働く人の心の健康が、企業にとっての最大資本です。~めざせ健康的企業!心の健康づくりに必要な3つのこと~

皆さん、こんにちは。心の健康を守るナースこと杉本九実です。
 

今回は、健康づくりや予防活動のプロである保健師の私が、様々な企業と関わっていく中で気付いた心の健康づくりのために必要なポイントをお話します。働く人の心の健康はなぜ企業にとって必要なのか?そして企業が取り組むべき心の一次予防対策とは?経営者や管理監督者の皆さんにはぜひ読んでほしいです。
 

現代社会のメンタルヘルスの現状

 

現代社会はどれだけ心の病気に侵されているのでしょうか?
 

厚生労働省や日本医師会の調査(推定値も含む)では、うつ病患者やその予備軍は約1,000万人、心の病気で通院している方は約330万人、休職や退職による企業の生産性の低下や、医療費増大などによる国家的な損失は約2兆7,000億円にも及ぶとされています。また、労働者健康状況調査(平成24年度、厚生労働省)によると、仕事や職業生活に関する不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合が急増していることが分かりました。これは経済や産業構造が多様に変化し、働く状況も多種多様なため、ストレス因子が増加したことが理由の一つとして挙げられます。(図1、2参照)
 

図1
 

人間関係のストレスって一番多いんです。
人間関係のストレスって一番多いんです。

 

さらに、仕事による心理的負荷が原因で精神障害を発症し、あるいは自殺したとして労災認定が行われる件数が年々増加し、社会問題として注目されています(図3参照)。3月25日付の朝日新聞にも「過労死責任、経営者に問う」(http://www.asahi.com/articles/DA3S11047232.html)という記事が載っていましたが、長時間労働や心理的負荷が原因で過労死や過労自殺に追い込まれた方のご遺族が経営者そのものを訴える動きが広がっているそうです。
 

図3
 

データや社会の動向からみても、日本のメンタルヘルスの現状は崖っぷち状態にあることが分かります。こんな社会の中、毎日コツコツ働いている皆さんは本当によくがんばっていらっしゃると思います。まずはがんばっているご自身のことをほめてあげて下さい。
 

なぜ心の一次予防が大切なのか

 

では、このメンタルヘルス崖っぷち時代を打開するために、企業は何をすればよいのでしょうか?
 

重要なポイントは、二つ。
・「働く人の心の健康は、企業にとって最大の資本」であることを認識する
・心の病気を未然に防ぐための「一次予防対策」に徹底して取り組む
 

まず、企業が認識すべきは「働く人の心の健康は、企業にとって最大の資本」であるということです。企業にとっての資本はお金だろ!と言われてしまいそうですが、そのお金を生み出しているのは一体誰ですか?まぎれもなく企業で働く“人”です。
 

心の病気や不調を抱えた人が多くいればいるほど、企業全体の経済的損失は拡大していきます。生産性や能率の低下、給与・保険料・傷病手当・医療費などの支給額の増加、他の働き手への負荷による二次的損失といった具合に負の連鎖は悪循環を生み出してしまいます。
 

そこで、企業が最も力を注がなければならないことは、「働く人の心の健康を守ること」です。持続的に企業が成長し、企業価値を高めるためには、一人ひとりの心の健康を大切に守り、支えるしくみが不可欠だと私は思っています。そのしくみが、心の一次予防対策です。一次予防とは、病気の発生を未然に防ぐ活動のことで、健康増進を図る上では最も重要な方法であると言われています。
 

アメリカではこの一次予防対策が盛んに行われているため、様々な研究結果が発表されています。たとえば航空機業界の大手企業では、一次予防対策により1年間でメンタルヘルスに関する経費が28%節約され、精神科病院の入院日数も47%減少、離職率も35%削減され、生産性が14%向上したという結果が出ており、一次予防対策の効果は大いにあると言えます。
 

最近では日本でも、メンタルヘルスに関心が高まっている影響により、一次予防対策に取り組んでいる企業は増加傾向にあります。しかし、企業規模別にみると、1,000~4,999人および5,000人以上の大企業では90%を超える実施率ですが、日本企業全体の90%を占める、100人以下の中小企業では50%にも満たない現状があります。今の日本で取り組まなければいけないのは、中小企業における心の一次予防なのです。
 

なぜ、心の一次予防が大切なのか。それは、働く人の健康にとっても企業の健全な成長にとっても、WIN-WINな状態をつくることができる唯一の手段だからです。
 

働く画像
 

心の病気を防ぐ一次予防対策に必要な3つのこと

 

では、企業はどのように一次予防対策に取り組めばよいのか。大きく3つのポイントがあります。
 

①自社で働く人たちにはどんな心の問題があるのかを知ろう
 

まずは、働く人が日常の中で何に悩んでいるのか、どんなことに問題を感じているのか、当事者の声を聴くことから始めましょう。アンケート調査や厚生労働省が公表している無料のストレスチェック項目(労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストや職業性ストレス簡易評価表など)等を使用して統計をとり、企業全体としての問題点を明確化します。これは、企業や職種によって根本の問題点は異なるので、一概に一次予防対策とはいっても、それぞれの企業の特色によりアプローチ方法が変わってくるからです。
 

②心の病気を予防する専門家にアドバイスやサポートをしてもらおう
 

世の中には、心の病気を予防する専門家がいっぱいいます。心と体の両面から健康づくりをサポートする保健師、早期治療・早期復帰を支える産業医、心理面から心のケアを行う産業カウンセラーや臨床心理士、労務管理や社会保険に関するアドバイスを行う社会保険労務士などなど、ぜひこういった専門家を活用して下さい。明確になった問題点によって適切な専門家を選択し活用することをおすすめします。
 

③働く人たちが楽しく、継続して実行できる解決策をみんなでつくろう
 

「予防」は危機意識が低いレベルを、より高いレベルへと意識変容することがまず必要なので、とても難しい分野であると言われています。私が保健師活動をしていて、人が継続して実行していくために重要なポイントだと思うことは、「みんなで楽しく」です。楽しければ、自ら進んで行動しますよね。シビアな心の問題を予防していくためには、みんなで取り組める、そしてちょっとした“遊び”を取り入れたシステムをつくることが大切だと思っています。
 

働く人たちの心と体の健康は、企業にとっての宝です。そんな宝を大事にする健康的企業が増えていけるように、保健師としてのスキルと経験を活かして貢献したいと思い、4月18日に株式会社PONOを設立する運びとなりました。まだまだ未熟者ではありますが、株式会社PONOにしかできないサポートを全力でお届けできるように願晴って(がんばって)いきたいと思います。

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この記事を書いた人

杉本九実

1985年生まれ。順天堂大学卒の看護師・保健師。憧れだったICU看護師となるが、理想と現実のギャップ、過労、ストレスにより心身のバランスを崩し、バーンアウト状態と診断され休職。休職中に訪れた旅で自然の「ありのままに生きる」姿に感化された経験を活かし、2013年PONOプロジェクトを設立。「ストレスやこころの病気を自然の中で楽しく予防しよう!」をコンセプトに、自然の力と看護スキルを活かした今までにない新しいメンタルヘルス事業を行う。