生涯未婚率が過去最高を更新。そして結婚していない男性は死にやすいというデータの話。

「生涯未婚率が過去最高を更新」というニュースが一斉に流れました。生涯未婚率というのは「50歳まで一度も結婚したことがない人」を表しているデータで、国立社会保障・人口問題研究所が発表しています。
 

それによると、2015年の生涯未婚率は

・男性 23.37%(5年前の前回調査比3.23ポイント増)
・女性 14.06%(5年前の前回調査比3.45ポイント増)

だそうです。
 

このデータ、1970年ごろの「結婚するのが当たり前」だった時代には、男女ともに1%台でしたが、それ以降は増加の一途をたどっており、今回過去最高を更新したということでした。
 

一方「いずれは結婚したい」と考えている18~34歳の未婚者は、男性85.7%、女性89.3%というデータも存在しています(出生動向基本調査・2016年)。結婚が「したいけどできない」ものになっている様子もうかがえました。したくてもできない理由として「結婚資金」や「結婚のための住居」の確保が難しいと考えている人が多くいるようです。
 


 

いずれは結婚したいと思っているがそれができないものになっているという現実。これはかなりしんどいと思います。ライフスタイルが多様化し、昔ほど結婚が優先事項になっているわけではないにしても、結婚する・しないは、人生設計の根幹に関わってくる問題なので、結婚したいと思っている人にとって結婚できないのは一大事です。
 

ただ、「結婚したい」という希望だけが先に立っているパターン。交際している相手がいない時でも「結婚したい」という欲が出るのは、個人的にはよく分かりません。「具体的な相手がいてその人と一緒に生きていきたいから結婚したい」は分かるのですが、そうではなく「結婚したい」だと、結婚と結婚したいように見えます。
 

「大事な相手がいてその相手と一緒に生きていきたいから結婚したいというのではなく、結婚すること自体が目的になっていないか。結婚と結婚するわけじゃなくて相手と結婚するんだから、相手を見ないと苦しくなるだけだよ」
 

結婚していないことに焦って「結婚」を口にする人も、こう考えれば、少し結婚に対する良い余裕が出ないでしょうか?
 


 

生涯未婚率が上がることの裏腹に、男性の生きづらさを表すデータがあるのはご存知でしょうか?一言でまとめますと、「結婚していない(あるいは離婚した)男性は死にやすい」という各種データが取り揃えられています。
 

例えば、未婚男性と既婚男性の死亡率を算出したところ、40代~60代の未婚男性は同世代の既婚男性よりも2.2倍多く亡くなっていたり、未婚男性の心筋梗塞での死亡リスクは既婚男性と比べて3.5倍多くなっていたり、未婚男性の自殺率は既婚男性より高かったりと、心身共に未婚の男性は弱りやすい・死にやすいというデータが色々とあります。
 

女性には未婚・既婚での上記のような差はデータとしては存在しないようです(むしろ、熟年離婚すると妻は生き生きと自分の人生を生きていける一方、夫は絶望の淵に立たされて悲惨な老後を送る、というような事例も数多く存在します)。
 

この男女の差について色々な理由が考えられますが、男性保健をやっている側の主観的な印象としては、女性はすぐに他人と仲良くなる力がある一方、男性は他者と打ち解けるのが難しい面があることに由来するのではないかと考えています。
 


 

独りで生きるのはけっこう大変ですので、コミュニティに入っていく能力が生存能力の差になるというのはうなずける気がします。「人に頼るのはよくない」といった「独りで頑張らねばいけない規範」をより強く内在化させやすいのも男性に多い特徴ということも関連していそうです。
 

「男が泣いちゃだめだ」「男は黙って歯を食いしばって耐えろ」などと教え込まれてきた世代は特に注意ですね。我慢は限界のある美徳ですが、一方で「我慢して耐えている(=俺がんばっている)」という想い上がりの幻覚を生じやすいものでもあります。独りで頑張ることが自立なのではなく、困ったときに「困った」と声をあげられることが自立なのではないでしょうか。
 

そう考えると、男性保健のゴールのひとつは「男性の自立」だなと思う部分があります。
 

結婚するかしないかは選択の自由の問題でもあるし、タイミングの問題でもあります。未婚で生きた先に未婚男性の悲劇があるというデータがあるなら、そのデータをひっくり返せるような生き方をすればいいんです。
 

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この記事を書いた人

柳田 正芳

1983年神奈川県生まれ。大学時代に「大学生が大学生に性の知識を届けるインカレ団体」の事務局長。卒業後、一般企業での就業を経て紆余曲折ののち、大学時代の経験をもとに「若者の性のお悩み解決をする団体」を起こす。活動を進める中で「日本の男性の生きづらさ」に気づき「男だって生きづらい」を解決する活動も立ち上げたり、産婦人科の病院や自治体で「夫婦のコミュニケーション」をテーマにしたワークショップの講師業などもおこなっている。