正しい早期離職のやり方マニュアル

私は、今年の1月に早期離職白書などを発行し、企業、社会、個人の視点での早期離職対策について情報発信をさせていただいています。
 

早期離職に対しては、「基本的にはしない方が良い。でも、どうしても耐えられないときはすんなり辞めた方が良い』というのが持論です。この意見に対しては、「辞めても別に良いじゃないか」という意見の方もいらっしゃいます。
 

今回は、なぜ私が早期離職は基本的にはしない方が良いのか? そして、どうしても耐えられずに辞めるときにはどうやって辞めたら良いのかについてお伝えしようと思います。
 

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私が早期離職に対して基本的に反対の立場を取っているのは、今の日本の労働市場において、新卒3年以内での離職というのは非常にリスクが高まるからです。また、デメリットはたくさんありますが、3年で辞めたことに対するメリットはほとんどありません。例えば、「この人は3年以内で辞めてるから採用は見送ろう」ということはあっても、「この人は3年以内で辞めてるから、是非採用しよう」とはならないということです。もちろん、第二新卒枠の応募条件が大学卒業後3年以内などの場合もありますが、それは応募条件であって、「3年以内で辞めているから、是非採用しよう」とはなり得ません。
 

メディアに露出している「成功者」と呼ばれる人たちの中には、3年以内での退職経験がある方も少なくありません。また、外資系企業に勤めていた方などは、「日本人ももっと積極的に転職すべきだ」という主張の方もいらっしゃいます。たしかに、3年以内で退職して成功された方がいらっしゃるのは事実ですが、それはごく一部の、言ってしまえば、例外みたいなものです。ほとんどの場合は、3年以内の退職は労働市場において、自分の評価を下げることになります。3年以内の退職はできる限り避けることをおすすめしている理由です。
 

「このままだと過労死する」・「うつ病になって、もう仕事を続けられない」・「パワハラがひどくて、どうしても耐えられない」といったときもあるでしょう。そんなときは迷わず辞めることをおすすめします。なぜなら、20代であれば生きていくための収入を得られる仕事はたくさんあるので、一つの仕事のために自分の命や生活を犠牲にする必要はないからです。
 

しかし、そんなときでも、できる限りリスクは少なくした方が賢明です。では、どうやってリスクを少なくできるのでしょうか?月並みなことしか書けませんが、大切なのは、ルールを知ること。ルールというのは法律です。
 

社内の規定で「退職は3ヶ月前までに申し出ること」などの文言があったとしても、法律上は2週間前の申し出で退職することができます。当然のことですが、社内規定よりも法律の方が効力は強いので、会社が社内規定を適用しようとしても、法律の方が優先されます。これは過去の事例からも明らかです。こういったルール(=法律)を少しだけでも知っておくと、いざというときに役立つはずです。
 

また、明文化されていない風潮を知っておく必要もあります。具体的には、転職活動において在職中と離職後では在職中の方が企業から好まれます。つまり、次の仕事が決まってない状態で辞めるよりも、次の仕事が決まったうえで辞めた方が良いということです。これは、企業側から見ると、在職中でも転職活動ができるはずなのに離職してしまったのは、辞めざるを得ないような理由があったのではないかと勘繰ってしまうからです。そのうえ、在職中であれば、面接の時間も融通を効かせてくれますが、離職中、つまり無職だと会社の都合を優先されることが多くなります。このような暗黙知に関しても、知っておいて損はありません。
 

さらにもう一つ、リスクということで言えば、やはりお金の問題です。
 

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次の仕事が決まるまでの間、食いつなぐことができるのか?これは真剣に考える必要があります。自己都合退職の場合、失業保険が下りるのは退職後3ヶ月目からです。その間は貯金を切り崩して生活する必要があります。ちなみに、都内の一人暮らしの平均予算は約18万円ですが、これは20代前半だと、ほとんど手取りの給料と変わりないでしょう。節約したとしても14,5万にはなるでしょうから、そのくらいの金額を確保する必要はあります。
 

貯金はあっても収入がないことによる不安というのはかなり大きなものです。私は1ヶ月ほど無職だったのですが、貯金はあっても不安は消えませんでした。早期離職者インタビューをさせていただいた方の中には、生活のためにアルバイトを始めたら、アルバイトのほうが忙しくなって転職活動ができなくなってしまったという方も数名いらっしゃいました。お金の問題は真剣に考えておくことをおすすめします。実家に戻ることができる人は実家に戻るのも一つの手ですね。
 

最後に、どうしても辞めないといけないという方が次の仕事を見つける際に知っておいてほしいことがあります。それは、「こんな会社で働きたい」よりも「こんな会社でだけは働きたくない」ということを明確にする方が、仕事の選択の幅は広がるということです。
 

この判断軸は「ブラック企業でだけは働きたくない」という漠然としたものではなく、「21時以降も仕事をさせる会社には絶対に入りたくない」・「飲み会強制参加の会社には入りたくない」・「年功序列の会社には入りたくない」といった具体的なものです。もちろん、面接官が嘘をつく可能性もあります。ただ、嘘をつくような企業のほとんどは「残業はどれくらいですか?」と面接で聞く人間を採用しないでしょう。逆に、それでも採用するのは面接が一回だけで終わりのような企業です。少しでも業務経験がある人の就職活動は、新卒の就職活動とは異なります。大学時代の就活と同じ感覚で臨んでしまうと、失敗するケースもあります。
 

何か行動を起こすときにリスクを最小限に抑えるためには、ルールを知ること、そして最近の流行や潮流、マナーを知ることが大切です。
 

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この記事を書いた人

井上洋市朗

「なんか格好良さそうだし、給料もいいから」という理由でコンサルティング会社へ入社するも、リストラの手伝いをしてお金をもらうことに嫌気が差し2年足らずで退職。自分と同じように3年以内で辞める若者100人へ直接インタビューを行い、その結果を「早期離職白書」にまとめ発表。現在は株式会社カイラボ代表として組織・人事コンサルティングを行う傍ら、「生きづらい、働きづらい環境を変える方法」についての情報発信を行っている。