アトピーのムズムズをワクワクに。アトピーのひと向けクチコミサイト「アトピン」とは?

2013年12月12日に、アトピーの人のためのクチコミサイト「アトピン」のβ版(試用版)がオープンしました。「アトピーのムズムズをワクワクに」を掲げた、アトピーの人の悩みを同じアトピーの人と一緒に解決していくクチコミサイト。Plus-handicapでもライターを務めてくれている野村千代さんに、サービス内容や開発経緯などを伺いました。
 

アトピーの人のための口コミサイト「アトピン」
アトピーの人のための口コミサイト「アトピン」

 

ー先日のピッチコンテスト「S-1チャレンジ」でも「アトピン」は優勝。うらやましいくらい、波に乗ってますね。「アトピン」ってどのようなサービスなんですか?
 

“「アトピン」は、アトピーの人が日常的に活用している、症状を抑えるための対策や小技、テクニックなどを集めたクチコミサイトです。アトピーを長年患っていると、1人ひとり自分なりの小技というか、テクニックを持っているものなんです。例えば、私の場合だと、頭皮アトピーがひどいこともあって、櫛とガムテープは欠かさず持ってます。櫛で髪の毛に引っかかったアトピーの落屑(皮膚の表層部分が落ちたもの)を落とし、机や床に落ちた落屑をガムテープで取り除くという小技があって。こういった小技やテクニックをシェアして、他のアトピーの人にとっても有益な情報を集めていきます。また、会員になれば、自分自身のアトピーの症状や置かれている環境を可視化して、管理できます。すると、会員が情報を発信したときに、どのような属性(サラリーマンとか主婦とか子どもとか)なのか、どのような症状なのか、情報の背景をキャッチできます。”

 

「アトピン」のサービスラインナップ
「アトピン」のサービスラインナップ

 

ーこれだけインターネットが発達した時代ならば、googleで検索すれば情報が手に入ったり、yahoo知恵袋にたくさん情報が眠っているような気もするんですが。今、このサービスを始めた理由ってあるんですか?
 

“アトピンが解決したいテーマが「情報の混乱」なんです。仰られた通り、インターネットの世界ではたくさんのアトピー情報が存在していて、7分間に1件、アトピー対策の記事が更新されている計算になります。また、yahoo知恵袋に6万件記事があることも分かっています。しかし、これだけ情報があることが原因で、どの情報が今の自分にとって必要なのか判断することが難しくなってきています。年齢・症状の重さ・部位などによって、必要な情報も様々ですし、価格や誰が発信したかなどによって判断基準も分かれてくる。今のままだと、情報を見つけ判断するまでにストレスがかかってしまう。ここにメスを入れるのが「アトピン」だと思っています。”

 

ー野村さん自身もアトピーを患っていると聞いていますが、野村さんも「情報がどこにあるか分からない!」「どうやって判断したらいいの?」っていう気持ちがあったということですか?
 

“私自身、生まれつきアトピーです。それもけっこう重度で、アトピーの悪化によって倒れることもあって、休学や退職を経験しているんです。21歳の休学、23歳の退職、そして今年の5月が3回目。今までアトピーである自分自身を認めたくなかった、卒業できると思っていた。自分はアトピーじゃない、アトピーの人と思われたくないという気持ちも強かった。でも、今回、3回目にして悟って、自分はアトピーだと受け容れたんです。で、アトピーの対策サイトを漁るように見ました。そしたら、自分が欲しい情報がどこにあるか分からないし、デザインもイケてないし。”

 

アトピンを立ち上げた経緯を語る野村さん
アトピンを立ち上げた経緯を語る野村さん

 

“当時、沖縄にいて、自分に合うシャンプーを検索して探してたんです。東京にいるときは行きつけの無添加の店があるんでいいですけど、ネットから出てくる情報の判断材料が自分にはない。沖縄だと送料がバカにならないんで、間違えられない。ああ、困ったなあと。もう、自分で作るしかないかと決めて、「アトピン」を作ろうと決めました。”

 

ー単純な疑問なんですけど、アトピーって治るの?「アトピン」読んだら、アトピーが治る!みたいなイメージなの?
 

“アトピーが治る人もいるにはいます。しかし、なかなか完治は難しい。なので、治すというよりうまくコントロールしていくというほうが「アトピン」のゴールイメージには近いです。コントロールっていうのは、アトピーを忘れられる時間が長い状態に持っていくという感覚です。言い換えると、アトピー症状によって、痛い・痒い・劣等感を感じる場所に症状が出るというのはコントロールできていないということです。コントロールするために必要な情報が「アトピン」で入手できるように、クチコミを集めていきます。あと、自分が完治していないから、完治の成功体験は載せないかもなあ。性格がひねくれてるので(笑)。”

 

ー最後に、今後の「アトピン」について教えてください。
 

“まずはアトピー対策の情報収集をしやすくするという点に焦点を当てて、今、開発中です。正式オープン前のβ版を今は利用することができるので、会員になって頂いた方の意見も踏まえて、開発していこうと思っています。ゆくゆくは、【情報収集できる】・【自分のアトピー症状を可視化・管理できる】・【アトピー対策グッズやアトピーの方向けの服や日用品などのアイテムを購入できる】という3つの軸で「アトピン」を作り上げていきたいと思っています。アトピーに関するインフラを作っていきたいという気持ちです。気軽にアトピーと向き合い、アトピーだけどしょうがないかという感覚をもつ方を増やしていければなと思います。そうすれば、アトピーでもわくわくした人生を送れる方が増えるんじゃないかなあ。”

 

今回、お話を伺って気づいたのは、アトピー患者を一括りにしても何も解決しないということ。1人ひとり、症状が出る場所も違えば、程度も違う、自分がいる環境、抱えているストレスも違う。多種多様な患者がいるからこそ、「アトピン」のような情報の判断材料を提案してくれるサービスが必要なんだと感じました。文字通り、痒いところに手が届くサービスです。今後の正式オープンが楽しみです。多くの人のクチコミやフィードバックが集まれば、それだけ早くサービスも充実します。ぜひ「アトピン」のサイトを訪れてみてください。

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この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。