面接官のパワハラ的質問に耐え忍ぶ、就活生の生きづらさ

普段、就職活動生の支援をしていると、面接官からよく聞かれる質問について相談を受けます。個人的には「そもそも、それってただのパワハラじゃない?何て答えたらいいんだ!」と感じてしまう質問だなと思うのですが、皆さんはいかがでしょうか?
 

パワハラ記事①
 

うちの会社に入って、具体的には何がしたいの?

 

これは大変よく聞くメジャーな質問。実際に面接対策マニュアルや就活講座でも取り上げられるテーマです。社会経験が乏しい、会社を知って間もない就活生が聞いたらどう思うのでしょうか。様々な回答があると思いますが、私がよく聞く就活生の本音を集約するとこんな感じでしょうか。
 

「知らん。逆に教えてくれ!」
「いま作る(それっぽくねつ造する)から待って!」
 

知り合って間もない、グループデート1回、2人だけで1回という異性から「私との将来設計について的確な意見を提示して。」と言われて返答できるでしょうか?「私はこう思っている」という意見を伝えることはできるかもしれませんが、相手の意図や志向をくみ取ったベストアンサーなんて答えられるわけないでしょう。もしかすると「当たり障りのない模範的な回答」を出すことがベストアンサーかもしれません。
 

「御社の〇〇という商品のコンセプトに共感しており、世界中に広げるため、学生時代に培った英語力を活かして海外事業部で活躍したいです!」とか答えれば認めてもらえるのでしょうか。採用されても、海外事業部に配属される可能性がこの回答で保証されるとは到底思えませんが。
 

それ、うちじゃなくてもできるよね?

 

「学生の志望動機って具体性がないからどこの会社でも言えるんだよね。ウチに入りたいなら、ちゃんと調べてきてほしいよ!」という意見を持つ面接官は少なからずいらっしゃいます。この素敵な質問に対しても、受け取った学生の本音はこんなところでしょう。
 

「知らん。逆に御社でしかできない事を教えてくれ!」
「あ、はい。そうですよね。実際できますよね(笑)。」
 

競合皆無、参入障壁は鉄壁、市場成長性も多分にある。そんな企業もあるとは思いますが、ごく稀ではないでしょうか。そんな背景の中、この質問はなかなかのハードヒットだと思います。これまた恋愛で置き換えて考えてみると、
 

A「私のどこが好き?」
B「うーん、そうだなー、やっぱり優しいところかな!」
A「え、それ私じゃなくても優しい人とかいるじゃん(真顔)」
B「あ、えっと、僕の事を1番に考えてくれるところ!」
A「ふーん、じゃあ別に親でもいいんだ。好きって言われたら誰でもいいんだね。」
(※すべて私のイメージであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。)
 

Aさんのような対応をされたら、相当めんどくさいことが想定されます。恐らく友人に相談すれば「即刻別れるべし」とアドバイスを頂戴する可能性すらあります。ちなみに多くの場合、Aさんもこの悪魔の質問への回答を持ち合わせていません。強いて言えば、数を挙げるか、論点をずらして回避するくらいかでしょうか。就活は恋愛に似ていると言われますが、結構めんどくさい、付き合わないほうが幸せなレベルの企業って案外多いのかもしれません。
 

ハート入りグラス
 

きみは、うちが第一志望?

 

最終選考が近づいてくると、結構な割合で聞かれているようです。この質問に対して何と答えましょうか?これまでの2つも個人的にはなかなかのパワハラだと感じていましたが、もはやこれはただの暴力ではないかとすら感じてしまいます。これに対する学生の回答は概ね1択です。
 

「はい!もちろん第一志望です!(っていうしかないじゃん)」
(※ごく一部、自信のある学生は「他にも」というケースがありますが)
 

これ以外の回答があるのならば、是非ご教授いただきたいものです。逆に「第一志望以外受けるな。第一志望である以上、必ず採用する!」という気骨のある会社が大半であれば良いですが、現実問題としてまったくそんな事はありません。ある程度の定員が決まっており、それ以上の大幅な採用はありません。学生側は落ちてしまったら入社先がなくなるわけですから、並行して他の企業の選考を受けるのは当たり前です。これが悪いとおっしゃるならば、日本の新卒一括採用システムを覆すことにつながります。是非いいアイデアをいただきたいところです。回答を強制的に一択にする質問。これはもう暴力ではないでしょうか。
 

こんな面接官にはどう対応すればいいの?

 

就活生の方々にお伝えしたいのは「それうちじゃなくてもできるよね?」というようなパワハラ的質問に怯まないでいただきたいということ。「たしかに御社じゃなくてもできます。しかし私は御社でやりたい理由があるんです。」と自信を持って返答してもらいたいのです。反対に、採用する企業の方にも、横暴な質問を投げかけるのではなく、相手の心の内を引き出せるような質問をしてもらいたいのです。
 

私は、就職活動とは「どうありたいのか」をお互いに擦り合わせることだと思っています。「仕事=ありたい自分を実現するための手段」だと考えていますが、ありたい自分を描き、その実現のためにこの会社がいかに自分に適しているのかを考えることが大事だと思うのです。会社を上手く利用しようということではありません。一生懸命に仕事をすれば、ありたい自分に近づけくことができる。一人ひとりの仕事の質と量が上がれば会社も成長・安定する。お互いが相乗効果を生む状態が理想的ですし、その状態への最初の一歩が就職活動ではないでしょうか。
 

自分の理想を描き、理想を実現するために最適な会社はどこなのか。そのうえで自分は会社に何が出来るのか。理想は過去の自分との対話から導き出されるものです。就職活動に関わる社会人の皆さまは、自分との対話の結果を一生懸命に伝えようとする学生の言葉に耳を傾けてほしいと思いますし、学生有利の就活戦線の中で学生に自社を選んでもらうためにも、ぜひ真っ正面から学生の言葉を受け取ってほしいと思います。もちろん、学生自身も自分と向き合う時間をきちんと取り、準備をして、就職活動に臨んでほしいなと思います。

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この記事を書いた人

坂本啓介

小学校の恩師に憧れ、教師こそ天職と信じ教員免許を取得するも、学校教育と社会が求める教育に差を覚える。勉強を教えることだけが教師の仕事なのか?人生経験をもとに子どもたちの土台を作ることが仕事ではないのか?伝えたいこと・必要なことを、声を大にして発信することは求められていないという教師の現実に葛藤を覚える。
自分の想いを堂々と、声を大にして発信する学び場を作るべく、2012年2月、神保町大学を設立。「考えるって楽しい」をコンセプトに、通常の教育機関が言わないタブーに挑み続ける。