聞こえづらさへの配慮は、障害への配慮というより職場の環境改善への一歩ではないか?

先日、「アナログゲーム王決定戦-ゲームを楽しみながら、発達障害を知る・体験してみる」というイベントに参加しました。
 

初めてお会いした方から「エトウさんはどんな生きづらさを抱えているんですか?」と挨拶がてらに質問されて、私はつまらない冗談で返しました。いや、正確には、その質問から咄嗟に逃げたのでした。
 

私の「生きづらさ」のひとつである「耳が遠い」という自覚は小学生の頃からありました。昔も今も健康診断の聴力検査では左右ともに「異常なし」ではなく「所見あり」です。
 

先日のイベント時。耳が遠いことで、ゲーム中は違うドキドキも。

 

水泳を続けていた幼少~児童期に中耳炎を何度か経験したせいだと思っていました。スイミングスクールの仲間との会話では、お互いに「はっ?」「え、何?」といった聞き返しは珍しくなく、水泳経験者の”あるある話”なのではないかとさえ思っていました。
 

本格的に自身の聴力が気になり始めたのは30代後半。営業部門から人事・総務の管理部門に異動したときでした。その管理部門の上司は、皆から「あの人、ゴチャゴチャした喋り方で何を言っているのか分からない」と言われていました。それにしても、私にはその上司の言葉が「〇×△□※…やろ?」としか聞こえないことが多く、某有名病院の耳鼻科でしっかりと検査することにしました。
 

結果は軽度の難聴。中耳炎などの後天的な原因ではなく、遺伝などの先天的なものだと診断されました(因みに家族、親戚、祖父母に難聴の人はいませんでした)。そして「聴こえ」と同じく「聴き分け」が難しいのだろうと言われました。
 

聴き分け・・・なるほど。確かに合点することが多くありました。
 

・一部の女性の声(声量の大小ではなく…何が原因なのだろう)
・口先だけで喋っている様な声、喉声(あとちょっとでいいから腹から声を出してくれ~!)
・間仕切り(部屋の壁)がガラス、アクリルの部屋での会話
・部屋面積に対して少人数の打合せ(これはまさしく難聴のせいかな)
・何かを読みながら発表する声(これも難聴だ)
・バンタイプの車中、そして何より地下鉄内!
 

…まだあるかも。思い出そうとするだけで吐きそうです。
 

ただし、居酒屋での会話はどんな部屋・人数でも、どんなに賑やかでも、全て苦もなく聴こえます。そして、聴こえる声ならば、声量・距離を問わず聴こえます。ミステリー。
 

こんな状態なので、打ち合わせや会議中で絶対間違えてはならない事柄に関しては(日時、人数、個数など)は、
 

・「〇月×日△時ですね?」とその場でオウム返しをする。
それが出来なかった時には、後で、
・「スミマセン、さっき話していた日程の件、聞いていませんでした」と、潔く諦めて聞き直す。
・議事録担当の場合は出来る限り事前に分かる情報は集めまくる(コレが相当しんどい)。
 

これらは若い頃から身に付いていました。今もそうです。
 

ただ、これって、決して耳が遠いことによって発生する労力ではなく、サラリーマンの基本っぽいことだと思っています。「聴こえ」や「聴き分け」に問題があるからやるのではなく、あくまで一般常識、ビジネスマナーのような。そう思えると少し気が楽になります。
 

当時の耳鼻科医からは、生活・仕事には差し支えない範疇であり、補聴器を付ける状態ではないと言われました。ただ、それでも…と思い、大枚をはたいて補聴器を購入し、何度も調整を重ねて使用していましたが、それでも「聴き分け」だけは改善されませんでした。
 


 

現在、私は障害者施設に勤務しており、利用者の出退勤時の送迎業務をしていました。「していました」と過去形なのは、先月、送迎・運転業務から外されたからです。
 

運転に関しては19歳から40半ばの今日まで、聴力が原因で支障をきたしたことはありませんが(実際、運転免許の取得・更新に聴覚検査はありません)、健康診断の聴覚検査結果と利用者の安全、何より私が相手(施設の偉い女性の人)から聞かれたことに対して、時折ズレた返答をしていることが原因でした。
 

よく聴こえないけど空気を読んで返答していたのが裏目に出ました。かなり凹み、苦しんでいます。
 

・聴力だけではなく、人から尋ねられたこと、声掛けされたことに対する反応が鈍い?
・世間の人達より、集中力が劣っている?
・LD(学習障害)などの発達障害に気付いていない?
 

自分に自信を持っている人ならばこんな発想にはならないと思いますが、私は穴だらけの人間なので、只今、負のスパイラルまっしぐらです。
 


 

・せめて主部・主語を言って欲しい。
・近くにいるからといって、いきなり会話に混ぜないで欲しい。振らないで欲しい。
・近くにいたからといって、その近くで交わされた会話(主に無駄話)を聞いていたという前提にしないで欲しい。
・言葉、コミュニケーションの横着を少しでも減らしてくれないか。
 

これらが今、職場で願っていることです。
 

ただ、これらも「聴こえ」や「聴き分け」に理由がある配慮項目のようなものですが、冷静に考えると、仕事中は人並みに集中しているつもりなので、コミュニケーション環境の前提がおかしくないか、コミュニケーションに齟齬がないようにやりとりができないものなのかと感じています。障害への配慮というより、職場環境への改善提案です。
 

今とは全く違う業界にいた頃、他の部署の人が私の部署のフロアに来て「エトウちゃん、(同じ部署の)Kさんはどこに行ったか知らない?」と聞かれても、デスクワークに集中している私は当然Kさんの所在をすぐには分かりません。そんな時、すぐに「Kさんは□△に行って今日は直帰で~す」と即答出来る社員は必ず、全然、仕事・労働をしていないヤツでした。
 

もちろん、私自身も大して真面目なサラリーマンではありません。何より、耳が遠いです。
 

ただ、人のこと、人のマイナス部分を掘る前に、自身のコミュニケーションのスタイルや指示の分かりやすさ、職場で情報共有・交換しやすい環境整備に、もう少し目を向けて、耳を傾けてほしいなあと、思い続けています。
 

せっかく、羨ましい聴力があるのだから。
 

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この記事を書いた人

エトウ アキラ