自分の人生の主導権を握るための働き方?複業は生きづらいひとに合っている気がする。

11月13日、EDITORY神保町にてイベント「自分の人生の主導権は自分で握る―組織から主導権を取り戻す思考法―」を開催しました。
 

大手広告代理店に勤務しながら、いくつかの企業や非営利団体の活動に関わる倉増京平さんをゲストに迎え、「複数の仕事を持つ=複業」をテーマに「自分が仕事において大切にしていることはなに?」「自分の人生の主導権を握るってどんな状態?」ということを考えました。
 

倉増さんのお話の聞き手を務めたのは、当団体の理事である井上洋市朗。自身も株式会社カイラボを経営しながら、ランニングのコーチ、高校生向けのキャリア相談事業など、複数のわらじを履いています。
 

今回のイベントでは「なぜ複数の仕事を並行して行っているのか」という経緯について、「どうすれば、複数の仕事を得られるのか」といった方法論、そして「実践していく上で、大切にしている考え方」などについてお話しいただきました。
 

ただ、それらすべてをレポートに書いてしまうと、来てくださった方に申し訳ないので、私が印象に残った、働き方の違う2人が伝えてくれた、それぞれの「似ている点」と「違う点」についてまとめました。イベントレポート、遅くなってごめんなさい!
 

イベントの様子

 

二人とも複数の仕事を持っていることは共通していても、その働き方は異なります。
 

倉増さんは会社員。本業で得たマーケティングの知識を活かし、起業家支援を行ったり、非営利団体の事業支援を行ったり。プロボノ的な働き方を実践しています。
 

一方で、聞き手の井上は会社の経営者。本業である人事コンサルティング業務を活かしつつ、プラス・ハンディキャップの理事、高校生向けのキャリア相談に乗るなど、フリーランスに似た働き方をしています。
 

倉増さん。

 

僕が井上さんと似ていると感じるのは「他人に巻き込まれる」というところです。よく「やりたいことをやれ」とか言われますが、僕自身には熱量を持って「これをやりたい!」と言える芯みたいなものはないんです。でも、それは同時に強みになると思っていて、周りにやりたいことがある人は多いので、そういった人と調和したりできるんです。僕の役目は、他の人たちが困っているところに貢献することかな、と思っています。(倉増さん)

 

「やりたいことをやる」は、自分の欲求をベースに仕事を決めていくものですし、なんかカッコいい気がします。しかし、やりたいことがない、見つからないといった場合には、苦しくなってしまうこともあります。
 

「組織でどのような役割を担うか」や「どの部分で貢献できるか」という視点から考えてみると、少し違うものが見えてきて、自分にできることってなんだろうと分析するきっかけになります。
 

「自分のやりたいこと」をやるだけが仕事じゃない。「他人のやりたいこと」に関わっていくうちに、仕事の形ができてくることもあるのだと感じました。職場や業種を超えて、さまざまな方のサポートをすることが、結果として複業につながるのだと感じました。
 

当団体理事の井上。

 

企業に会社員として在籍しながら、複数の仕事をできるのは純粋にうらやましいです。日本の労働って、基本的に会社員を保護されているので、フリーランスのような立場だと保護の対象外なんです。会社員の方が守られているし、有利なことはあります。僕の場合は、会社の命令と合わない部分があって独立せざるをえなかっただけです。本当は、倉増さんのスタイルが理想的だと思います。(井上)

 

倉増さんとの働き方の違いについて語った、当団体理事の井上。
 

私は今まで「会社員」という言葉に対して「やりたくないことまでやらされる」や「不自由そう」などといった、どちらかというとネガティブなイメージを持っていました。
 

その反面、「フリーランス」には「おもしろそう」や「やりがいがありそう」などといったポジティブなイメージがあったのですが、それは私が会社員の視点から、それも少し斜に構えたところからしか見ていなかったからだと気づかされました。
 

自分が享受しているメリットには慣れてしまいますが、デメリットは気になり続けます。違う立場の人から見える景色は、まったく別の一面が広がっているとあらためて実感しました。
 

イベントのタイトルは「自分の人生の主導権は自分で握る」であり、それはプラス・ハンディキャップのミッションでもあります。
 

プラス・ハンディキャップが考えていること(プラス・ハンディキャップとは

 

「複数の仕事をもつ」二人の話は、自分に合った働き方や仕事を考えていった結果、複業というスタイルに達しただけで、それが目的ではないのだと実感しました。これは、生きづらさや働きづらさを抱えているひとにとって、ひとつのヒントになるのではないかと感じます。
 

自分が働く職場に何かしらの不満があり、その職場に在籍し続けることがストレスやプレッシャーでしかないのであれば、転職を考えたほうがいいはずです。
 

ただ、自分に自信や覚悟がなければ、なかなか転職の決断を下せないこともあるでしょう。転職すればいいじゃんと簡単に言われても、それがなかなかできないから苦しい。「言うは易く行うは難し」です。
 

「複数の仕事をもつ」は、一種の保険に近いのかもしれません。こっちがダメなら、向こうがあるさ、というような。
 

まだまだ日本に浸透していない働き方なので、複業は難しいんじゃないかという懸念もありますが、実践者が増えていけば、その難易度も下がり、どうすれば複業できるのかというヒントもたくさん見つかるでしょう。まずは、そんな働き方があるんだと知るだけでも十分ではないでしょうか。
 

プラス・ハンディキャップは、私も含めてだいたい何かしらの生きづらさを抱えている/いたメンバーで構成されていますが、冷静に考えると、全員が複業スタイル。私も掛け持ちです。そして、そのスタイルのほうが働きやすい気もします。
 

複業は今の仕事だけだと物足りないという点から進めることもあるはずですが、生きづらさ・働きづらさというテーマから考えれば、自分を守るための手段。「何かにぶつかったら、正面突破だけが方法じゃない、複数の道を探して、確保することが大切じゃないか」と前向きな気持ちになれたイベントでした。
 

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この記事を書いた人

Plus-handicap 編集局