子どもからの「発達障害って何?」の質問にちゃんと答えたい。放課後等デイサービスの現場から。

先日、中学2年生の自閉症スペクトラムのY君(仮名)に「発達障害って何?」といきなり質問をされました。
 

ここ何年かで「発達障害」の言葉自体は有名になったものの、改めて説明をするのはむずかしいです。そもそも、発達障害自体がはっきりととらえにくい上に、本人にどう伝えたらいいのかという問題もあります。質問されても、戸惑ってしまう方が多いのではないでしょうか。
 

ただ「発達障害って何?」という問いは、当事者の場合だと、人生のどこかで向き合っていかなければいけない問題です。
 

一人きりで自分の障害に向き合うのは、心細いし、重たいものです。そんなときに、いろいろな人と自分の悩みについて話をしたり、相手の話を聞いたりできれば、険しい道のりも少しは気が楽になるのではないでしょうか。
 

発達障害って何?
 

私は放課後等デイサービスという障害児向けの学童保育のような場所で働いています。学校終わりに子ども達が通う習い事のようなイメージです。
 

ここに来る子ども達は「自分は障害者だ」と知っている子ばかりではないため、子どもたちの目の前では「障害の話」は絶対的なタブーとなっています。
 

子ども達の中には「自分はちょっとふつうではないらしい」と薄々勘づいている子もいます。ハッキリと知らされなくても、周りに言葉をしゃべれない子がいたり、自分も自分でいきなりパニックになることが多かったりするからです。疑惑を抱えた子は、いきなり周囲の大人に思い切った質問をしたりすることもあります。
 

冒頭の質問は、中学2年生の自閉症スペクトラムのY君と帰り際に二人きりになったときのことでした。
 

「先生―。」
「うん、何?」
「発達障害って何?」
 

自分の心臓から「ドキーン!」という音が聞こえそうなくらい動揺しました。私は頭をフル回転させながらも、平静を装って聞き直しました。
 

「なんでそんなことを聞くの?」
「僕たちみたいな子のことを、発達障害っていうんでしょ?」
 

まっすぐに質問をしてきました。
 

「うーん…発達障害っていうのは、得意なことと、苦手なことの差が激しい人のことだよ。たとえば、算数はものすごくできるけど、国語は苦手とか。勉強に限らず、色々なことで差が大きい人。」
 

「ああ~、それ、まさに僕だ!国語、全然できないもん…。」
 

Y君は、なぜかうれしそうに笑って言いました。
 

「苦手なのは本人の努力不足とかじゃないよ。もともと、苦手ってだけ。」
 

エレベーターの中でしばらく沈黙が訪れました。少し考えて、私は次の言葉を付け足しました。
 

「これはあくまでも私の考えていることだから、他の人の答えはちがうかもしれない。いろいろな人の答えを聞いて、自分のいいなって思える答えに出会えるといいね。」
 

「うん、そうだねー。」
 

Y君はニコニコしながら、言いました。それとほぼ同時に、エレベーターが駐車場のある地下に到着。そこでこの話はいったん中止になり、他の子たちと合流しました。
 

発達障害って何?
 

私はY君が帰ったあとも、しばらく「もっとよい対応の仕方があっただろうか?」と悶々としていました。そのため、他の職員にも「今日、こんなことがあったんですけど、○○さんならどうしますか?」と聞いてみました。
 

1人は「わからない。もしくは大人になったら教えてあげるって言う。」と答えてくれました。
 

もう1人は笑顔でごまかして質問自体に答えてくれませんでした。
 

もう1人は「そもそも、改めて聞かれても発達障害の説明ができないかも。どうしよう?」と首をかしげていました。
 

うすうす予想はしていましたが「質問に答える」派の人はいませんでした。たしかに、説明がむずかしいだけでなく、答えることへのリスクが高いです。自分の答えで相手が傷ついたり、親御さんが隠しているのであれば良い印象を持たれなかったりする可能性もあります。これで大きな問題につながったら、最悪クビになりかねません。
 

私は「発達障害って何?」という質問に対して、発達障害の情報を伝えた上で「これはあくまでも、私の考えだから他の人はちがうかもしれない。他の人の答えも聞けるといいね。」と答えました。
 

賢い選択だったかどうかはわかりません。自分で選んだくせに、思い出すだけで冷や汗をかきます。怖い。
 

そんな中で「どうして、私はわざわざ正直に答えてしまったのだろう?」と考えてみました。すると「子どもが自分自身と向き合おうとしているときに、力になりたいから」という答えが出てきました。
 

自分と向き合うのは怖いことです。特に、自分の嫌な面や苦手なことを認めるのは心理的にも苦しい作業です。今回は障害というテーマが絡んでいるのでタブー感もあります。Y君は周囲の大人の「障害についての話はしない」という暗黙のルールまで感じ取っていると思うのです。
 

その状況で、あえて自分から大人に質問してくれたこと。私はY君の行動を尊重したかった。質問をごまかしたり、スルーをしたりしたくありませんでした。
 

「発達障害って何?」に対する答えは、いろいろな人に出会ったり、価値観を変えるような経験をしたりすることで、きっと自分で見つけていくものだと思います。
 

私はY君が自分の答えを見つけるまでに、なるべくたくさんの意見に出会ってほしいなと願っています。いろいろな意見があると思えれば、一つの意見に固執せずに済みます。たくさんの意見に出会って、最終的には本人が選べばいい話ではないでしょうか。
 

もし、あなたが「発達障害って何?」と身近な人に聞かれたら、何と答えますか?
 

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この記事を書いた人

森本 しおり

1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。
幼い頃から周りになかなか溶け込めず、違和感を持ち続ける。何とか大学までは卒業できたものの、就職後1年でパニック障害を発症し、退職。障害福祉の仕事をしていた27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、少しずつ自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。
自身の経験から「道に迷う人に、選択肢を提示するような記事を書きたい」とライター業務を始める。