就活うつと早期離職の関係性

 
昨年行った早期離職者へのインタビューでは、早期離職者のうち、約17%は入社後にうつ病などの精神疾患となった経験がありました。そして、最近では入社後のうつではなく、就職活動中に大学生がうつ病になってしまう「就活うつ」が社会問題としてクローズアップされています。NPO法人POSSEの調査では、就職活動を経験した人のうち7人に1人が就活うつというデータもあります。7人に1人ということは、約14%ですから早期離職者の精神疾患の比率と近くなっています。
 

「早期離職者と就活うつになる人の間には関係性があるのではないか?」という意見をいただく機会があったので、今回は「早期離職と就活うつ」について、この場を借りて私なりの考えをお伝えします。
「早期離職と就活うつ」 この2つの関連性を考えるにあたっては、まずそれぞれがどんな人たちなのかを整理する必要があります。
 

就活うつになってしまった方は、うつ病を発症していることで新卒の正社員としてすぐに企業で働くのは難しいかもしれません。ただ、就活うつになりそうだった人が就職後にうつ病になっているという可能性は考えられます。就活うつになりそうだった人たちとは、なかなか内定が得られず、最終的に内定をもらった先についても不本意入社だった人のことです。
 

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私がインタビューをした早期離職者のうち、うつ病などになった方々が、上記のケースである不本意入社の方々が多かったかというと、そういうわけではありません。第一志望の会社に入社した人もいますし、第一志望とはいかないまでも、会社に対して魅力を感じて入社した人がほとんどでした。企業規模は大企業よりはベンチャー企業の方が多いのですが、それでも本人が希望してベンチャー企業に行ったケースがほとんどです。
 

率直に言うと、少なくとも私がインタビューをした限りでは、就活うつになった方が早期離職につながっているという裏付けはないのです。
 

うつ病を患い、早期離職をされた方々の場合、周囲に「うつ病の原因」とも言える、コミュニケーションが難しい相手がいることがほとんどです。社内でも「あの人は要注意人物」「あの人の部署にいくとうつ病になる」と噂されている人や、大企業であれば、いわゆる“お局様”のような人がそれです。
 

「母親が銀行員だったので、銀行に行くのが当然という感じで地元の銀行に内定をもらいました。研修が終わって配属された支店にはどうしても苦手な先輩が3人いて、そのうち2人はいわゆるお局様だったんです。もう一人は総合職の女性。私に聞こえるように「なんでこんなこともできないの」と横で言われたりして。そんな日が続いて、ある日突然会社に行けなくなりました。」
 

早期離職者インタビューで取材した彼女が勤めていたのは、地方銀行であり優良企業としても有名な銀行で、地元では人気の高い就職先のひとつです。本人の希望通りにその会社に入ったにも関わらず、周囲とのコミュニケーションが原因でうつ病になり、退職を余儀なくされたのです。これには後日談があり、彼女が配属された支店には翌年から新卒の配属がなくなったそうです。彼女の1年先輩も1年経たずに辞めていて、2年連続でそんな状況になったので、会社側も手を打ったようです。
 

彼女の例はひとつの事例でしかありませんが、就職後にうつ病になるケースというのは、特定の誰かがストレス要因となっているケースが多いのです。言い換えれば「犯人が特定されている」状態です。
 

では、就活うつはどうでしょうか?
 

就活うつは特定の誰かからの攻撃を常時受け続けるものではありません。
 

受けた企業から「お祈りメール」が立て続けにくることが原因かもしれません。周囲の仲間は進路が決まっていくのに、自分だけが決まらないことによる焦りが原因かもしれません。また、内定した企業がブラック企業ではないか?自分が本当にやりたい仕事なのか?と思い悩むことでうつ病となるケースもあるようです。
 

敢えて犯人を特定するとするならば、内定をとれない自分、希望する仕事に就けない自分ではないでしょうか?他人が犯人であれば逃れることができます。しかし、犯人が自分では逃げることができません。
 

この犯人を退治するために必要なのが、「なぜ若者は3年で辞めるのかの真実Part2」でも書いた『存在承認』なのです。
 

就職活動で存在承認が得られるのは「内定」をもらったときだけです。しかも就職活動は「内定」か「不採用」かの二者択一です。更に、内定を得たとしても、今度は「これは本当に自分がやりたい仕事なのか?」 「もしかしたら、自分の内定先はブラック企業ではないのか?」という不安が頭をよぎります。結局、自分が納得出来る結果を得られない限りは「自分は負け組」「自分は妥協した」と感じてしまい、存在承認は得られないのです。
 

仕事であれば、「部長には怒られたけど、先輩には褒められた」とか、「上司は不満そうだったけど、お客さんは満足してくれた」というケースがあります。小さい存在承認であれば得られる機会は少なくはないのです。
 

就活うつが抱える大きな問題は、犯人が見えにくいこと、そして見えた犯人は自分であること、さらに、自分に対する存在承認が得られる機会が少ないことなのではないでしょうか?
 

就活うつなどの問題に対して、「選ばなければ働く先はいくらでもある」と言う方がいます。それは事実でしょう。しかし、そんなことは就活生もわかりきっているのです。それにも関わらず就活うつは起きています。「内定が出ない」という現象に目をむけて就活うつを論じているうちは、いつまでたってもこの問題は解決しないでしょう。
 

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