就活生は早期離職者からの情報提供を信じるべきか

先日、早期離職者と就活生の対話イベント「私、大企業を3年で辞めました」を開催しました。

 

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土曜日の夕方にも関わらず、当日は30名の方が参加。参加者のほとんどは就職活動を控えた大学3年生でしたが、中には企業に就職後退職して現在は学生をしている方や、会社に勤めながら夜間の大学院に通っている方などもいらっしゃいました。
 

多様な属性の方々が参加されるということは、それだけ多様な価値観が集まる場でもあります。特に今回のような対話イベントでは、価値観と価値観がぶつかり合うこともあります。価値観がぶつかりあって新しい何かが生まれれば主催者としては願ったり叶ったりなのですが、価値観がぶつかることで「私のことをわかってくれない」と感じる人もいます。ですから、多様な方々が集まる場というのは主催者としては楽しみと不安が入り交じった心境です。
 

しかし、今回のイベントではお陰様で参加者のほぼ100%がアンケートでも満足と回答してくれました。数ある就活イベントの中で、就活支援が本業ではない私が開催したイベントにお金を払って参加してくれて、さらに満足と言ってくれるのは嬉しい限りです。
 

一方で、アンケートを見ていて少し複雑な気持ちにもなりました。アンケートのコメント欄に多くあったのは「もっと情報を知りたい」「他のイベントでは絶対に聞けない本音の話が聞けて良かった」「今回は辞めた人だったが、逆に大企業に勤め続けている人の話を聞いてみたい」などの意見です。中でも一番多かったのが「もっと長い時間で実施してほしい」。こういった意見を見る限り、もっと多くのことを知りたいと思っているようでした。
 

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それはある意味では当然なのかもしれません。確かに今回のイベントの趣旨である「早期離職者から話を聞く」というのは、非常に貴重な機会です。だからもっと様々なことを知りたいと思ったのでしょう。就活生向けのイベントは数多くあり、就活に関する情報はWeb上にあふれかえっています。それでも、就活生はもっと情報を欲しがっています。就職白書2013(株式会社リクルートキャリア)によると、就職活動を終えた学生の自己評価で企業に関する情報収集(業界分析・企業研究など)の満足度は約3割となっており、自己分析や働く意欲などに比べて低い水準になっていることからも情報収集に関してどん欲になっていることが伺えます。
 

しかし、私は敢えて就活生にはもっと情報を捨てることをおすすめします。情報を得ようと思えば際限なく集めることができます。一般的には情報は少ないよりも多い方が良いと思われていますが、多ければ多い程良いのかというとそういうわけではありません。情報が多すぎるために、本当に自分にとって必要な情報が埋もれてしまったり、それぞれの情報が矛盾しているために混乱したりすることもあります。そこで、情報の取捨選択が必要になります。
 

学生や若手社会人と接していて感じるのは、まさにこの情報を捨てる力の不足です。情報収集力という点では、私よりも圧倒的に効率良く、多くの情報を集める力を持っている人も少なくありません。その一方で、集めた情報から必要な情報を取捨選択する力というのはまだまだ低いと感じています。なぜ情報を捨てられないのでしょうか。それは必要な情報を分類するための基準や軸といったものがないことが大きな原因です。
 

私は情報を捨てるとき、話の筋が通っているかという論理的な側面だけでなく、好きか嫌いか、親近感が湧くか湧かないかという感情的な面での判断も重要視しています。直感的な「この人なんかキライ」とか「なんかうさんくさい気がする」といった感覚です。口で上手く説明することはできないかもしれませんが、その情報を信じられなかった理由が何かしらあるのです。ですから、この情報は自分には必要ない、今は取り敢えず見なかったことにしておこうと考えることも、時には必要になります。
 

今回のイベントでは、4人のゲストがそれぞれ違った意見を主張していました。中には、全く正反対の意見だったトピックもあるくらいです。でも、それが当然の姿です。4つの意見を聞いたうえで、論理と直感で自分が一番参考にしたいと思った意見だけを取り入れればいいのです。もちろん、4つの意見からいいところ取りをするのもOKです。
 

さぁ、あなたも情報の断捨離をはじめましょう!
 

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この記事を書いた人

井上洋市朗

「なんか格好良さそうだし、給料もいいから」という理由でコンサルティング会社へ入社するも、リストラの手伝いをしてお金をもらうことに嫌気が差し2年足らずで退職。自分と同じように3年以内で辞める若者100人へ直接インタビューを行い、その結果を「早期離職白書」にまとめ発表。現在は株式会社カイラボ代表として組織・人事コンサルティングを行う傍ら、「生きづらい、働きづらい環境を変える方法」についての情報発信を行っている。