うつ病が良くなってきてから転職活動をするまでのあいだ。

こんにちは、元うつ病ライターの宮原です。
 

インターネット上には、うつ病当事者の方や元経験者の方の体験談がたくさんあります。しかし、その多くは
 

・うつ病になったキッカケ、経過
・病気の症状
・薬やカウンセリングなど、治療法関連
・病気の最中に思ったこと、起こったこと
 

といった『うつ病真っ只中』な時期の内容が多いなという印象がありました。そこで今回は、うつ病が良くなってきたなという頃から新生活を始めるにかけての期間に僕がやったこと・思ったことをお伝えしたいと思います。
 

宮原さん
 

まず、僕自身のうつ病の経緯などを簡単に。
 

大学卒業後に一般企業に就職しましたが、僕の能力が驚くほど低かったので仕事が全然出来ずストレスが溜まり、20代半ばでうつ病になりました。一年半ほど休職し、その後退職という運びになりましたが、休職中、幸いにも治療がうまく進み、退職間際にはほぼほぼ体調も良くなったので、退職以降(現在まで)抗うつ薬や睡眠薬といった向精神薬も飲んでおらず通院もしていません。そして、退職してから約2ヶ月後に、転職活動を開始しました。
 

というわけで、今回のテーマでいうと、退職してから転職活動を始める2ヶ月間のあいだに僕自身が行っていたことについて、以下から説明していきます。
 

テーマは「日常生活を取り戻す」

 

この期間、僕のなかでテーマがありました。それは「身体をチェックして少しだけ自信を持ち、日常生活を取り戻す」ことでした。うつ病の最中というのは、症状の影響により、仕事云々はおろか日常生活もままなりません。生まれてからずっと普通にできていたことができなくなるショックはとても大きかったです。
 

そこで、ひとつひとつ身体が復調したことを改めて実感しつつ、うつ病以前のように「日常生活を普通に過ごせる」ことを確認したうえで、新しい生活のスタートを切りたかったのです。
 

1.生活リズムを整える
 

まずは、昼夜逆転生活を直そうと思いました。僕の場合は、朝から昼過ぎにかけて体調が悪くなることが多く、昼間の大半は布団のなかで横になったり寝ていたりしました。そして、比較的症状が楽になることが多かった深夜帯は起きているという生活サイクルが多かったのです。
 

「普通に朝起きて、夜寝る。そして、また朝起きる」
 

これが難しかったのです。昼夜逆転自体を悪いとは思っていませんが、したくもないのに昼夜が逆転してしまい、昼間に起きて活動することができないというのは問題があります。何か予定があってもなくても、とりあえず布団から出て昼間に起きている、ということをなるべく継続するようにしました。
 

2.部屋のなかで普通に過ごす
 

皆さんは「部屋のなかでの普通の過ごし方」について聞かれたら何と答えますか?僕は元々、ネットサーフィンをしたりテレビを観たり漫画を読んだりというのが大好きで、寝る以外のほとんどの時間は、それらのいずれかをしているのが、僕にとっての「部屋のなかでの普通の過ごし方」になります。
 

しかし、うつ病の最中は、それが難しかったのです。
 

インターネットを見るのは比較的調子が良い時であれば大丈夫でしたが、基本的にはテレビを観ようとしても、映像が目に入ると刺激が強く感じて酔うような感覚になり、また同様に音も耳障りなノイズのように感じて気持ち悪くなっていました。本に関しては、文字を読んでも内容が頭に入ってこない、意味を理解できないという状態で、結果的にとても疲れるようになり、避けるようになっていました。
 

ということで、思う存分ネットをして、テレビを長時間観て、漫画や本を読んでみました。そして、特別な疲れや苦痛や違和感が発生しないかを確認したのです。漫画喫茶などの空間を満喫できるか否かというのも、当時の自分にとって一つの物差しになったかもしれないな、と今ふと思いました。
 

3.外出してみる
 

うつ病の最中は、部屋のなかでも普通に過ごせなかったので、外出も満足にできませんでした。最後はまさにそのまま「外出してみる」ことを試しました。その際に確認したかったことは、以下のような内容です。
 

先述した「テレビを観る」と似ているのですが、多くの人が行き交う街中に立って、わちゃわちゃ&ごちゃごちゃした映像が目に入ってきても気持ち悪くならないか。また雑踏のなかで発生する音(足音・人の話し声・車の音など)を不快に感じないか。屋外であれば、太陽の明るい日差し、屋内でいえば明るい蛍光灯の光が目に入ってもクラクラしたり吐き気を催すなど気持ち悪さが発生しないか。これらのことを一個ずつ確認していきました。
 

また、うつ病の最中はスーツ姿のサラリーマンを見ると、よく反射的に休職間際のことをフラッシュバックのように思い出し苦痛を感じていたのですが、平日昼間のビジネス街でそれが発生しないかということも大事でした。
 

他には、バスや電車といった公共交通機関を利用しての移動が大丈夫かどうかも確認しました。電車に立ちながら乗っていても揺れを苦痛に感じないか。満員電車時の人混みで不安感・恐怖感・吐き気を感じないか。さすがに毎日外出して確かめるのは怖かったので、徐々に頻度を上げていく形で確認していきました。
 

20160208①
 

うつ病が治る≠元通り

 

いかがでしたでしょうか?ご覧いただいた方のなかには、
 

「……わざわざ文章にするほどの内容か、これ?!」
 

と思われるかもしれません。何せ、テレビを観るだの朝起きるだの電車に乗ってみるだの、そんなことしかお話していませんから。そして「普通のことを改めて確認する」というのは、意味が分からないかもしれません。そもそも、うつ病が治ったのなら、それはつまり元通りなんじゃないの?と思うかもしれません。
 

しかし、うつ病の最中は「何も出来ないことが普通」でした。布団から出ることができずテレビを観ることができず外出できないのが、当時の自分にとっての普通でした。
 

うつ病が治ったからといって、うつ病になる前の自分に全てが自動で戻るわけではありません。うつ病によって上書きされてしまった「普通」は、その後の自分でもう一度アップデートし直す必要があると思ったのです。
 

皆さまのなかには、無職の知り合いのうつ病が治ったという話を耳にした時に、
 

「お、うつ病治ったん?よっしゃ、おめでとさん!じゃあすぐに就職活動だね!」
 

と思う方もいるかもしれません。
 

しかし、元の社会生活に戻る云々以前に、こういった地味な『普通・当たり前』を実感したいと思い、時間をかけて自己チェックしていた男がいたことを覚えてもらえれば幸いです。
 

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この記事を書いた人

宮原 直孝

1984年生まれ。大学卒業後に入社した一般企業で、あまりにも仕事ができなさ過ぎたこともあり、入社3年目にうつ病となる。その後、1年半の休職期間→退職を経験。うつ病から回復後、転職活動をするもうまくいかないことの現実逃避として何となく勢いで法人を設立。ボーっとしつつ、何となく適当にブログを書いたりTwitterをしているうちにplus-handicapにジョインしました。ジョインって言いたかっただけですが、よろしくお願いします。