「働きづらさ」を焦点に当てたWEBサイト「ONE STEP」とは?

働きたくても働けない。働かなくては!と分かっていても働く意欲が湧かない。他人から見れば「甘え」や「言い訳」に見えたとしても、本人特有の理由から「働きづらさ」を抱えているひとが、社会には一定数存在しています。
 

2014年11月、株式会社アソウ・ヒューマニーセンターとともに、「働きづらさ」を抱えたひとの「働く選択肢を提案する」ためのWEBサイト「ONE STEP」を立ち上げました。私たちPlus-handicapも、ライター陣が出張して記事を執筆したり、主催イベントの企画に加わったりと、頭に汗をかく担当として加わらせて頂きました。
 

「ONE STEP」ホームページのスクリーンショット
「ONE STEP」ホームページのスクリーンショット

 

「働きづらさ」は、個人的には、働くことに対する「困難さ」と「不安」という2つの側面があると感じます。前者の困難さはハード面、制度面の問題で、障害が理由で通勤が困難、子育てが理由で勤務(拘束)時間的に苦しいといったことが挙げられます。後者である不安はソフト面、コミュニケーション面の問題で、ひきこもっていたことが理由で職場での人間関係構築に不安、ウツが原因で調子の波のコントロールが難しいといったことが挙げられます。
 

「働きづらさ」を抱えているひとは、一般的に考えられる「普通」や「健常」というグループから外れてしまったひとたちが含まれやすく、障害者、ニート・フリーター・ひきこもり、生活保護受給者、ホームレス、難病患者、高齢者など、「働きづらさ」を抱える属性を挙げてみれば、たしかにと承服せざるを得ない部分があります。
 

多種多様な背景があって「働きづらさ」を抱えているのであれば、画一的な解で問題が解決されることはまずありません。それぞれに合った施策を考える必要がありますし、それぞれに合った情報を収集し、選択できる仕掛けがなくては一歩踏み出すことは難しいでしょう。その意味で「ONE STEP」は、様々な働きづらい属性の方々に向けた情報と職場の提案を実施していこうと考えています。
 

ONE STEPの仕掛人のひとり、チャレンジドアソウ社の池田さん
ONE STEPの仕掛人のひとり、チャレンジドアソウ社の池田さん

 

「生きづらさ」もその多くは「比較」に原因の一端があると考えているのですが、「働きづらさ」も似ていると考えています。小学校から大学、そして就活を経て、年功序列・終身雇用という名の下に設計された保守的なルートとの比較です。このルートのどこかでこぼれ落ちてしまったり、乗ることができなかったり、あるいは自分自身の現在地とこのルートを見比べ悲観したときに、発生してしまうものではないでしょうか。
 

このキャリア観に対して違う意見を持っているひとも少なからずいますし、自分で道を作っているひとももちろんいます。そんな方々から見れば「比較なんてせずに自分の思うようにやればいいのに」という声が上がるかもしれません。ただ、その意見自体少数派であり、実力者が語る言葉のように受け取り手が感じてしまうことも、また事実だと思います。
 

現在の就職活動は、仕事内容、職種、給与、待遇、福利厚生といった求人票や就活サイト(特に中途向け)に記載されている項目に則って、就職を決めていることがほとんどです。これは既存の日本のキャリア観の上に乗っかっているものです。私自身、このルートで就活し、キャリアをつくっていますし、否定的な気持ちを抱いているわけではありません。ただ、この選択肢からこぼれ落ちてしまっているひとが実在していることも事実です。
 

誰と働くか、どんな職場で働くかという、同僚や雰囲気といった点で就職を決める(考える)というのが「ONE STEP」です。そこには障害等への配慮や理解度も含まれます。先述した「働きづらさ」の側面で言えば、「働くことへの不安除去」がテーマと近しいものです。新卒採用の場合、一定数の内定者が就職先を決めた理由として「先輩社員」を挙げますが、その論理を「働きづらさ」を抱えるひとの就職活動に持ってきました。
 

デスクの上
 

とは言っても、同僚や職場で就職先を決めることは、新しいことではありません。自分にとって身の丈に合った、ここなら心地よく通勤できて、仕事ができて、自分の時間も過ごせるといったような企業と働き方を見つけられる情報サイトという、いい意味で敷居を下げていくことを差別化ポイントとして考えています。
 

「働く」という時間は、人生の中で多くの時間を割くものです。好きな同僚と好きな職場で楽しく(時にはしんどいときもあるでしょうが)働くという働き方を提案したいのが本音です。この働き方の判断軸を働きづらさを抱える当事者に気づいてほしいと感じています。ただ、「好き」や「楽しい」に意識が傾き過ぎ、与えられた役割で成果を発揮できず、価値を生み出せないことはNGなので、バランス感覚も併せてお伝えしていきたいところですが。
 

この提案の先には、障害者雇用や若者支援、女性雇用といった「働く」にまつわる問題の解決点があると信じています。少しでも早く、その解決策を提示できるよう、「ONE STEP」にて頭に汗をかいてきます。その提示がPlus-handicapにも還元され、「生きづらさ」の解消へとつなげられればと考えています。

「ONE STEP」サイト:https://www.hatarakuyorokobi.jp

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この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。