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『酔いどれ詩人になるまえに』『苦役列車』ー孤独は贈り物ー
今回ご紹介する映画は『酔いどれ詩人になるまえに』と『苦役列車』です。かつて私の中に「孤独」という感覚がない時期がありました。もしかしたら多くの人がそうかもしれません。子供のころの全能感の延長のような、自分の信じる価値観が絶対的に存在しており、それに従って行動することが全てだと自信をもって言えた時期でした。 -
『ラヴ・ストリームス』 ー流れ続ける愛ー
今回ご紹介する映画は『ラヴ・ストリームス』です。この原稿を書いている5月14日は母の日です。私の母は私が大学一年のときに亡くなったため、花束を贈ったり旅行に行ったりなどということもできず、毎年言いようのない寂しさを感じます。『ラヴ・ストリームス』を観ると、情緒不安定で思い込みが激しくなっているサラと当時の母の姿が重なります。 -
『この世界の片隅に』『仁義なき戦い』 ー同じ時代、同じ場所でー
今回ご紹介する映画は『この世界の片隅に』と『仁義なき戦い』です。同じ呉を舞台に、終戦直後までを描く『この世界の片隅に』、終戦直後から話が始まる『仁義なき戦い』。トーンははまるで違えど、どちらも同じ時代の同じ場所でそれぞれの世界の中で生きてゆく人々の話、「戦争もの」「任侠もの」と括ることのできない、「生きる」という普遍的なテーマを感じ取ることができます。 -
『映画 聲の形』ー現代を生きるー
今回ご紹介する映画は『映画 聲の形』です。大今良時さんによる漫画が原作の本作品は、原作者が語る通り、「いじめ」や「聴覚障害」を主題にしたつもりはなく「人と人が互いに気持ちを伝えることの難しさ」を描こうとした作品です。すなわち対人関係の難しさ。また、作品の中ではコミュニケーションの難しさに端を発する自殺に関する描写があります。 -
『ツレがうつになりまして。』ー自分の生き様を誇ることー
今回ご紹介する映画は『ツレがうつになりまして。』です。原作は、著者自身の実体験を描いた細川貂々のベストセラーコミックエッセイ。仕事をバリバリこなすサラリーマンの夫、通称ツレが、ある日突然、心因性うつ病だと診断される。結婚5年目でありながら、ツレの変化にまったく気付かなかった妻・晴子は、妻としての自分を反省する一方、うつ病の原因が会社にあったことからツレに退職を迫る。 -
『AMY エイミー』ー暗闇という故郷ー
今回ご紹介する映画は、2011年7月23日に急逝したエイミー・ワインハウスの生涯を描いたドキュメンタリー映画『AMY エイミー』です。複雑な家庭環境や激しい恋愛関係など、自身の人生体験を糧に独自の音楽をつくりあげ、人生をひたむきに駆け抜けた彼女がなぜ”孤高の歌姫”として波乱の道を歩んでいくことになったのか? -
『裸の島』 ー「でもやるんだよ!」ー
瀬戸内海の孤島に住む夫婦と二人の子供。水のないこの島で畑を耕すため、夫婦は小さな舟に桶を積んで対岸の島とを往復する。苦労して運んだ水も、乾き痩せた大地は一瞬にして飲み込んでしまう。だが夫婦は、春も夏も秋も冬も夜明けから日没まで、舟を漕ぎ畑に水を撒き続けるのだった。ある夏の日、長男が高熱を出して倒れた。夫は医者を求めて舟を漕ぎ出すのだが… -
『死の棘』ー或る生の記録ー
今回ご紹介する映画は小栗康平監督の『死の棘』です。ストーリーは結婚後10年の夫婦であるミホとトシオが主人公。ある日、トシオの浮気が発覚してから、ミホの果てしない尋問がはじまる。古代さながらの島に育ったミホと、作家を志望して自我を追い続けるトシオの間に起きた、それは単なる夫婦のいさかいを超えた人生を問い直す闘いである。 -
『同級生』 ー自由恋愛ー
今回ご紹介する映画は『同級生』。中村明日美子さんの同名ボーイズラブ漫画を映画化したものです。ボーイズラブというと女性ファンが多いという印象がありますが、たまたま私は原作を読んでおり、また男子校という環境に思い入れがあるため劇場に足を運んだのでした。なにしろ私も男子校育ちであり、恋心を抱いた同級生がいたのです。 -
『ジェンダー・マリアージュ』 ー世界が変わる瞬間ー
今回ご紹介する映画は『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』です。2015年6月、Facebookで多くのアイコンがレインボー柄になった日がありましたが、世界が「あの日」を迎えるまで、いったい何が起こってきたのか。それを順を追って知ることができる作品です。