思いますが、お互いに歩み寄る必要があることは間違いありません。この資格は企業側が取得するものなので、社員側、つまり障害者社員をよりよく受け入れるために、こちらから歩み寄ろうという観点での説明でした。
 

2050年に労働人口(15歳〜64歳)は8158万人から5837万人へと減少するため、障害者社員を戦力として活躍させなければならないこと。グローバル化による外国人社員の増加が予測されるため、異文化社員を受け入れる土壌を作らなければならないこと。この2点が歩み寄るための背景であり、動機づけです。これらは納得するものだったと感じています。
 

その他にも、企業内でなかなか理解されにくい発達障害の方の受け入れ事例、バリアフリー対応・職場での配慮が求められる肢体不自由の方の受け入れ事例など、細かい事例も聞くことができます。
 

障害者雇用促進法の改正により法定雇用率が引き上げられたことで、過去と比較すれば、障害者が雇用される確率は高まっています。また、雇用環境整備士のような資格があることで、企業が受け入れる際に必要な情報等を入手することがたやすくなり、また、客観的に受け入れ体制の構築の有無、程度が分かるようになってきています。「障害者は働きづらい」という当事者からのシグナルに対し、少しずつではありますが社会は変わろうとしています。よりスピーディーにという意見もあるかもしれません。それは当然です。否定できません。
 

ただ、忘れてはならないことは、社会が受け皿を用意しようとしている今、今度は働く障害者、働こうとする障害者が変わる番です。歩み寄るということは、こちらからも一歩踏み出すことが求められます。「障害者を雇用してもいいね!」「仕事の生産性も高いじゃん!」「ありがたい!」そう思われる働きぶりを残していくことが、後に続く障害者の未来にも関わってきます。変わるべきときは今、考えるべきことは未来、なのかもしれません。
 

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この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。