障害の配慮だけしても障害者は辞めてしまう。障害者が辞めない職場の3つの条件とは?

皆さん、ごきげんよう。矢辺です。
 

今日は、障害者が働く環境を見続けてきたことで見出せた、障害者が辞めない職場の3つの条件をお伝えします。
 

  1. ●障害の配慮があること

  2. これは入社する上での大前提であり絶対条件です。障害のある人が障害者枠を選ぶのは、障害があり、通常の枠では働けず、配慮が必要だからです。ですから、障害の配慮があることを企業に求め、配慮が可能だからその会社に入社する訳です。
     

    最近は少なくなりましたが、人事担当者が障害の配慮をOKだと判断しても、配属された部署では配慮がなされないことがあります。例えば、軽度の聴覚障害のある方。1対1や簡単なコミュニケーションが可能だったため、部署の繁忙期に電話に出ることを求められ、退職するという事例は多く聞きます。
     

    健常者の方のイメージで言えば、年収○○○万と言われ、これで家族を養えるなど、前提で考えていたものが、何の理由もなしに年収を下げられることをイメージしてみてください。頼りにしていたものが突然なくなる訳です。これでは働くことはできません。
     

    このように障害の配慮は入社の上での絶対条件です。それを職場で実施できないことは即退職を意味します。この障害の配慮がなくて辞めてしまう事例は減ってきた印象ですが、まだまだ残っています。また、最近では、精神障害や発達障害のある人が、自身の障害を隠して働いてきたけれど、やはり自分の障害を理解してもらいながら働きたいということで、精神障害者手帳をオープンにして、「障害の配慮」を求め、障害者枠で働く人が増えている印象です。
     

    多くの会社は、「障害の配慮をしたからこれでいいだろう」と考えている会社も多いのが実情ですが、辞めないためには次の2つが大切です。
     

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  3. ●同じ仲間として接してくれること

  4. 障害があっても、同じ仲間・同僚として認められているということです。例えば、挨拶がある、ランチに誘ってくれる、社内研修を健常者と同じように受けられるなど、です。障害の配慮があったとしても、同じ会社の社員なのに、お客さんのように気を使われすぎたり、腫れ物に触るような接し方をされてはその職場は居心地が良いはずがありません。
     

    これは、部署の上長や部署の雰囲気によって、できるかできないかが分かれます。上長が「障害の有無関係なく、一緒に働きがいを感じよう」と考えて、同じ仲間として受入れてくれれば問題はありません。また、部署の雰囲気としてフランクで何でも話せる環境であれば、障害のある人も積極的に関わることができるでしょう。
     

    一方、上長が「障害」に対して悪い見方をしていたり、働けないなどといった排除するような考えを持っていたりすれば、同じ仲間としてではなく、腫れ物に触るような接し方やお客さんのような対応をされるでしょう。また、部署の雰囲気が殺伐としたものであれば、障害の有無関係なく、同じ仲間として接してもらうことは難しいでしょう。
     

    「障害」というのは、まだまだわからない人が多いのが現状です。
     

    参考記事:
    障害者雇用における、受入れ側の準備の大切さ
    「障害者=怖い、迷惑だ」と思うことってダメなの?「知らない」ことから生まれるリスク
     

    障害があっても同じ仲間として接することができる職場を実現するためには、まだまだハードルが高いのが現実です。
     

  5. ●成長予感・成長実感があること

  6. 障害があっても、「この職場に居続けるといいことがある」と思えるかどうかということです。転職の相談を受けていたこともありましたが、「何となく」や「充実感を感じなくて」という理由で転職する人も居るのが実情(それでも障害が軽くて若ければ簡単に転職できるのが障害者雇用の悪い点)なのです。
     

    この職場に居れば、できることが増える、楽しい、役に立っている実感がある、人として認められているなど、成長している実感や予感があり続けることが、障害者が辞めない職場環境なのです。
     

    企業を見ていると、法定雇用率2%の達成のために雇用しているので、目立たずそこそこやってくれれば良いという意識が垣間見えます。そして、障害者自身も働けていれば良いとお互いが低い満足点で着地してしまっている印象を受けます。
     

    双方がそのような意識では、自分が人の役に立ちたい、スキルを身につけたいと思った時に、学べる職場環境が増えません。そのためにも、成長予感・成長実感を感じられる職場を増やしていくことはとても重要です。
     

    障害のある人と企業がよりよい関係を築いていけるように
    障害のある人と企業がよりよい関係を築いていけるように

     

    障害の配慮がある職場が増えてきましたが、まだまだ同じ仲間として接してくれること、成長予感・成長実感が多い職場は少ないと感じています。もっと多くの企業で、障害者を雇用した職場の環境を底上げすることが必要でしょう。
     

    では、どうすれば障害者が働く職場環境の底上げができるのでしょうか。大事なことは、「障害の配慮はするが、あとは同じように接する」ということです。
     

    障害があるということは、お伝えしたように障害の配慮が必要であるということです。しかし、それ以外には何も健常者とは変わりません。そこに「障害」というフィルターが掛かるから、お客さんや腫れ物に触るような接し方をしてしまうのです。「障害の配慮はするが、あとは同じように接する」ということを職場で意識していれば何の問題もないのです。
     

    多くの職場で、「障害の配慮」だけではなく、「同じ仲間として接して」、「成長予感・成長実感を感じられる」職場を作るために、「障害の配慮はするが、あとは同じように接する」ということを意識してほしいと思います。
     

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この記事を書いた人

矢辺卓哉

双子の妹に知的障害があったことが「生きづらいいね!」の始まり。彼女たちを恥ずかしいと思った自分の心を恥ずかしいと思い、大学3年時、障害のある人に関わる仕事を生涯の仕事にすると決める。障害者採用支援の会社で6年間働き、株式会社よりよく生きるプロジェクトを設立。現在は、障害のある人やニート・フリーター、職歴の多い人、企業で働きたくない人などに特化した支援を行っている。また、障害者雇用を行う企業へ退職防止、障害者が活躍できる組織づくりのコンサルティングを行う。「人生を味わいつくせる人を増やす」ことが一生のテーマ。