マイルールハラスメント。

世の中は、さまざまな人のマイルールであふれています。
 
同時にマイルールを他者にも押し付けるマイルールハラスメントもあふれています。あんたのルールはあんたの勝手だけど、人に押し付けないでくれよ。あぁ、生きづらい。
 


 

パフォーマンスを高めるためのマイルールもある

 

スポーツの世界ではルーティーンが有名になりました。少し前だと、ラグビーの五郎丸選手がやっていたあれです。イチロー選手の打席に入るときの動作や、陸上のウサイン・ボルト選手がスタート前に水を一口飲んで十字を切るのも一種のルーティーンだと思います。
 

自分のパフォーマンスを高めるためにおこなう一連の動作もマイルールのひとつ。こういったマイルールはパフォーマンスを発揮させるためには重要なことだと思います。
 

マイルールは悪くないが押し付けるのは辞めてくれ

 

自分自身にマイルールを課すだけならいいのですが、世の中には自分のマイルールを他人にも押し付けてくる人がいます。迷惑な話です。
 

例えば、重要な連絡はメールではなくて電話で(その逆もある)、定時の何分前までには出勤する、アポの前日には確認のメールを入れる、すべてのタスクを手帳に記入して完了したら線で消すなどなど。
 

個人の仕事の進め方としては「やってみようかな」と思うものもあるかもしれませんが、強要される筋合いはないのです。自分にとってやりやすい方法が他の人にとってもやりやすいとは限らないのです。
 

成功体験を押し付けられることほど面倒なことはない

 

マイルールハラスメントをおかす人たちのタチが悪いのは、ハラスメントしていることに無自覚なことです。下手すれば良かれと思ってやっていることすらあります。「俺はこうやって成功した」だとか「私はこうして救われた」だとか。
 

お前の成功談がこっちにも通用すると思うなよ!あぁ、本当に生きづらい。
 

マイルールはあくまでマイルールです。自分で自分に課すから効果的なのです。他人から課されたルールは課された側からすると足かせになってしまうことだってあるのです。人によって得意不得意は違うし、価値観も違います。場合によっては成功の定義が違うことだってあります。
 

マイルールハラスメントする側は「成功のための方法」と思って話しているのに、される側は「そもそもお前、成功してないじゃん」と思うことだってあるのです。
 

マイルールを理解しあうことがダイバーシティの第一歩。でも面倒くさい

 

多様性やダイバーシティという言葉が様々な場所で聞かれる時代になりました。私たちプラス・ハンディキャップの周りにはダイバーシティを実現したいといいながら、自分たちのマイルールを押し付けてくる人たちもいます。それもまた、めんどくさいです。
 

私が考える本当のダイバーシティは、お互いがお互いのマイルールを認識したうえで、円滑に進められる落としどころを見つけ出すことです。
 

例えば、重要な連絡は電話でするという人と、電話は迷惑だから連絡はメールでしろという人が一緒に仕事をするときに、お互いが「この人はこういう考え方の人」と認識することころがスタートです。そのうえで、連絡手段はどうすべきなのか、お互いが納得できる落としどころを見つけます。
 

想像していただければわかると思いますが、ダイバーシティの実現はものすごく面倒くさいのです。決して「みんながお互いを配慮すればダイバーシティが実現!」みたいなお花畑の世界ではないのです。
 


 

マイルールは個人の考え方や価値観の違いだけで起こるわけではない

 

ここまで書いたマイルールは仕事の進め方などが中心のため、個人の考え方に依るものととらえがちですが、障害特性などが理由となってマイルールが形成されていることもあります。障害特性によってマルチタスクが苦手だからマルチタスクは行わない、吃音があって音声でのコミュニケーションに苦手意識があるので電話はしない、などです。
 

お互いのマイルールハラスメントチェックが必要

 

マイルールハラスメントがパワハラやセクハラと違うのは、立場の違いや性別の違いがなくても、普段はうまくいっている関係性でも、ちょっとしたきっかけでハラスメントをしてしまう可能性があることでしょう。
 

この記事を書いている私自身も、きっと誰かにマイルールハラスメントをやっています。
 

大切なのは一人ひとりがマイルールハラスメントをしていないか気にかけること、そしてマイルールハラスメントされていると感じたのなら声を上げることです。「あなたにはマイルールがあるのかもしれないけど、私にも違うマイルールがあるから押し付けないでくれ」と伝えましょう。そのうえで「一緒に落としどころを考えましょう」と伝えてください。
 

それでうまくいかなくなる程度の人間関係ならそんなものはさっさと切ってしまえばいいのです。もし、どうしても切り離せない関係なのであれば、せめて自分のマイルールを大切にしたいことだけでも伝えましょう。
 

マイルールハラスメントをやっている人は言われなければ気付けないのです。私もそうですから。
 

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この記事を書いた人

井上洋市朗

「なんか格好良さそうだし、給料もいいから」という理由でコンサルティング会社へ入社するも、リストラの手伝いをしてお金をもらうことに嫌気が差し2年足らずで退職。自分と同じように3年以内で辞める若者100人へ直接インタビューを行い、その結果を「早期離職白書」にまとめ発表。現在は株式会社カイラボ代表として組織・人事コンサルティングを行う傍ら、「生きづらい、働きづらい環境を変える方法」についての情報発信を行っている。