この連載は「ワカラナイケドビョウキ」という不思議な病気になり障害をもった私が、ノーマライゼーション発祥の国デンマークに留学する1年間の放浪記です。デンマークでゴロンゴロンでんぐり返しをしながら「障害ってなんだろう」と考えます。
「どうしたらイスラエルとパレスチナの争いはなくなるかな?」
デンマークからイスラエルへの修学旅行に備え、私たちは毎週3時間中東の歴史を勉強していました。
紀元前からの人類史を学び、宗教の広まりを勉強したり、モンティパイソンの『Life of Brian』 という聖書をテーマにしたコメディ映画を観たり。『The Gate Keeper』というドキュメンタリー映画からイスラエルの諜報機関についてディスカッションもしました。
そんな中、授業の終盤で先生から、こんな課題が出ました。
「どうしたらイスラエルとパレスチナの戦争は解決できると思う?みんなで話し合ってみて」
おぉ!あ、でも…う~ん…ぬぁ~…。
シンプルな質問だけど、難し過ぎます。だって、言葉にできるほど簡単な問題ではないし、イスラエルとパレスチナの問題は、2国間だけの問題ではない。何千年という宗教の歴史と、他国(大国)が介入してしまったことにより複雑化された対立。対立が始まった原因をしらみ潰しにしていくことは不可能です。
そんなことを頭の中でう〜ん、う〜んと考えていて、言葉を脳内だけにしまい込んでいたら、こんな声が聞こえてきました。
「混ぜちゃえばいい。幼稚園から混ぜちゃえばいい」
「考え方を変えるためには、まずは育て方を変えなければいけない」
それはイスラエルの人とパレスチナの人の子供たちが一緒に過ごす幼稚園を作るということ。私はハッと顔をあげ、声のする方向をみました。
車椅子に乗ったビビカでした。彼女の頭の中の年齢は実年齢よりちょっと低いけれど、ニコニコしたり怒ったりしたり豊かな表情でいつも皆を笑いの渦に巻き込みます。
そんな彼女が言った言葉。
「混ぜちゃえばいい」
車椅子に取り付けられたタブレットが発する彼女の言葉は私をドキッとさせました。
ここでも障害者と健常者が一緒に生活している。自分はここで皆と分かり合えているという実感がある。だから、混ぜちゃえばいい。
イスラエルとパレスチナについて。そして、障害者と健常者について。
分かり合えないものは、混ぜちゃえばいい。ちょっと勢いのありすぎる意見かもしれないけど、なんだか真実のような気がしました。
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ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業第36期研修生として留学中です。ミスタードーナツに行くとレジの横に置いてある募金箱。全国の皆様の応援で学ばせて頂いております。