障害者が旅行に行くために課された3つのハンディキャップ:交通機関編【+handicap TRAVEL】

障害者にとって、旅行に行くというのはなかなかのハードルです。
【交通機関】/【宿泊施設】/【観光名所】
この3ヶ所のバリアフリー化がどれだけ進んでいるかに左右されるからです。
これは高齢者にとっても同様のことが言えると思います。

 

まず【交通機関】です。
障害者の場合、何を使って目的地まで向かうのか、
ここから考え事がスタートします。

 

健常者としての視点で考えれば、車・電車(新幹線)・飛行機
この3つがまず考えられると思います。

 

車の場合、自分で運転するのか、誰かに運転してもらうのかで大きく異なります。

 

自分で運転する際は、基本的にマイカーでの移動となるでしょう。
というのは、障害者は福祉車両に乗っている場合がほとんど。
目が不自由な方を除けば、ほとんどは福祉車両によって運転可能です。
かくいう私もアクセル転移(右アクセル→左アクセル)の車に乗っています。

 

福祉車両1

 

ただ、一点だけ注意してもらいたいのは、
福祉車両は「介護者を乗せるための車両」という切り口で
認識されることがあります。
ここでは障害者が自分で運転するための車両ということで説明しています。

 

自分で運転する際はマイカーで移動できる範囲が旅行範囲となります。
この点は健常者も一緒だと思いますが、
私たち障害者は多くの場合、レンタカーが使えません。
福祉車両のレンタカーがないからです。
マイカーがある=運転頻度が高い=どこでも運転ができるという
論理は成立しやすいので、レンタカーさえあればどこでも行ける方は
比較的多いと思うのですが、障害者ではなかなかあてはまりません。

 

誰かに運転してもらう際は、運転者、あるいは同乗者が
丁寧に介護・サポートしてくれれば大きな問題はありません。
ただ、介護・サポートされる両者間に信頼関係がなければ
なかなか身を委ねにくいことも事実です。
案外軽い気持ちで手伝ってあげるよと言われても応えにくい
心情があることを理解してもらえると嬉しいです。

 

また、先述の福祉車両でいう、介護・サポート用であるかどうかは大事です。
障害者本人がどれだけ体を自由に動かせるか、指示通りに動かせるかによって
介護・サポート側の体力や精神的負荷が左右されます。
スムーズさを欠くとせっかくの旅行が喧々諤々のものになってしまいます。

 

このように、車を使うとなると、
自分で運転するか、誰かに運転してもらうかで大きく状況が変わります。
障害の種類によって、軽重によって、どちらの選択肢をとるか分かれます。
障害者の場合は、ほとんどは誰かに運転してもらうことがほとんどでしょう。
自分の力でなかなか動けない。障害者だから当たり前なのかもしれませんが
当たり前のハードルによって、旅行という娯楽を味わえない人がいることも
また事実なのです。

 

電車や飛行機という手段は
「自分ではない誰かの運転によって」という点に類似しています。
これは健常者も障害者も変わらないと思います。

 

電車を活用する場合、飛行機を活用する場合もそうですが
まずは最寄り駅に行くことから始まります。
(ここではタクシー・バスでの移動は省きます)

 

障害者にとって自分の最寄り駅はある程度慣れています。
利用頻度が高ければ駅員さんも覚えてくれますし、
ホームで顔見知りや馴染みのお客さんができることもあり得ます。
都心では多くの駅でエレベーターが完備され、バリアフリー化も進んでいます。
したがって、最寄り駅の場合、精神的なストレスがあまり発生しません。
問題は初めて行く駅の場合です。

 

健常者の方でも、初めて行く駅で道に迷うことがあると思います。
ただそれは多くの場合、出口はどこか、それも行き先に近道できる出口はどこか、
ということがほとんどではないでしょうか。
障害者の場合はエレベーター・エスカレーター・トイレといった施設や
有人改札(ホームまでの誘導のため)・きっぷ売り場(障害者割引)の位置、
ホームでの電車とホームの距離が短い地点・降りる駅での便利な場所の確認、
あまり混んでいない車両に乗ろうとする・ラッシュ帯を避ける配慮と見極め
といった様々なことを想定します。
単純に来た電車を待てば良い健常者とは大きく異なります。

 

旅の目的地まで何駅も乗り換えを重ねなくてはならない場合、
このストレスを毎駅毎駅重ねていくことになります。
結果、ストレスが元で疲弊しきって旅先へ着き、
体力が低下した状態で旅行に臨むという悪循環になってしまうのです。
これも障害者が旅行に行きにくい理由のひとつです。
飛行機の場合、さらに搭乗までの手続きが増えるので、より敬遠しがちです。

 

電車の幅

 

電車や飛行機の場合、座席の広さや移動スペースの広さも重要です。
足が伸ばせるかどうか、移動がスムーズにできるかどうかは
身体への異変を来たしやすい障害者にとって、死活問題です。
私のように義足を履いていると浮腫みやすいので、どうしても広さが欲しい。
車いすの場合は一定のスペースがなければ移動が難しいですし
精神・知的の障害者の場合は閉鎖的な空間は良い影響を与えません。
健常者が感じるちょっとした息苦しさや不快感は
障害者にとってその何倍も感じているものなのです。

 

せっかくの楽しい旅行も、これだけのハンディキャップを抱えていては
なかなか楽しめないものです。
今回は【交通機関】に焦点を当てましたが、次回以降、
残る二つに迫りたいと思います。

 

記事をシェア

この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。