障害者の視点で衆議院選挙を考える。マニフェストを見比べてみた。

はじめまして、今月からプラス・ハンディキャップでインターン兼ライターとして働き始めた木村奈緒です。
 

「生きづらさ」を抱えた人たちの集まりである私たちですが、当の私はこれといったハンディキャップ(障害)は抱えておりません。世間では多数派の健常者に属しますが、当社においては少数派に属します。しかし、「プラス・ハンディキャップとは」に書かれているように、「100人いたら100通りの『生きづらさ』」があり、健常者には健常者の「生きづらさ」があると思います。ということで、健常者ならではの疑問や視点で「生きづらさ」を切り取っていけたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 

<障害者の視点で総選挙を見る>
 

さて、そもそも私がプラス・ハンディキャップに興味をもったきっかけは、ある会合で聞いた編集長佐々木の話でした。私が普段利用している地下鉄の駅について「出口が何ヶ所もあるのに、エレベーターは一カ所しかない。障害者にとって利用しやすいのかどうかは分からない。」と話す佐々木。この言葉を聞き、「障害者の視点で世界を見直すと、普段見えなかったことが見えるのだ」と気がついたのです。
 

前置きが長くなりましたが、つまりは「今度の衆議院選挙も障害者の視点で見てみたらどうだろう?」と思ったわけなのです。前述した地下鉄駅に代表されるように、障害者にとって不便なことは、高齢者や妊娠中の女性、小さい子どもを連れたお母さん、怪我で松葉杖を使っている人など、あらゆる人にとって不便と言えます。逆に障害者が生きやすい社会は、多くの健常者にとっても生きやすい。各党はどのような障害者政策を考えているのか。今は障害がない人も、交通事故にあって車イス生活になることだってあるかもしれない。たまには障害者の目線で選挙に参加してみるのはいかがでしょうか。
 

国会議事堂
 

<マニフェストから見る各党の障害者政策>
 

各党の障害者政策を知る上で今回参考にしたのは、ネットで閲覧可能な各党の政策・マニフェスト。数ある政策の中から、障害者について言及されていると思われる箇所を抜粋してみました。また、各党が障害者政策にどの程度重点を置いているのかが分かりやすいよう、障害者政策に割かれている文字数をカウントしてみました。単純に見比べて頂けたらと思います。
 

※巻頭言などはカウントしていません。
※文字数は「障害者政策の文字数/政策全文の文字数」の順で表記してあります。
※公明党はpdfにロックがかかっており、全文を抜き出しての文字カウントが出来ませんでした。
※聴覚障害者や視覚障害者用に音声や白黒反転の政策集を発行している党もありました。
 

●自由民主党 243文字/23,644文字
 

「医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護職員等の人材確保を行うとともに、介護や障害者福祉サービスを担う職員の処遇改善を行い、医療・介護等の充実につなげます。」
 

「女性・若者・高齢者、障害や難病のある方等、誰もが生きがい・やりがいを持って暮らせるよう、居場所作りや生活支援、ハローワークの機能強化等による就労支援等、全員参加できる社会を目指します。」
 

「障害のある子供たちのため、教職員の専門性向上、通級による指導の充実、拡大教科書等の普及・充実、学校施設のバリアフリー化等の必要な教育条件を整備します。」
 

(引用元:「景気回復、この道しかない」
 

●民主党 260文字/8,409文字
 

「介護・福祉現場での人材確保のため、民主党が提唱して成立させた介護職員・障害福祉従事者の処遇改善法に基づき、介護報酬、障害福祉報酬をプラス改定し、介護職員・障害福祉従事者の賃金を引上げます。」
 

「障害種別や程度、年齢、性別を問わず、難病患者も含めて、安心して地域で自立した生活ができるよう基盤整備、人材育成に取り組みます。」
 

「障がいのある人もない人も共に生きる共生社会を実現するため、障害者差別解消法の実効性のある運用をめざします。」
 

「難病対策をさらに拡充します。高額療養費制度の拡充により、治療が長期にわたる患者の負担軽減を図ります。」
 

(引用元:「今こそ、流れを変える時。」)
 

●維新の党 20文字/5,884文字
 

「障がい者を納税者に。就労支援を促進する。」
 

(引用元:「増税ストップで―身を切る改革。実のある改革。
 

●公明党 712文字/?
 

「難病関連2法(難病医療法、改正児童福祉法)に基づき、難病対策を大きく前進させます。あわせて、効果的な治療方法の研究・開発を促進します。また、『脳脊髄液減少症』の治療に効果的な「ブラッドパッチ療法」の保険適用をめざすとともに、『軽度外傷性脳損傷』『線維筋痛症』など国民から新たな『疾病』として確立の要請が強い病態への対策を総合的に進めます。」
 

「障害者総合支援法が施行され、制度の谷間のない支援を提供する新たな障がい保険福祉施策がはじまっていることを受け、市区町村の現場において障がい者等へのきめ細やかな支援を強化します。2020年東京パラリンピックの成功に向けて、ソフト面や心のバリアフリー化を進めるとともに、視覚や聴覚に障がいのある人にとって、日常生活のコミュニケーションや情報取得をするための『情報・コミュニケーション法(手話言語法)』の制定をめざします。」
 

「高齢者や障がい者などの司法アクセス困難者に対する法的サービス提供を充実させるとともに、成年後見制度の普及を促進するため、法テラス等における弁護士と福祉期間・自治体・市民団体等が連携し問題解決を図る「司法ソーシャルワーク」の取り組みを抜本的に強化します。」
 

「障がいのある子どもが十分な教育を受けることができるよう、特別支援学校の教室不足の解消やバリアフリー化などの整備を進めるとともに、特別支援教育コーディネーターの配置拡充や専門性の向上、特別支援教育に対応する教職員等の資質向上を図るなど、特別支援教育の一層の充実に取り組みます。また、発達障がい児等の教育機会を確保するため、発達障害支援アドバイザーの配置拡充を進めるなど、必要な教育環境の整備に向けた支援を拡充します。」
 

(引用元:「manifesto2014」)
 

●日本共産党 21,148文字/330,564文字
 

2014年総選挙各分野政策「25、障害者・障害児」「26、難病」をご参照ください。
 

(引用元:「2014 総選挙政策」)
 

●次世代の党 0文字/2,769文字
 

(引用元:「次世代が希望を持てる日本を
 

●生活の党 0文字/3,325文字
 

(引用元:「生活者本位の国へ。
 

●社会民主党 66文字/7,316文字
 

「障害者権利条約の趣旨をあらゆる場面で実現します。「障害者差別解消法」の実効性を高め、障がい者の地域生活を広げ、共生社会を実現します。」
 

(引用元:「平和と福祉はやっぱり社民党
 

●新党改革 0字/3,747文字
 

(引用元:「2014・約束」)
 

●幸福実現党 60文字/9,019文字
 

「障害を持つ人が幅広く社会参加できるよう支援し、社会に貢献する生きがいと、税金を納められる喜びを感じられる国を目指します。」
 

(引用元:「この国に、もっと自由を。」)
 

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この記事を書いた人

木村奈緒

1988年生まれ。上智大学文学部新聞学科でジャーナリズムを専攻。大卒後メーカー勤務等を経て、現在は美学校やプラスハンディキャップで運営を手伝う傍ら、フリーランスとして文章執筆やイベント企画などを行う。美術家やノンフィクション作家に焦点をあてたイベント「〜ナイト」や、2005年に発生したJR福知山線脱線事故に関する展覧会「わたしたちのJR福知山線脱線事故ー事故から10年」展などを企画。行き当たりばったりで生きています。