義足男子とのセックスで感じた、たったひとつのこと

「みかの部屋に行きたい」
彼が言いました。
 

部屋に招けばきっとそういうことになる。きちんとお付き合いをする前にセックスするのは良くないことだと頭では分かっていました。
 

でも好きだから一緒にいたい。私は彼が部屋に来たがったのをOKしました。
 

彼とは出会って2週間。お互いがお互いをよく知りませんでしたが、私には、彼についてひとつだけ知っていることがありました。それは、義足を履いていること。
 


 

彼は部屋に入るなり、服を脱いだ…のですが、ふつうのひととちがったのは、義足を外したこと。
 

ズボンを脱いで、さらしのようなものを取って、このさらしはなんのためにしているんだろう…とぼんやり見つめている私をよそに、彼はがちゃがちゃと義足を外しました。
 

子どもの頃に見たロボットのアニメみたいでした。
 

私は今からはじまるであろう行為を思ってどきどきしながらも、冷静にその様子を見つめ、義足ってすっごく簡単に取れるんだなあと感心していました。
 

義足を外さないとセックスできないのかな。
足があると逆に邪魔なのかな。
 

いろいろなことが頭をよぎったけれど、面と向かって聞くことはできませんでした。
 

義足を外した彼の足は、付け根からありませんでした。もう一本の足はすっごく細くて、こんな細い足1本で身体を支えられるんだろうか…と心配になりました。
 

そして、ごく自然と、どうやってセックスするんだろう…という疑問が浮かんできました。
 


 

前段階は、ごくごく普通でした。その瞬間瞬間に酔っていたいけど、やはり気になるのは「足」のことでした。
 

足が1本の状態で最後まで出来るのかな。
途中段階で終わりなのかな。
 

いろいろなことが頭をめぐって、なかなか集中できませんでした。
 

いざ、本番。ちょっと想像はしていましたが、やはり私が上でした。
 

足が1本ないのだから、いろいろな体勢は無理だとしても、いったいどのくらいまでなら足がなくても可能なのかな、このまま終わっていくのかなと、彼の上に乗ったままぼんやり思っていました。
 

すると彼が体勢を変えて正常位に。それは足がなくてもできるのねと思ったけど、彼は汗をかいてふうふう言ってたので、足が2本ある人よりはしんどいのかもしれません。それとも、そういう声を出すひとなのか。
 

疲れてないかな?
バランスを崩しちゃわないかな?
転んだり倒れたりしちゃわないかな?
 

たくさんの心配事が思い浮かんで、まったく行為に集中できませんでした。
 

もしかしたら、彼も、そうだったのかもしれません。「気持ちいい」というより「上手にやらなきゃ」とか「失敗したくない」という思いのほうが強かったかもしれません。
 

そして彼は最後までいかず…その日は終了しました。
 


 

お酒を飲んでいたせいもあるかもしれません。でも気持ちの問題かなと思いました。好きでもない女となんとなくこうなって、行為を上手にやんなきゃっていう気持ちで精一杯。とにかく彼とのはじめてのセックスは、消化不良気味で終わりました。終わったら彼は背を向けて寝はじめました。なんだか寂しかったです。
 

いつの間にか眠っていた私は、夜中にふと目が覚めました。水を飲もうと立ち上がると、ベッドの横に足が置いてある光景が目に入って「ギョッ」としました。
 

ベッドの横によこたわる「足」。
 

暗がりで見ると、正直いって非常に不気味でした。大きくて無機質で、なんとなくつめたい感じ。まじまじと見ると、ちゃんと肌色をしていて、靴下が履かせてありました。
 

義足にも靴下を履かせるんだと思い、彼が義足に靴下を履かせているところを想像すると、ちょっとかわいいなと思いました。
 

次の日の朝、彼は気まずそうにがちゃがちゃと足をつけると、そそくさと帰っていきました。なんだか恥ずかしそうにしていたのが印象的です。
 


 

それから彼とは何度か一緒に夜を過ごしました。
 

横たわる「足」にはもう慣れていましたが、セックスが毎回同じパターン(イカないことも含め)なことにウンザリ気味でした。
 

正直楽しくはなかったです。セックスを楽しみたい派の私にはかなり物足りなく感じました。だけど、どうしたらいいのか分からなかった。「あれしたい」「これしたい」と伝えても、もし出来ないことだったら申し訳ない、という気持ちが強く、伝えられませんでした。
 

彼は、正常位と騎乗位以外に挑戦することはなく、それ以外の体位ができないのか、やってみないだけなのか。私にはわかるはずもありませんでした。
 

そのうち、やっぱり足が2本ある相手とのセックスのほうがよかったなと思うようになっている自分がいました。
 

正直、足が2本あるひととのセックスを体感したい。
正常位と騎乗位以外もしたいし、いろんな前戯を試したい。
たまにはキスばっかりしたり、ハグいっぱいしたりしたい。
セックスのあとは抱き合ったり腕枕したりして眠りたい。
 

そこまで考えたとき「いやいや、それって足があるとかないとか関係あるのか?!」ということに気づきました。
 

足がないからできない、ではなく、探究心が持てないだけなのではないか。というより、そもそもお互いに愛がなかったのかもしれません。愛がないセックスでは、相手に対する探究心は持てないんじゃないか。
 

私は、探究心のない彼の「男」としての部分に物足りなさを感じていました。
 

彼は、障害者である以前に男性なわけです。セックスは自分と相手との行為であって、自分の気持ちや考えのみでするのは違うと思います。また、障害のことを気にして、本当にしたいことを言えない自分もよくありませんでした。
 

義足をはいた彼とのセックスで私は根本的な気付きを得ました。セックスって、もっともっと楽しんでいいんじゃないだろうか?そこに障害は関係なく楽しめることじゃないだろうか?どんな人であっても、セックスはお互いの好奇心次第で楽しめる行為であると思います。
 

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