脳脊髄液減少症と”ほどほどに”付き合うための webサイトfeeseがサービス開始

Plus-handicapで当事者ライターとして「脳脊髄液減少(漏出)症」について発信してきた重光喬之さんが、このほど「脳脊髄液減少症と”ほどほどに”付き合うための」webサイト「feese(フィーズ)」を立ち上げました。
 

24時間365日続く痛みや倦怠感などにおそわれる、治療法は研究段階、外見からは分かりづらく周囲の理解が得にくい、症状によっては就労が難しい…など、生きていくうえでさまざまな困難を抱えながらも前を向いて生きるには何が必要か。feeseには、重光さんの当事者としての体験が生かされています。
 

5月に渋谷ヒカリエで開催されたプレゼンイベント 「sprout#12」でfeeseのプレゼンをする重光さん。IBM特別賞を受賞。
5月に渋谷ヒカリエで開催されたプレゼンイベント
「sprout#12」でfeeseのプレゼンをする重光さん。IBM特別賞を受賞。

 

「feese」は、「feel」と「ease」を組み合わせた造語で「(同じ病気に向き合う他者の存在を)感じる、あなたは一人ではない」「症状や気持ちが楽になるように」といった意味が込められています。昨夏、重光さんが初めて参加した家族会で同年代の同病者と出会ったこと、その人と病気の辛さを分かち合い、発症後10年間で初めて気が楽になれたこと、症状に苦しむ息子を見かねて母親が無理心中を図ったエピソードを聞いたこと、音信不通になってしまった同病者がいたことなどが、サイト開設のきっかけになりました。
 

参考記事:「出会いと別れと痛みがもたらした変化【脳脊髄液減少症】」
https://plus-handicap.com/2015/12/6922/
 
 

「feese」では、症状緩和の工夫と生活の知恵などの事例や、当事者がどのように病気と向き合い、付き合ってきたかのエピソードを集め、それらをデータベース化します。データベースにアクセスすることで、自分と似た状況・病状の人の情報を参考にできるサービスを目指しています。数千人の情報蓄積を目標に、現在はプレサイトとして当事者からの情報や事例を募集しており、今年中にはサービスの本格運用を始める予定です。
 

feeseのトップ画面。スマホにも対応。
feeseのトップ画面。スマホにも対応。

 

feeseの大きな目的は下記のような3つです。
 

①当事者の体験の共有で生きやすく
②早期発見・早期治療で慢性化患者を増やさない
③慢性化患者の社会復帰の後押し
 

当事者の工夫やエピソードだけでなく、ゆくゆくは企業とタイアップして、在宅勤務や人材派遣などといった多様な働き方の提案を行うことで当事者の社会復帰を後押しします。そのために、闘病中の患者だけでなく、病気と付き合いながら社会復帰をした人からの情報提供も広く呼びかけています。
 

「社会復帰できた人は、当時の辛い記憶を思い出したくなかったり、今も闘病している当事者への後ろめたさなどから、あまり話をしたがらないと思います。ですが、それは発症や社会復帰のタイミングが違うだけともいえます。生きていくうえで社会復帰を願う患者は多い。ぜひ体験談を寄せてほしいです。(重光さん)」

 

情報提供はサイトのコンタクトフォームから
情報提供はサイトのコンタクトフォームから

 

feese開設にあたっては、クラウドファンディングサイト「READYFOR」で支援者を募集。70名近い支援者が集まり、当事者からの支援もあったとのこと。多くの人の期待を受けてサイト開設に至りました。開設から約半月ですでに30都道府県以上の人からアクセスがあり、数十人の当事者から情報が寄せられています。
 

「同病者の存在は理解し合える心の支えになり得ますが、どんな病気でも当事者同士だと『どちらの症状が大変か』といった話になりがちです。そうはならないけど、人とのつながりを感じながら前を向いて生きてほしい。そう考えfeeseを立ち上げました。諦めたくなる気持ちも分かりますが、ときには声を出したり外に出てみたりしてほしい。そのためにfeeseが一役買えたら嬉しいです。おせっかいだけど、病気だからと諦め切らないでほしいんです。(重光さん)」

 

病気と向き合いながら生きている当事者、当事者の家族、これから脳脊髄液減少症になるかもしれない人たちのために、feeseは産声をあげました。あなたの声が、誰かの助けになります。ぜひfeeseに声をお寄せ下さい。
 

「feese」https://feese.jp/
Facebookページ https://www.facebook.com/feese.jp/
 

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この記事を書いた人

木村奈緒

1988年生まれ。上智大学文学部新聞学科でジャーナリズムを専攻。大卒後メーカー勤務等を経て、現在は美学校やプラスハンディキャップで運営を手伝う傍ら、フリーランスとして文章執筆やイベント企画などを行う。美術家やノンフィクション作家に焦点をあてたイベント「〜ナイト」や、2005年に発生したJR福知山線脱線事故に関する展覧会「わたしたちのJR福知山線脱線事故ー事故から10年」展などを企画。行き当たりばったりで生きています。