「障害理解」をテーマにした学校講演に登壇するようになって思うこと。

オフィスの近くで、障害者の疑似体験をしている集団に出会いました。
 

視界を限定させることによる目の不自由さの体験、重りをつけて足を引きずって歩く足の不自由さの体験などを垣間見ましたが、あの体験だと「障害者って大変ですね」という感想しか生まれないでしょう。
 

もちろん、障害者は何かしらの困りごとを抱えていることがほとんどなので、日常生活やコミュニケーションなどの場面において大変さがあることは事実です。
 

しかし、大変さをクローズアップした体験の後に残るのは「障害者って大変」というイメージ。実は、理解啓発に見えて、隔絶を生んでいるだけのような印象が拭えないのです。
 

学校講演
 

幸いなことに、毎年30校〜40校ほどの学校講演の依頼を受けます。障害理解系、パラスポーツ体験系のテーマが多いのですが、感想文でもらうメッセージの中には「障害者って大変な人たちだと思ってました」という言葉が一定の割合で含まれます。
 

「ました」と過去形になっていること、過去形で捉えられるようにすることが僕の仕事だと思っていますが、”大変な人たち”というイメージは、誰によって導かれたものなのだろうと、いつも思います。そりゃ、想像はできるだろうけれど。
 

障害者の生活が大変であったとしても、その大変さを伝え、理解させようとするのが大切なのではなく、社会のどこに困りごとがあるのかを”知る程度でいい”というのが、僕のポリシー。
 

一人一人の大変さなんて、障害者すべてに共通していることではありません。いい人間関係に恵まれていれば、大変だと感じていないかもしれない。障害の種類によっては、ただの特徴程度のものに過ぎないかもしれない。それは単なる幸運かもしれないけれど「障害者イコール〇〇」とは言えない証です。
 

逆に、障害がなくても、日々に大変さを積み重ねている人はたくさんいます。学校の生徒の中にも、友だち関係、家族関係、スクールカースト、セクシャリティ、国籍、アレルギー…どんな理由であれ、大変さを抱えている子どもはいます。
 

毎日毎日いじめられてつらい、死にたい。
 

例えば、そんな子どもがいるかもしれないという中で、障害者って大変なんです、理解してくださいというのは、誰が一番大変なのか、生きづらいのかというマウンティング行為を子どもに向けて実施し、自分の辛さをアピールして、認めてもらえて、自分だけホッとしている活動なのではないかと、僕は思います。
 

それで馬鹿高い講演費もらうなよと。
 

学校講演
 

講演者として、発信者として、僕らがこれから先、やっていかなくてはならないことは、自分の属性を引き合いにしながら、社会では誰しもが困りごとを抱えていて、持ちつ持たれつの関係で成り立っていると伝えること。
 

自分に余裕があるときには、困りごとを抱えている相手にフラットに接して、その困りごとを解消できるアイデアをともに考えようと伝えること。こういったことではないでしょうか。
 

少なくとも、己の属性についてだけを話して、理解を深めてほしいなんてことは、過去のフィールドに置いてきてほしいと思うのです。
 

つらい、苦しい、生きづらいといった感情の数々は、感動を生み出すスパイスであると同時に、「その感情を持ったあなたと私は違う(申し訳なさとともに)」といった隔絶や偏見を生み出す恐れがあるものです。
 

ワークショップや講演なんて、満足度を引き上げ、払ったお金分の価値を感じてもらいたいのであれば、感動を残すことがわかりやすくて、簡単なものです。涙なんて流してくれれば、しめたものです。
 

ただ、そういった主催者や講演者のエゴが、むしろ、あなたと私は違うといった隔たりを生み出しているならば、あなたにとっては利益でも、社会にとっては不利益なのかもしれません。
 

僕らのようなメディアが林立していることで、世の中にはたくさんの生きづらさを抱えた人がいることが明るみになりましたし、発信しやすくなりました。発信者は、何を伝えたいのか、どのように伝えるのか、そのポリシーが判断される時代になってきています。
 

佐々木さんの話を聞いて、障害者って大変だなと思いました。そんな感想文をもらった講演こそ、僕にとっては大失敗なのです。そもそも「障害理解」というテーマで話してくださいと言われて、そのテーマ通りに話すことはないけれど。
 

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この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。