女性にこそ知っておいてほしい、男性のパンツの中の生きづらさ。

慰安旅行で訪れた先のホテルの大浴場で上司と部下が風呂に入る。部下のペニスがでかいと、立場が上のはずの上司がなんだか気後れして負けた感じになる―。
 

男性ならこの話にうんうんとうなずく方がいるかと思います。なぜこんなことになるのか。ペニスのサイズや勃起の長持ち具合など「ちんこの強さ」が男の価値を決める面があると刷り込まれているからではないでしょうか。股間の問題は男の沽券の問題だという無意識の刷り込みがあるということです。
 

しかしながら、ペニスは4cmあれば挿入はできるし、子どもを作ることもできるし、医学的には問題がないとされています。ペニスが小さいと女性を満足させられないんじゃないかという不安を相談される方もいますが、セックスは挿入がすべてではないので、挿入で満足させられないと思ったら他のことで満足させるという考え方もあります。
 

長持ちする(射精までの時間が長い)とか絶倫である(回復が早く比較的短時間に何度も射精できる)といった男性器のパワフルさも場合によっては自慢にならないといいますか、女性にはかえって煩わしい場合もあるようです。ある民間調査によると挿入時間は10~15分程度が最も適度で、20分を超えると「痛くなってくるから長い」と回答した女性が多かったようです。射精の回数も同様の結果が出ており、時間が長いから、回数が多いからといって単純に喜ばれるわけではないのです。結局はSEX is talking、愛ですよ、愛。
 


 

仮性包茎をバカにする風潮

 

仮性包茎。勃起するときや手で皮を剥いたときにはちゃんと剥いたり戻したりできるものの、普段は皮を被っているペニスのことです。
 

皮を被っているとバカにされます。「皮を被っている=子どもっぽい」という先入観があるせいなのか、非常にバカにされる。だから思春期を迎えた男子は剥き癖をつけようとして剥き続け、常に亀頭が露出している状態を目指すわけですが、日本人男性のおよそ6割は仮性包茎と言われています。
 

ただ、この仮性包茎、実は非常に合理的だと思うんですよね。普段は皮が亀頭を保護しており、必要なときには亀頭が露出するわけですから、こんなに保護能力に優れた機能的な状態もないわけで、仮性包茎はもっと胸を張っていいことだと思います。
 

現に仮性包茎は医学的疾患ではなく、手術も不要です。剥いて洗ってまた戻すを繰り返して、ちゃんと剥けるようになれば問題ありません。ペニスの皮は性感帯でもあるため、不用意に手術したりすると性感を損ねる原因にもなります。タートルネックのシャツを頭から被った広告に惑わされて手術とかしなくて大丈夫なのです。
 


 

真性包茎は剥くことで克服できる

 

真性包茎。勃起をしても手で剥こうとしても皮が剥けないペニスのことです。
 

男性は生まれた時は基本的に真性包茎です。皮と亀頭がぴったりくっついている状態。これによって菌が入ったりして炎症が起きるのを防いでくれています。年齢を経るに従って少しずつそれが自然と剥がれたり自分の手で剥いたりして、剥けるようになってきます。
 

もともと剥けていた人でも何らかの理由(病気や薬のせいとか、不潔にしていて炎症が起きたせいとか)があって真性包茎になってしまう場合があります。そういうときにも自分の手で剥いて戻してを繰り返しているとまた剥けるようになってきます。
 

真性包茎は医学的にケアが必要とみなされており、泌尿器科に行けば保険適用で手術することができます。手術すればちゃんと皮が剥けるようになります。必要があればこうした処置もしてもらえますので、お困りのことがあったら泌尿器科で相談してください。
 

女性にこそ知ってほしい男性のペニスの悩み

 

ペニスの大きさが社会的立場とは別に男性の優越を決めるという冒頭のエピソードをはじめ、ペニスのことで悩んだり人をバカにしたりというのは女性にはよく分からない世界かもしれません。男性と性交渉を持つ女性でも「ペニスをじっと見る機会はなかなかないため、仮性だとか真性だとか皮のことだとかを熱く語られてもよく分からない」という方も大勢いると思います。それでいいと思います。
 

ただ、男性はペニスの大きさや形状、射精までの時間や精力の強さなど、ペニスに関わる多くの事柄が予想以上に悩みの種になり得ることを知っていただけるとありがたいです。こういう(些細に見える)ことが原因で自信やプライドを失ってしまうことさえあります。
 

性交渉を持った相手からの「え?もう終わり?(もう射精しちゃったの?)」「小さいね」などの何気ない言葉がグサッと刺さってED(勃起不全、勃起障害)になる事例もたくさんあります。
 

勃起は一般に思われている以上に繊細な生理現象です。心理的な面にも影響を受けます。「そんな程度のことで傷つくなんて、男は繊細を通り越して弱っちい」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これもまた現実なのです。他者から客観的に見れば「そんな程度の些細なこと」が本人にとっては「一事が万事」だったりすることもあります。
 

女性の問題が男性の問題でもあるように、男性の問題は女性の問題でもあるため、こうした男性の繊細な部分や繊細な悩みについて女性のみなさまに知っていただけるとありがたい限りです。
 

また、股間の事情が男の沽券に関わるような気持ちになる男性心理はよく分かりますが、あまりに気にしすぎてペニスに振り回されるのも健全ではありません。持ち物(ペニス)より持ち主の人物像のほうが本当は重要です。持ち物への劣等感に振り回されるよりも、自信を持って振り回せる自己を確立したいものです。
 

※医学ファクトチェック=内田洋介(泌尿器科医)

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この記事を書いた人

柳田 正芳

1983年神奈川県生まれ。大学時代に「大学生が大学生に性の知識を届けるインカレ団体」の事務局長。卒業後、一般企業での就業を経て紆余曲折ののち、大学時代の経験をもとに「若者の性のお悩み解決をする団体」を起こす。活動を進める中で「日本の男性の生きづらさ」に気づき「男だって生きづらい」を解決する活動も立ち上げたり、産婦人科の病院や自治体で「夫婦のコミュニケーション」をテーマにしたワークショップの講師業などもおこなっている。