挑戦する障害者が集う「チャレンジド・フェスティバル2014」取材レポート

2014年11月15日・16日に行われていた「チャレンジド・フェスティバル2014」(以下、チャレフェス)に参加してきました。
 

チャレンジドフェスティバル2014①
 

【概要(コンセプト)】
障がいがある人が障がい者ではなく、生きにくさを感じた人が障がい者。誰もが障がい者になりうる現代、障がい者と健常者が、ともに参加し、ともに楽しむことができる社会の実現を目指して、チャレンジド・フェスティバルを開催します。

 

(参考記事)
「挑戦はどんな障害をも乗り越えられるか?今週末はチャレンジド・フェスティバル2014」
//plus-handicap.com/2014/11/4377/
 

2日間に渡って行われたチャレフェスですが、時間の関係上、あまり多くのパフォーマンスを観ることはできませんでした。ただ、それでも、筋ジストロフィーという難病を抱えながら精力的にライブ活動を続けられている歌姫・AYAKOさんや、ダウン症を持つ子とその家族のダンスチーム・ジュピターなどのパフォーマンスを観ることで、いろいろなものを受け取ることができました。
 

故・坂本九氏の娘さんである、歌手大島花子さんの手話を使ったライブ。
故・坂本九氏の娘さんである、歌手大島花子さんの手話を使ったライブ。

 

ダウン症を持つ子とその家族のダンスチーム ・ジュピターのパフォーマンス。
ダウン症を持つ子とその家族のダンスチーム ・ジュピターのパフォーマンス。

 

歌姫・AYAKOさんのバンド。オリジナル曲やプリンセス・プリンセスの曲を披露。
歌姫・AYAKOさんのバンド。オリジナル曲やプリンセス・プリンセスの曲を披露。

 

今回私が観覧したことで感じた、チャレフェスの魅力と可能性について書いていきたいと思います。
 

1.自然体の障害者の挑戦(チャレンジ)がとても清々しい
 

最初に、正直な告白をしますと、「障害者のチャレンジ」という言葉にある種の疑念を抱いておりました。お察しの方もいらっしゃるかと思いますが、それは、日本テレビ「24時間テレビ」に起因しています。あくまで個人的な意見ですが、「障害者のチャレンジ」というと、どこかお涙頂戴的な印象があり、チャレフェスに来るまでは、少し憂鬱な気分があったことは否めません。
 

しかしながら、チャレフェスを観ていると、車椅子で楽しそうに楽器演奏される方、笑顔でダンスを踊るダウン症の子供たち、杖をつき座りながらも熱唱をするAYAKOさんの姿などに、難しいことは言わずに単純に感動の気持ちが芽生えてきました。決して作られた感動ではなく、障害を抱えた方々の自然体な挑戦がそこにはありました。もちろん、「24時間テレビ」が作り物とは言い切れませんし、実際に現場で観ればまた違った印象があるかもしれません。ですが、私の中に凝り固まっていた「障害者のチャレンジ」という言葉への疑念は、チャレフェスで見事に打ち砕かれた気がしました。
 

2.自然体だからこそ集客・スポンサード獲得が難しい現実
 

チャレフェスの魅力を感じるとともに、現実問題として感じたのは集客などの難しさです。会長の斎藤さん曰く、去年の代々木公園での開催よりは、今年の日比谷公園は人通りも多く、お客さんも増えたとのことですが、一観客の率直な印象としては、まだまだ少ないなあと感じました。齋藤さんは、スポンサーの獲得が難しいとも言っています。
 

個人的な意見ですが、マスメディア好みの打ち出しでは必ずしもないチャレフェス(齋藤さんは、「障害者の文化祭」と表現しています)は、原石のような魅力を放ちつつも、その分、(大手)企業や一般大衆には伝わりづらい側面があるのではないか、と感じました。
 

3.障害者の挑戦意欲の向上、そしてチャレフェスに興味関心のある方々の力を集める
 

根本的な課題について書いてしまいましたが、1で述べたように、チャレフェスに大変感銘を受けたのは事実です。では、今後どのようにすべきか、現段階で実行委員でもない私ですが、感じたアイデアを2点あげます。
 

(1)障害者の挑戦意欲の向上
 

表現する内容として、既存のカバー作品だけではなく、「障害」を抱えて生きている当事者やその家族の方などが感じていることの率直な表現などオリジナルなものに移行していくことが必要だと思います。障害者には共感を生むと思いますし、健常者にも新鮮な印象を与えると思います。「障害者のクリエイティブ力」というものは、今後の社会に重要な要素になってくると思いますし、多くの障害当事者からも「自分も新しい創作に挑戦してみたい!」という声が生まれるのではないでしょうか。
 

(2)チャレフェスに興味関心のある方々の力の結集
 

上記のように「障害者の挑戦意欲のアウトプット」を打ち出すと、集客等が難しくなってくるかもしれません。しかし、チャレフェスのような障害者が安心安全に「チャレンジできる場」は、当事者のためにも、社会のためにも、必要だと思うのです。
 

世間的にまだまだ認知度が低いのであれば、チャレフェスに興味関心がある方々から少しずつ「自分自身のチャレンジ」を集めることで、ムーヴメントを起こしていけば良いのではないでしょうか。まずは何かやってみる。運営に協力する人たちも「チャレンジ」していく。私自身、餃子づくりの特技があるので、来年のチャレフェスでは餃子ブースを出店する旨を齋藤さんに伝えました。
 

AYAKOさんと会長の斎藤匠さん。
AYAKOさんと会長の斎藤匠さん。

 

最後に、自分のことを少し書かせていただきます。
 

私は、最近、障害者スポーツのひとつであるシッティングバレーを始めました。障害を負うまでは野球をやっていましたが、障害を負った後は、一時期卓球をやっていたことはあるものの、なんとなく健常者とやるのが億劫になり、以来、20年近くスポーツをやっておりませんでした。スポーツ以前に、体を動かすことのチャレンジを全くやっていなかったのです。これは間違いなく障害に起因しています。
 

しかしながら、下手くそながらにバレーボールの練習を繰り返していると楽しくなり、自ら率先して体を動かすようになってきました。「もっと上手くなりたい、強い選手と戦ってみたい」という欲求が生まれてきました。すると、周囲からも普段の生活の中で、私自身の変化を告げてくれるようになってきました。
 

もちろん障害の軽重や種類によって、人それぞれになるでしょうが、出来ることからチャレンジを続けていけば良いと思いますし、そうした場を提供してくれるチャレフェスの存在はとても重要なのではないでしょうか。次回の開催は来年です。
 

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この記事を書いた人

堀雄太

野球少年だった小学4年生の11月「骨腫瘍」と診断され、生きるために右足を切断する。幼少期の発熱の影響で左耳の聴力はゼロ。27歳の時には、脳出血を発症する。過去勤めていた会社は過酷な職場環境であり、また前職では障害が理由で仕事を干されたことがあるなど、数多くの「生きづらさ」を経験している。「自分自身=後天性障害者」の視点で、記事を書いていきたいと意気込む。