オリンピック選手がパラリンピックに挑戦する時代が必ず来ると思う

リオデジャネイロオリンピックに続き、パラリンピックでも日本のメダルラッシュで幕を閉じました。オリンピックがTVや新聞で大きく取り上げられるのは昔からですが、パラリンピックがこれだけ大きく取り上げられるようになったのは今回が初めてではないかと思います。
 

パラリンピックというと「障害者のためのスポーツ祭典」というイメージを持っている方がほとんどだと思います。私自身もそうでした。でも、今回のリオパラリンピックをTVで見てみると、純粋にスポーツとして”観て面白い”と感じるものばかりでした。
 

[youtube id=”44qj726g6C0″]

例えば、視覚障害の選手が出場する柔道は、お互いの襟と袖を持った状態からスタートします。そのため、オリンピックの柔道で見られる、いわゆる「組み手争い」の時間が短く、必然的に技をかけにいく時間が多くなります。これが面白い。
 

日本人の多くが好むであろう「一本を取る柔道」の姿があるのです。残り時間1分で有効ポイント1つリードで逃げ回るということは難しいため、最後まで「一本での大逆転」を期待しながら見ていました。同時に、柔道で世界最強といわれるリネールがこのルールで戦ったらどうなるんだろう?と思いました。
 

車椅子ラグビーは、片手でボールを扱う姿とスピード感が水球に似た面白さを感じました。加えて、障害の程度によって選手にポイント振られ、コート上にいるメンバーの合計ポイントを一定以下にしなくてはいけないというルール上、高い戦略性も求められます。得点もどんどん入るので見ていて面白いですし、僅差で進むゲームが多いため最後の最後まで見ている方も気が抜けません。なかなか点数が入らないうえに露骨な時間稼ぎをすることもあるオリンピック種目より、よっぽど面白かったです。
 

[youtube id=”ZfcU8vgwI50″]

だから、私は一人のスポーツファンとして提案したいのです。
 

「パラリンピックは障害者のためのものではなく、障害があるひともないひともプレーが可能なルール設定によるスポーツの祭典にすればいい。」と。
 

出場する選手が障害者か否かというだけで、オリンピックとパラリンピックで基本的なルールが同じスポーツは陸上競技や水泳などが挙げられます。ただ、ルールが同じであるが故の話題もあり、多くのメディアで取り上げられましたが、義足の選手の方がオリンピック選手よりも速く走れるのではないか、遠くまで飛べるのではないかといった点は解決の必要がある課題でしょう。
 

パラリンピックドイツ代表のレーム選手は8m40cmの世界記録を持っています。この記録はロンドン、リオの両オリンピックの金メダルの記録をも上回ります。今回のリオパラリンピックでも8m21cmのパラリンピック新記録で優勝。この記録はリオオリンピックの走り幅跳びでも5位相当、銅メダルまであと8cmという記録です。4年前のロンドンオリンピックでは南アフリカのピストリウス選手が両脚義足で400mの準決勝まで進出したこともあります。
 

[youtube id=”kv4wqLCihdA”]

レーム選手もオリンピックへの出場を希望していましたが「義足が不公平かどうかの検証が必要」という国際陸連との協議の中でオリンピック出場を断念した経緯があります。数年後には義足の技術の進歩により、多くの種目で義足の選手の記録が健常者の記録を上回るのではないかという人もいます。
 

「義足の選手がオリンピックに出場することは選手に公平なのか?」という問題はこれからもっと議論されていくでしょう。どんな方向で決着するのかわかりませんが、私は、将来的な理想像は「健常者がパラリンピックに挑戦する」ようになることだと思っています。その頃には、もしかすると「健常者」という言葉もなくなっているかもしれません。
 

陸上の100mで義足の選手とウサイン・ボルト選手が真剣勝負でパラリンピックを走る。また、現状ではオリンピックとパラリンピックの記録の差が大きい水泳では、フィンなどの補助器具を付けて競う。車椅子競技であれば、健常者も同様に車椅子に乗って競技を行う。車椅子バスケやラグビーなど、障害の程度によって選手に点数が付く場合には障害を持たない人の点数を設定すれば良いのです。
 

paralympic_runner
 

メディアも企業もこれだけ「ダイバーシティ」や「ユニバーサルデザイン」と言っているにも関わらず「障害者がオリンピックに挑戦するのは是か非か」という議論をしているのは「健常者は障害者より優れている」とか「優れていなければならない」という考えが根底にあるのだと思います。
 

スポーツのを観る楽しみと、やる楽しみの両方を追求するのであれば、パラリンピックスポーツという、障害特性を考慮したルールのスポーツをみんなでやればいいはずです。
 

2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに実現は難しいですが、「障害の有無に関わらずパラリンピックに挑戦する」時代はいずれ必ず到来すると思います。
 

[youtube id=”StcaG93bB_8″]

※最後の動画にあるパラリンピック競技のひとつ、シッティングバレー(Plus-handicap編集長が東京パラリンピック出場を目指している競技)は、国内大会の一部では健常者のみのチームでも参加できるようです。
 

記事をシェア

この記事を書いた人

井上洋市朗

「なんか格好良さそうだし、給料もいいから」という理由でコンサルティング会社へ入社するも、リストラの手伝いをしてお金をもらうことに嫌気が差し2年足らずで退職。自分と同じように3年以内で辞める若者100人へ直接インタビューを行い、その結果を「早期離職白書」にまとめ発表。現在は株式会社カイラボ代表として組織・人事コンサルティングを行う傍ら、「生きづらい、働きづらい環境を変える方法」についての情報発信を行っている。