人間関係を見える化して、見直す。私が「相談相手マップ」づくりをすすめたい理由

「自立とは、依存先を増やすこと」という言葉を聞いたことをあるひとがいるかもしれません。私は最初にこの言葉を聞いたとき、あまり想像がつきませんでした。ひとつに依存していたものを、分散させるようなイメージ?そう思っていました。
 

しかし、現在は「自立とは、精神的な支えを増やすこと」という意味だと捉えています。「何が精神的な支えになるのか」はそれぞれ違うかもしれませんが、その中でも「自分の周囲にいる相談相手」の存在は大きいです。「相談相手」が多いひとは、精神的な安定を保つことができる可能性が高いのではないでしょうか。
 

今回は、その「相談相手」を見直す上で大切な「エコマップ」というツールについて、ご紹介したいと思います。
 


 

みなさんは「エコマップ」をご存知でしょうか?
 

本人を中心とした周囲のひととの関係性を図にしたものです。周囲のひとは、活用することができる社会資源とみなされています。家族や友人だけでなく、主治医や福祉サービス事業者などが含まれます。
 

エコマップ自体は、医療や福祉、介護や教育などの分野で、相談員やソーシャルワーカーといった専門家が使うツールです。本格的なエコマップをつくるためには、いくつかのルールがあるのでとっつきにくいかもしれません。ただ、個人的にはエコマップを簡略化したもの、自分が「◯◯に関する悩みは、どこの誰に相談している」という事実を整理する「相談相手マップ」はもっていたほうがいいと考えています。
 

気づいていないだけで心の中に「相談相手マップ」をもっている

 

仕事でモヤモヤすることがあって「ちょっと誰かに愚痴を言いたい。同僚のAさんとBさん、どちらに話そうかな」という場合や分からないことがあって「誰かに相談したい。先輩のFさんとGさん、どちらに聞こうかな」という場合など、私たちは、意識的、あるいは無意識的に相談内容と相手を選んでいます。しかし、その判断基準を振り返る機会はなかなかありません。
 

「相談相手マップ」づくりとは「誰に何を相談するのか」を紙の上に書き出す作業のことです。相談相手の棚卸しとも呼べるでしょう。人間関係の見える化をして、客観的に見直すことが目的です。
 

実際に紙の上に書き出してみると、自分の選択基準や偏りが明らかになります。特定の相談相手にばかり頼りすぎているな、自分の健康についてアドバイスをもらいたいのに相談できる相手がいないな、などといったことに気づくことができます。
 

また「相談相手マップ」は、一度作ったらOKというものではなく、ずっと固定するものでもありません。仕事でいえば、役職や立場が変わったり、転職や独立をすれば、悩みが変わります。引っ越しをすれば、相談相手と同じような頻度で会うことは難しいでしょう。マップに書かれている相談相手が増えることもあれば、減ることもあります。現在の状況を見極めた上で、足りない部分を補ったり、バランスを調整したりと変化していくものです。
 

私たちの毎日は、人間関係に関しても選択の連続です。しかし、自分の人間関係を客観的に見直す機会はほとんどありません。
 


 

相談相手マップを作るのは、自分の人間関係を見直すため

  

「相談相手マップ」は自分の人間関係の見える化をして、見直すためのツールです。
 

誰に、どのような相談テーマで頼っているのか。それは、客観的に見てバランスがとれているのか。その相談相手は、代わりが利くのか、あるいはその相手にしか頼ることできないのか。意識的に振り返る機会を作らないと、気付かないことはたくさんあるような気がします。
 

みなさんも一度、自分は「何の悩みを、いつ、どこで、誰に、どうやって相談しているのか?」を棚卸しする機会、相談相手マップづくりをしてみてはいかがでしょうか?
 

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この記事を書いた人

森本 しおり

1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。
幼い頃から周りになかなか溶け込めず、違和感を持ち続ける。何とか大学までは卒業できたものの、就職後1年でパニック障害を発症し、退職。障害福祉の仕事をしていた27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、少しずつ自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。
自身の経験から「道に迷う人に、選択肢を提示するような記事を書きたい」とライター業務を始める。