街中でリクルートスーツの学生を多く見かける季節になりました。リーマンショック直後には就職氷河期と言われていましたが、最近では求人倍率は高くなっており、就職活動をする学生にとって明るい材料となっているようです。求人倍率が高い状況というのは企業にとって人手不足ということですから、人手が足りているときに比べると採用基準が低くなるという傾向もあります。
特に採用人数の多い企業の場合、毎年100人単位の新入社員が入ってくることを前提に経営計画を考えているため、必要な人数を確保できないことは死活問題になりかねません。結果、本来設定している基準に達していなくても人数合わせのために採用してしまうことがあるのです。まるで、「別にそんなに好きじゃないけど、彼氏彼女いないのも恥ずかしいから付き合う」という大学生みたいですね。
「好きじゃないけどなんとなく」で始まった恋と、「熱烈にひかれあって」始まった恋のどちらが幸せかわかりませんが、就職においても希望していた仕事につけたから幸せになれるかというとそうとも限らないのも現実です。
本来求められる能力基準に未達の状態で採用されてしまった場合、一時的に「就職できた」という喜びはあるかもしれませんが、そのあとにまったく通用せずに苦労するケースも現実に起きています。私自身もそのケースに当てはまりますし、早期離職者にインタビューをしていると、私と同年代のリーマンショック前に新卒で大手企業に入った人は似たようなケースが何件か見られました。
希望の会社に入るために工夫をしたり努力をしたりすることが無意味だとは思いません。その経験から学ぶこともたくさんあると思います。ただ、希望の会社に入ることが目的になってしまってはいないでしょうか。
仕事は組織で行うケースがほとんどですが、人は組織の中での役割として「自分が周囲よりも優秀な状況だと力が発揮できる」タイプの人もいれば、「周囲のレベルが高い方が自分が燃えるし努力をして結果的に能力アップにつながる」というタイプの人もいると思います。私の場合は「自分が中の上くらいにはいるけど、トップ層は絶対に勝てない程の差をつけられている」くらいの絶妙な状況が力を発揮しやすく、自分の成長にもつながる状態と思っています。このあたりは人によって差があるでしょうから、自分がどんな状況なら力が発揮できるのかはよく考えてみる必要があります。
求人倍率がいいから希望した会社に入りやすいというのは一つの現実かもしれませんが、希望した会社に行くことが幸せになること、生きづらさをなくすことだと思っているのだったら、今一度立ち止まって考えてみるべきです。
もっとも「この会社に行って勝ち組になるのが自分の人生において最重要事項である」と考えているのであれば、反対はしませんが。