ブラック企業を怖がることの恐怖

 
「ブラック企業」という言葉が一人歩きしています。
 

4月15日発行の日経ビジネスは『それをやったら「ブラック企業」今どきの若手の鍛え方』というタイトルで、ブラック企業について大々的に特集しています。
 

また、自民党はブラック企業の公表を義務づける方針を掲げています。ここではブラック企業の例として「パワハラや劣悪な労働を強いて退職を強要する企業」があがっていますが、学生をを中心に20代の中で言われている「ブラック企業」はもっと範囲が広いのではないかと思います。
 

ちなみに、「ブラック企業大賞」なるものを発表している、ブラック企業大賞企画委員会ではブラック企業を下記の通り定義しています。
 

①労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている企業 ②パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む) ③また環境破壊や事業所の周辺環境や地元地域社会への配慮・貢献、消費者のニーズ・アフターケアに対する考慮が薄い企業なども含まれる場合がある。

 

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こういった流れに対して、「若者はなぜ3年で辞めるのか」の著者でもある城繁幸氏は「実はブラック企業の大半は合法であり、ユニクロは優良企業であるという現実」という記事をブログに掲載されています。
 

結局のところブラック企業とは何なのか?
 

ブラック企業=違法な企業と定義すると、城氏が指摘するように、実は多くの企業は合法的に制度を運用しています。 そうなると倫理的な判断基準が焦点となるわけですが、これは個人によって定義が異なってきます。
 

つまり、絶対的なブラック企業などというものはほとんど存在しておらず、企業側が個人の価値観と合う働き方を提供できるかどうかで、ブラック企業か否かが判断されているのです。
 

私はこれまで早期離職者100名以上に直接インタビューを行ってきましたが、その中で「前の会社はブラック企業だった」という発言をするのはだいたい10%前後です。さらに、その中で「確かに正真正銘のブラック企業だ」と私が聞いて感じるのは30%程度。つまり、絶対的なブラック企業は早期離職者が出ている企業の中でも3%程度という感覚です。 (あくまで、筆者の主観です)
 

本人がブラック企業だと言いながら、私がそう感じないのは、運悪く対人のコミュニケーションに問題がある上司や先輩についてしまったケースや、労使協定の内容を理解していないケースです。
 

最近は、転職の口コミサイトも増え始め、ほとんどの企業が「ここはブラックだ!」と言われてしまっている状態です。そして、前出の日経ビジネスに掲載されたデータによると、『「ブラック企業ランキング」などネット上の評判は就職活動にどの程度影響を与えていますか?』という質問に対して、約40%が「志望するのをやめた」、55%が「やめはしなかったが、志望順位は下がった」と回答しています。
 

それだけ、世間ではブラック企業に対して敏感になっているのです。
 

そして、「自分はブラック企業に入ってしまった」と思って退職をする方は、「次こそは絶対に騙されないぞ」と気持ちが入りすぎてしまうあまり、前の会社で不満だったポイントについてのあら探しを徹底的に行うものの、かえって他のポイントが見えなくなってしまい、転職した先を再度短期間で退職するケースが少なくありません。
 

例えば、最初の会社で労働時間が長いことに不満を覚えている場合、次の仕事は労働時間が短い、残業が少ない環境を求めます。しかし、それ以外の部分に目が行かなくなってしまい、入社後に社風が合わない、業務内容が思っていたものと違っていたという理由で再度退職するのです。
 

初めての就職活動ならともかく、転職ということは一度就職活動の経験があることを意味しています。しかし、このような状況に陥るのです。学生時代にあれだけやっていたはずの自己分析や業界研究などどこかにすっ飛ばしてしまい、ただただ「今のブラック企業から逃げたい」気持ちがそうさせてしまうのでしょう。

 

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世の中には「社員をいかに使い捨てるか?」を考えている正真正銘のブラック企業も実在するでしょう。その存在を否定するつもりはありません。しかし、ほとんどの企業は人によってブラックにもホワイトにもなり得る、グレーゾーンの企業です。だからこそ、企業に対して疑心暗鬼に陥るのではなく、自分の大切にしたいこと、絶対に避けたいことを明らかにしたうえで、“ブラック企業を正しく怖がる”ことが必要なのです。

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