本人の了承なく秘密を暴露してしまう「アウティング」の怖さ

僕は、自分がゲイであるとカミングアウトしたことで、今までとは違う気の遣い方をするようになりました。
 

それはTwitterやInstagram、FacebookでLGBTの友だちとの写真を一切シェアしないこと。「一緒に写っている人ってゲイなの?」と思われてしまうかもしれないからです。
 

スマホを持つ男性
 

僕が「ゲイ」だと公になってから、仕事関係や知り合いで男性を紹介するときに「ケイくんが連れて来たってことはこの人もゲイ?」と聞いてくる人が少なからずいます。
 

聞いてくる人は特に悪気もなく気軽にしている質問なのでしょうが、友人の中には絶対にバレたくない人やバレてもいい人などさまざまいて、対応に気を遣う場面があります。
 

もし僕が相手に確認をせずに「この人もゲイです」と言ってしまったら取り返しのつかないことになります。赤の他人であっても、どこかで職場や学校、家族と繋がってしまう可能性もあるかもしれません。自分のこと(LGBTであること)がバレるのを恐れている人は多いのです。
 

だからといって「この人はゲイではない」と毎回隠せばいいというものでもありません。「最初のタイミングで言っておきたかったのに」とか「ゲイってことを隠されてしまった、恥ずかしいと思われているのかな」とか傷ついてしまう人もいます。
 

大事なのは本人の意思なので、事前に「僕はカミングアウトしてるけど、聞かれたらどうする?」と確認を取っています。
 

それこそ紹介する先が異性愛者であれば、こんな事前確認は必要ないのですが、ゲイであるかもしれないという余計な勘繰りを引き起こしてしまうかもしれず、それはそれで気を揉むこともあります。
 

チャット
 

これらの気遣いは「アウティング」を防ぐためのものです。
 

アウティングとは、本人の了承を無しに、他人にLGBTであることをバラす(伝えてしまう)こと。言わば、守秘義務を破ってしまうようなものです。
 

これは日本全体が以前に比べLGBTに対して意識が広がっていること、また、寛容な人が増えてきたからこそ生まれてしまった問題だと思います。
 

本クール(2019.4-6)の連続ドラマでLGBTをテーマとした作品が5つもあることはその現れです。
 

また、覚えている方もいるかもしれませんが、2015年にゲイであることを同級生にバラされてしまった大学院生が、校舎から飛び降りて自殺してしまうという痛ましい事件がありました。賛否はありますが、アウティングが原因のひとつだと言われています。
 

スマホで自撮り
 

以前と比べると、LGBTであることを「別に気にすることないじゃん?」と言ってくれる人が増えてきました。これ自体はとても嬉しいことです。
 

しかし、LGBTであることをどう思っているのかは人それぞれ違います。あなたから見れば「気にすることないこと」であっても、本人にとっては「気にしていること」「悩んでいること」「重大なこと」かもしれません。
 

良かれと思った行動やちょっとした思い込み、あなた自身の価値観による振る舞いがアウティングにつながります。気にすることがないかどうかは、本人が一番分かっていること。取り返しのつかないことを引き起こしてしまう危険性があるのです。
 

「アウティング」という言葉は今、LGBTを中心に使われていますが、それ以外の人にも大切なことではないでしょうか。
 

外からは見えない障害や病気がある、児童養護施設出身である、家が生活保護を受けているなど、本人だけで何とかなる問題ではない心の悩み、生きづらい理由を本人の意思確認を取らずに暴露してしまうことはすべて「アウティング」だと思います。
 

世の中には、たくさんの人がそれぞれの荷物を背負って生きています。荷物の重さはその人にしかわからないし、同じ荷物を背負ったとしても重さの感じ方は違います。
 

だからこそ、目の前にいる個人のことを想い、相手の言葉や考えを受け取ることが大切なのではないでしょうか。そういった人たちが増えれば「アウティング」の問題はなくなっていくはずです。
 

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この記事を書いた人

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高橋 圭

1984年長野市生まれ。思春期真っ只中の高校生時代に男性を好きになり始め「僕はみんなと違う。普通じゃない?」と困惑。周囲にバレたくないとの思いから人との関わりの中に壁を作り、異性愛者を演じて生活をしていた。
ゲイである自分を受け入れるのに時間もかかったが、2018年に共同で会社を設立したことをきっかけに、「このままでは仕事もプライベートも本気で行えない」と公開カミングアウトをする。生きにくさを抱えるLGBTQ+の人々が、少しでも生きやすい世の中になるよう自分らしい活動を行なっている。