「当事者語り」から考えてほしいことー今年もヒューマンライブラリーの本となってみてー

以前にも記事で触れたことがありますが、明日12月1日は「世界エイズデー」です。
 

今年もイベントラッシュで、昨年佐々木編集長にレポートしていただいた、明治大学のヒューマンライブラリーに今年も本として参加したり、日本エイズ学会のプレイベントとして僕自身が通っている病院の研修センターを会場にしたイベントに参加したりしました。また、日本エイズ学会は今年は東京での開催なので、各地のエイズNGOのかたや、陽性者としての知り合いと会うことも多く、忙しい中にも久しぶりな顔を見てテンション高くなったりすることがあります。
 

今年は編集長がイベントに駆けつけていないため、 この写真は昨年度のヒューマンライブラリーのものです。
今年は編集長がイベントに駆けつけていないため、
この写真は昨年度のヒューマンライブラリーのものです。

 

実は今年も、明治大学のヒューマンライブラリー(http://ictedu.org/y-seminar/)で「本」となりました。ヒューマンライブラリーは、社会において偏見を受けやすいひとを「本」に見立て、1対1で話を聞くことができるイベントです。
 

今年は、僕自身の写真やインタビュー動画を会場の廊下で公開していました。会場といってもイベント以外の利用者がいない(イベント関連でほぼ全部の教室が使われた状態になっている)フロアで、イベントに無関係な人はせいぜい巡回警備の方くらいしか目にしない場所だったのですが、プロのカメラマンの方が入ってしっかりした写真をとっていただきまして、貴重な体験になりました。
 

その結果かどうかはわかりませんが、難解そうな本のタイトルとあらすじ(来場者が本を選ぶのに参考にするものです)をつけた割には早々と予約していただきました。ありがたいことです。
 

ちなみにタイトルとあらすじはこんな感じです。
 

【タイトル】
HIV陽性者の本「ライフデザインと科学的リスク評価」
 

【あらすじ】
あなたが何らかの感染症を持っていて、しかしながら検査の結果からみて人に伝染するリスクがほとんど無いと科学的に立証されているとしましょう。ですが、あなたの周囲の人が、データをきちんと見ることなく、直感やセンセーショナルな報道を根拠にあなたを危険と見なす人ばかりだったら、どうしますか?「一般的にはわかりにくい何か」を抱えた人のライフデザインを、科学的なコミュニケーションの視点から考えます。
 

・・・HIV陽性者の本、と前置きされないと何の本だかわからないですね、これ(汗)。
 

でもこのタイトルを付けたことにはワケがあって、最近のヒューマンライブラリーではHIVのことが知りたいという目的以外に次のような理由で僕がご指名を受けることがたびたび起こっているんです。
 

「今自分はこういう困難な状況を抱えていて、何か対処のヒントになればと思って話を聞きに来ました」
 

こういうケースって増えてるなって思うんですね。そして誰かに相談することへのハードルも下がってきたのかもしれません。また、この「困難な状況」というのがご自身の問題ではなくて周囲の方、たとえばご家族やパートナーや友達などだったりすることもかなり多いです。
 

Plus-handicapで発行している「生きづらさ大全」も 冊子版のヒューマンライブラリーと言えるかもしれません。
Plus-handicapで発行している「生きづらさ大全」も
冊子版のヒューマンライブラリーと言えるかもしれません。

 

プラハンっぽくいうと「身近な人が実は生きづらさを抱えていることに気づいてしまった状態」となるでしょうか。このときの解決の糸口のために「抱えている困難さがヘビーそうな当事者のサンプル」の代表として僕が選ばれているのかもしれません。
 

ヒューマンライブラリーでは、自分が一冊の本となって自分の属性の話をするわけですが、読者(話を聞く?)側から見ればさまざまな問題に直面した人のサンプルが一同に集結し、異なるジャンルのサンプルをいっぺんに収集できる場になっているのではないかと思います。確かにその用途ではすごく便利なイベントです。
 

今回の僕のあらすじは「科学的な正確さによって自分の状況を納得して落ち着いている人」が「病気や疾病のイメージだけで相手を見る人」によって困らされているわけなんですが、僕を借りてくれた人はまずそんなひとにならないでねということを言いたいわけです。
 

困難さの解決に万人に通用する方法は無いよねということは頭ではわかっていても、いざ事態に直面したときにまず「その事態への一般的な対処法」を考えてしまうという人は結構多いと思うんです。でも取り急ぎ探したほうがいいのは「あなたの身近なひとに通用する方法」のはずなんですね。そこを考えてくれることこそが困難さを抱えた側にはうれしいものではないかと思うんです。間違いなく自分のために考えてくれているので。
 

そんな当事者の視点を伝えることができて、考えるきっかけにしてくれれば、「僕のケース」を僕自身が伝えている意味にもなりますし、当事者としても心からうれしく思います。
 

最後に例によって告知なのですが、僕も所属している当事者団体が主催するパーティーが12/16(水)18:00から恵比寿でやります。19時くらいには僕もいるはずです(エントランスの人に桜沢いますかと言ってもらえれば確認できます)。重たげなテーマのトークショーもありますが、全体的に年末パーティー的なイベントですのでよろしければぜひ。
「Cross Border Cafe vol.3」
https://www.facebook.com/events/1651821465077496/

記事をシェア

この記事を書いた人

桜沢良仁