親の言葉ひとつでわが子の未来の生きづらさにつながる。ちょっと気をつけたい言葉集。

こんにちは。柳田です。「若者世代にリプロヘルスサービスを届ける会Link-R」という組織で、中・高・大学生世代のお悩み解決に取り組んでいます。
 

10歳を過ぎると第二次性徴が始まって(ここから思春期のスタート)、身体や心が大人になる準備を始めます。そうした身体や心の変化のことで悩んだり、恋愛のことや性的なことに興味が出て悩んだり。そんな子たちをサポートしています。
 

明日着る服を自分で選ぶように、自分の人生も自分で判断して選び取ってほしい。その判断材料になる(科学的根拠のある)知識を伝えて、自分で選択することを後押ししたいと思っています。だから、支配でも指導でもなく支援をすることをいつも心掛けています。
 

中高生や大学生からはやなぎーと呼ばれています。
中高生や大学生からはやなぎーと呼ばれています。

 

子どもたちは言葉にものすごくデリケートな存在です。悪気なく言った一言にがっつり傷ついてしまったり、小さなころから言われていた言葉が呪いのようにその子の人生に影響したり。子どもたちへの言葉は奥が深いものです。
 

「アンタなんか生むんじゃなかった」という母親からの言葉が胸の奥に残り、「私って必要?私のどこがいいの?」とずっと言い続けてきた女性と付き合っていたことがあるというのは、Plus-handicap編集長の佐々木さんの遍歴ですが、パートナーへの度を超えた依存が強い方は、過去に家族からの何気ない言葉に原因があるケースもあります。
 

子どもに対しては、なるべくポジティブな表現の言葉を使うほうがいいのではないか?と私は提唱しています。わが子の将来の生きやすさ/生きづらさにつながるならば、ちょっとした言葉がけの意識は重要ではないでしょうか。
 

20160512②

 

以下に、思春期を迎える前(=幼少期)の子どもや思春期を迎えた子どもへの要注意な言葉がけを紹介してみたいと思います。紹介する言葉を使っていなかったとしても、なぜその言葉を使わないほうがいいのかという背景にはハッとすることもあるかもしれません。
 

●「静かにしてくれるからあなたが好き」(幼少期に気をつけたい言葉1)
 

子どもは本来家族のことが大好きです。家族に愛されている実感がほしいし、それを安定して感じられると安心して育つことができます。同時に、子どもは好奇心の塊でもあって、家の外にいると騒いだり動いたりして、よその人に迷惑をかけることもあります。
 

そんなとき「静かにしてくれるあなたが好きだな」というような言い方をしていると、「静かにしない自分のことは嫌いなのか…」という学習をします。条件付きの愛情を覚えるのです。すると子どもは嫌われないように大人の顔色を見ることを覚えます。
 

これが長引いてしまうと、大人になっても他人の顔色を見るように育つこともあります。騒ぐか静かにしているかということと、その子のことを好きか嫌いかということには本来何の関係もないはずです。「無条件に好き。好きだからこそ人から好かれる人に育ってほしい。だから人前でやってほしいことを伝えるね」そんな気持ちで向き合ったら言葉がけも変わってくることと思います。
 

●「どうしてできないの?」(幼少期に気をつけたい言葉2)
 

これはできないことを責める言葉です。「できない」の線引きは、お遊戯会でひとりだけリズムがずれて踊っているなどの明らかな場合もあれば、テストで95点取っても100点を取れなかったからダメだと指摘するような厳しい主観が入る場合もあります。
 

どうしてできないの?とダメ出しして終わるのではなく、「どうしたらできると思う?」とできる方法を考える気持ちになる一言をかけてあげるのはどうでしょうか?
 

●「もう大人なんだから」「まだ子どもなんだから」(思春期に気をつけたい言葉1)
 

ある場面では大人扱いをして別の場面では子ども扱いするのは、子どもにとっては困惑のもとです。中学生や高校生くらいだと、場面によって大人扱いと子ども扱いが混じるのはありえることです。そのときは、言葉の裏にある意図を説明してあげてほしいと思います。扱いが変わる理由やその場面が分かれば、子どもの中で矛盾が解消されます。この言葉に限らず矛盾を解消すること、言った通りのことをすることです。子どもはよく見ています。
 

●「世の中にはもっとつらい人、大変な人もいる」(思春期に気をつけたい言葉2)
 

人間誰しもつらい気持ちを吐きたくなるときはあります。言葉にして吐き出して気持ちを整理して先に進むことは有益なことです。子どもがつらい気持ちを訴えてくれるのは「この人は分かってくれる」と思うから。そのときはその言葉と気持ちを受け止めてあげてほしいと思います。
 

もっとつらい人がいるのは事実だとは思いますが、その人のつらさと本人のつらさには何の関係もありません。他人との比較ではなくその子自身を見てあげてほしいと思います。
 

●「子どもが思春期になってわが子の気持ちが急に分からなくなった」
 

最後はわが子への言葉がけではなく、考え方(気の持ち方)に関することです。この言葉の裏には、わが子を支配する力が無意識に隠れているかもしれません。
 

その子が赤ちゃんだった時、なぜ泣いていたのか常に分かりましたか?子どもの気持ちなんて最初から分からなかったんです。分かるような気になっていただけ。小学校高学年ごろから緩やかに親離れが始まり、少しずつ精神的に自立していくのが思春期の健康的な発達の過程。分からないことを不安に思わず、分からないのが普通で、分かるように努めようと心を離さないことを心掛ければいいと思います。
 

クリスマス会でのラジオトーク
クリスマス会でのラジオトーク

 

ほんの少し言葉に意識を向けて、ほんの少し表現を変えるだけで、相手が受ける印象もその後の影響も変わります。「じゃあ、この表現が良い表現なのか良くない表現かどう見分けたらいいの?」というご質問もあると思いますが、それにはとても簡単な方法があります。
 

自分と相手を入れ替えて考えてみてください。「中学生なのにこんなこともできないの?」とわが子に言いたくなる瞬間もあると思います。では「お母さん/お父さんなのにこんなこともできないの?」とわが子に言われたらみなさんはどう感じるでしょうか?
 

人間誰しも、自分がされたら嫌なはずのことを他人には平然としている瞬間があるものですが、子どもにどんな言葉をかけるかは、子どもの心の経験値に影響します。心の経験値にマイナスの経験が多く刻まれると、子ども本人も周りも不幸になります。怒ることと叱ること、恐いことと厳しいことを区別して考えて、子どもの未来のために心を添えてあげてほしいと思います。
 

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この記事を書いた人

柳田 正芳

1983年神奈川県生まれ。大学時代に「大学生が大学生に性の知識を届けるインカレ団体」の事務局長。卒業後、一般企業での就業を経て紆余曲折ののち、大学時代の経験をもとに「若者の性のお悩み解決をする団体」を起こす。活動を進める中で「日本の男性の生きづらさ」に気づき「男だって生きづらい」を解決する活動も立ち上げたり、産婦人科の病院や自治体で「夫婦のコミュニケーション」をテーマにしたワークショップの講師業などもおこなっている。